慶應SFC 総合政策学部 2024年 小論文解答例(暫定版)

1.

資料3を除く資料1〜5を選択しそれぞれの主題に言及すると、資料1では日本のデジタル化にまつまる改革課題を紹介しながら、それだけでなくSDGsにも言及している。また、資料2においては日本における金融にまつわる改革課題を紹介している。資料4では日本のデジタル貿易収支の赤字を招いているデジタルプラットフォーマーの寡占について紹介している。資料5ではSDGs時代における持続可能な資本主義のあり方について紹介している。
ここでこれらの主題に関連して、アメリカの一極支配が終焉し、中国が新たな極として台頭しつつある現在で、10年後の日本の姿がどのようになっているかについて展望したい。
現在のアメリカと中国で共通して見られるのは、政府の規模が大きくなってきていること、社会全体の意思決定過程が自律・分散・強調からかけ離れてきていることである。アメリカは軍需産業とIT産業を主要産業として見定め、政治力なども利用しながらその影響力を拡大しようとしてきているし、政府の債務の規模から見ても政府の影響力も増してきている。一方中国も同様で米国製SNSなどを規制し、自国のITサービスを世界に広めようとしている。
このように大きな政府や中央集権型管理が跋扈する今後の世界において、日本はむしろ米中のこうした動きから距離を取って民間部門の自由な技術開発に任せ、特段政府が分野を定めない形で収益性が高いビジネスを民間主導で伸ばしていくべきだと考えている。例えばトヨタがEVの充電を10分程度でできる技術の開発に成功したというニュースを先日新聞で読んだ。このように日本は大きな政府や中央集権型の管理主導の経済成長が行き詰まり始めたときに、ユーザーのニーズに応えたサービスを民間企業が生み出す国であるべきだ。そうすれば10年後の日本は輝かしい経済大国としての姿をアメリカや中国とは別の戦略によって保ち続けるはずだ。
(795文字)

2.(解答例1)

私が今後の日本経済の活性化に必要なイノベーションを生み出すための政策として考えるのは、資料2で問題とされているリスクマネー供給のための仮想通貨関連の税制の改革を仮想通貨収益を雑所得から投資収益とする形で行うこと、資料3で問題になっている特許の質と量を向上させるために大学院生に大学発ベンチャーキャピタルから給料を支払うこと、資料5で問題になっている環境問題を解決するために家計と個人にも排出権取引を一部導入することの3つがある。
この中でも特にリスクマネー供給のための仮想通貨関連の税制の改革を仮想通貨収益を雑所得から投資収益とする形で行うことについて述べていきたい。
現在、資料2からも明らかなように日本の株式市場に上場している株やベンチャー株について市場規模の限界や構造問題もあり、成長が停滞している。一般的にベンチャービジネスは収益性が不安定なことが多いが、四半期決算での成長が求められる上場企業ではリスクを恐れるあまり十分な投資ができないことが多い。そこでNFTやICOなどの仕組みを使って仮想通貨ベースでプロジェクトファイナンスをするという事例が最近では増えている。しかし、日本ではこうした取引で得た収益は雑所得として計上されるため税率が金融商品の取引と比べると非常に高く、それもあって日本人で仮想通貨関連の起業をしたい場合にはシンガポールやドバイに移住して起業することが一般的である。これは日本に取って相当の機会損失であると考えられるため、税制度を改訂し、少なくとも仮想通貨関連取引への税制を金融取引と同様にものにすべきである。
このことによる副作用や弊害は詐欺的な取引の跋扈である。仮想通貨は誰でも立ち上げることができるので、たとえばSFCコインというものを立ち上げて、発行量を限定して一気に価格を上げた上で一気に売り抜けて発行者だけが利益を得ることがある。
(787文字)

2.(解答例2)

私が今後の日本経済の活性化に必要なイノベーションを生み出すための政策として考えるのは、資料2で問題とされているリスクマネー供給のための仮想通貨関連の税制の改革を仮想通貨収益を雑所得から投資収益とする形で行うこと、資料3で問題になっている特許の質と量を向上させるために大学院生に大学発ベンチャーキャピタルから給料を支払うこと、資料5で問題になっている環境問題を解決するために家計と個人にも排出権取引を一部導入することの3つがある。
この中でも特に特許の質と量を向上させるために大学院生に大学発ベンチャーキャピタルから給料を支払うことについて述べていきたい。
現在、少なくともアメリカや中国の大学では大学院生は研究室に雇われる形などを利用して、実質的にはほとんど学費や生活費の心配をせずに自由に研究ができる形が整えられている。一方で日本の大学院生は学費や生活費を自己負担する必要があるので、日本では大学院は優秀な人が進学する機関ではなく、富裕層の子供がモラトリアムを楽しむための機関となっている。これではイノベーションを生み出すような新たな研究を行うことは難しいし、世界から優秀な人材を集めることも難しい。
そこで、大学が持つ資金をベンチャーファンドとし、毎年その総額の2%を有意な学生への奨学金として生活費・学費に当て、そこから生まれたベンチャーのシーズをイノベーションを起こす原動力とするのが良いと考える。学生が卒業段階で有為な技術があるのであれば、その学生の才能を買うような形でその学生が立ち上げた会社ごと卒業生が就職している大企業などが買い上げるという仕組みを作ることで世界の先進企業にも負けない人材競争力を日本企業が作ることもできるはずだ。
この方法の弊害はベンチャーを立ち上げる過程で詐欺的な技術や一見聞こえの良い技術を大学側が宣伝する可能性があり、そのことが大学の信用を落とす危険性である。
(796文字)

2.(解答例3)

私が今後の日本経済の活性化に必要なイノベーションを生み出すための政策として考えるのは、資料2で問題とされているリスクマネー供給のための仮想通貨関連の税制の改革を仮想通貨収益を雑所得から投資収益とする形で行うこと、資料3で問題になっている特許の質と量を向上させるために大学院生に大学発ベンチャーキャピタルから給料を支払うこと、資料5で問題になっている環境問題を解決するために家計と個人にも排出権取引を一部導入することの3つがある。
この中でも特に環境問題を解決するために家計と個人にも排出権取引を一部導入することについて述べていきたい。
家計や個人への排出権取引の導入は、家計や個人が持つ排出権以上の温室効果ガス排出を行ったときに課徴金を取られることを意味するため、効率的な環境保護対策につながる。また炭素税と異なりその市場価格は需要側と供給側の取引により決まるため、汚染削減コストを考慮したものになり汚染削減を炭素税よりも促しやすくなる。
この方法の問題点は、このことが貧困層から富裕層への所得移転を意味することだ。一般に富裕層の家の設備はオール電化などが進んでおり温室効果ガス削減効果が高い。一方で貧困層の家では古い設備が使われており必ずしもそうではない。このことにより貧困層が富裕層に排出権取引でお金を払うという取引が跋扈することが十分ありうる。
そこで消費税導入時などと同じように、例えば年収200万円以下までの世帯についてはその分の補助金を出すなど貧困層の更に困窮する要素を減らしていくことが重要である。
(657文字)

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