慶應義塾大学総合政策学部 2022年 小論文過去問解説

慶應義塾大学総合政策学部 2022年 小論文過去問解説

問1: (40/200)

それぞれのテーマについて重要であると思われるトレードオフ関係を1つずつ指摘してください。(12/40)1つ4点×3、トレードオフになっていれば満点、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

<テーマ1: コーポレートガバナンス>

・ 株主の利益に焦点を当てると、他のステークホルダーの利益が損なわれる場合がある。

他の例:

  • コンプライアンスに焦点を当てると、経済的効率性が損なわれる場合がある。
  • 事前の制度設計に焦点を当てると、事後の監督がおろそかになることがある。

 

<テーマ2: パーソナルデータ>

  • サービスを便利にすればするほど、個人情報が漏洩するリスクが高まる。

 

<テーマ3: サプライチェーン>

  • 在庫を圧縮しすぎると、品切れが発生する

 

上であげた関係がどうしてトレードオフになるか理由を考え、それぞれ120字以内で論じてください。(18/40)、トレードオフになっている理由になっていれば満点、論理飛躍があれば点数半減、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

<テーマ1: コーポレートガバナンス>

(結論)

・ 株主の利益に焦点を当てると、他のステークホルダーの利益が損なわれる場合がある。

 

(根拠)

株主の利益ばかりに焦点を当てると、短期的には従業員の人件費削減や周辺環境への無配慮によって営業利益、そしてそれを原資とする株主への配当を生み出そうとする動きが強まり、従業員や地域社会など他のステークホルダーの利益が損なわれるためである。

 

(結論)

  • コンプライアンスに焦点を当てると、経済的効率性が損なわれる場合がある。

 

(根拠)

コンプライアンスに焦点を当てると、ビジネスを立ち上げる動きが遅くなったり、新しいビジネスの立ち上げが困難になることがある。このことから、コンプライアンスに焦点を当てることで経済的効率性が損なわれるためである。

 

(結論)

  • 事前の制度設計に焦点を当てると、事後の監督がおろそかになることがある。

 

(根拠)

事前の制度設計に焦点を当てると、設計した制度についてしっかり運用されているかという事後の監督がおろそかになり、常に事前の制度設計ばかりに集中してしまうことがあるためである。

 

<テーマ2: パーソナルデータ>

(結論)

  • サービスを便利にすればするほど、個人情報が漏洩するリスクが高まる。

 

(根拠)

個人情報を一元的に管理することにより、個人情報をいちいち入力する手間を省くサービスはその便利さの一方で、個人情報が安易に漏洩してしまうリスクをはらんている。このように、便利なサービスはその反面、個人情報漏えいリスクをはらんでいるためである。

 

<テーマ3: サプライチェーン>

(結論)

  • 在庫を圧縮しすぎると、品切れが発生する

 

(根拠)

在庫を圧縮しすぎると、出荷量が足りなかったり、在庫が補充されるまでのリードタイムが長かったり、在庫補充の頻度が少なかったり、需要が変動した場合に、品切れが発生するためである。

 

問2 (160/200)

問1で指摘したトレードオフ関係の中から1つを選び、3ページに記した(イ)(ロ)(ハ)のいずれかの対処方針を用い、どのような方策で解決すべきかを1000字以内で論じてください。なお、(イ)(ロ)(ハ)ではない他の考え方で対処できるという場合には、その旨記し、どのような考え方か説明したええで答えてください。SFCでは型にはまらない学生を歓迎しているので本当にそれが正しいと思ったら、臆せず挑戦してみてください。

 

議論の整理……[200]

(15/160)コーポレートガバナンス、株主利益、ステークホルダー利益

トレードオフについて双方の立場から説明できていれば満点、片方だけなら5点、論理飛躍があれば点数半減、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

 

ここで、テーマ1にあるコーポレートガバナンス、特に株主利益とステークホルダー利益のトレードオフについて考えてみたい。ここで述べられていることは、少なくとも短期的には株主利益を優先すると、他のステークホルダーの利益を損なうことがあるということだ。具体的には、株主への配当を優先すると、事業所周辺の環境に対する配慮や従業員への配慮に欠けることがあるというのがその一例だろう。

 

問題発見……[200]

(15/160)株主利益とステークホルダー利益が両立しない

問題発見としてトレードオフが説明できていれば満点、片方だけなら5点、論理飛躍があれば点数半減、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

 

ここで、株主利益とステークホルダー利益が両立しない理由としては、あくまでも時間軸が短期だからである。短期的には、株主への配当を優先すれば、従業員や周辺環境への配慮は蔑ろになってしまう。しかし、時間軸を長期にとれば、従業員への待遇を改善し、周辺環境に配慮することによって、新たな自動化イノベーションや環境保護イノベーションを起こすことができ、そのことが利益を増大させ、株主への利益を増やす可能性もある。

 

論証……[200]

(100/160)短期ではイ、長期ではハ(言い分方式)

論証について、言い分方式・背理法・演繹法・帰納法などなんらかの論理構成で書けていれば50点追加、また、論証の行い方がユニークで他に類を見ないものであればユニーク度に応じて50点追加、論理飛躍があれば点数半減、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

 

このように考えると、私がこのトレードオフを解決する方法としては、短期的にはイ、つまり株主への配当を抑える代わりに、従業員への待遇改善や周辺環境への配慮を優先する。しかし、そうした場合の株主への配慮として、長期的には従業員への待遇改善を行う代わりに不必要な人員採用をせず、自動化イノベーションを起こしたり、周辺環境への配慮のために開発した技術を新たな収益源とする環境イノベーションを起こす。

 

結論……[200]

(15/160)短期ではイ、長期ではハ

結論は書けていれば半分、論証との関連性があれば半分、論理飛躍があれば点数半減、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

 

このような形で、短期的にはイ、長期的にはロを採用するのが私のトレードオフを解消する方法である。代表的な3つの対処方針では、(イ)のままだと切り捨てられた側のステークホルダーの不満は貯まる一方であるし、(ロ)は問題の解決にはなりえないどころか問題の先送りになる。(ハ)は理想的ではあるが、短期的には実行が難しい事が多い。そこで、短期的には(イ)、長期的には(ハ)という問題解決アプローチを採用する。

 

吟味……[200]

(15/160)ビジョナリー・カンパニー、エクセレント・カンパニー

利害関係者検討か他の解決策との比較ができていれば満点、論理飛躍があれば点数半減、そのほか漢字間違い、主述の抜け、送り仮名間違いなど-1点ずつ

 

ここで付言すると、ビジョナリー・カンパニーというアメリカの経営学の名著ではこのような長期的アプローチが推奨されている。長期的に繁栄を築く企業は、時間軸を長く置くために泣いて馬謖を斬るような判断も厭わないケースが多い。少なくとも、長期目線で利益を考える余裕があるステークホルダーに長期目線での関係性構築を要請することは、長期の繁栄のためには必要不可欠だと私は考える。

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