慶應SFC 環境情報学部 2002年 小論文 解説【林塾長作成】

問1(80/200)(800字)

議論の整理(5/80)……人類の空へ向かう構想力

……書けてれば5点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

人類の空に向かう構想力は過去から現代に至るまで一貫している。かつてそれはバベルの塔という神話として継承されてきたが、実際そうした高層建築が可能になると人々は摩天楼を生み出してきた。

 

問題発見(5/80)……それ自体が抱える問題点

……書けていれば2点、新規性があれば2点、緻密性(先々の論述に対して布石を打てている問題提起)であれば1点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

摩天楼それ自体が抱える問題点としては、極度に高層化された建物が我々の健康を害するという側面がある。気圧の変化や重力の微妙な差、近くに虫などがいない環境が学力に影響を及ぼすのではないかという指摘を私も新聞記事などで目にしたことがある。

 

論証(60/80)……摩天楼の発生、技術の可能性と限界、人類の生存

……3要素各20点、書けていれば5点、新規性があれば10点、緻密性があれば5点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

私が考えるに、摩天楼の発生は必然的なものであると言える。摩天楼は才能豊かな人々を一定の範囲に集め、才能豊かな人同士の豊かなコラボレーションを産むという側面に置いて大きな役割を果たしてきた。一方で、摩天楼そのものが持つ技術の可能性と限界も否定はできない。摩天楼は年々その高度を高めているが、その行き着く先が居住者の健康被害や生存の危機なのではないかという懸念もある。

こうした懸念をさらに拡張し、人類の生存という点に目を向けると、摩天楼の内部というのが思った以上に画一的であることに私は人類の生存の危機を感じる。こうした画一的な建物の中で生まれたアイディアは自然と画一的になり、そうしたアイディアが、ある時点でのなんらかの危機に対し、なんらかの脆弱性を示し人類の生存の危機につながると考えているためだ。

 

結論(5/80)……結論

……書けていれば2点、新規性があれば2点、緻密性(先々の論述に対して布石を打てている問題提起)であれば1点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

そうしたある種の画一性を排除するためには、むしろ摩天楼の範囲を広げ、摩天楼の希少性を削ぎ減らすことで、摩天楼への入居コスト・利用コストを下げ、様々な人が共存共栄できる空間を作ることで多様性を産むあり方が考えられる。

 

吟味(5/80)……吟味

……書けていれば2点、新規性があれば2点、緻密性(先々の論述に対して布石を打てている問題提起)であれば1点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

こうした多様性は時として重大な事故につながることもあるが、摩天楼の可能性として死角が乏しいことや、セキュリティーコントロールが行いやすいという点も挙げられるため、むしろ都市部の一部にスラムが形成される現在のいびつな都市構造よりも新しいアイディアを生み出す可能性がある点、セキュリティーが担保される点の二点において優れているのではないかと考える。

 

人類の空に向かう構想力は過去から現代に至るまで一貫している。かつてそれはバベルの塔という神話として継承されてきたが、実際そうした高層建築が可能になると人々は摩天楼を生み出してきた。

摩天楼それ自体が抱える問題点としては、極度に高層化された建物が我々の健康を害するという側面がある。気圧の変化や重力の微妙な差が健康に影響を及ぼすのではないかという指摘を私も新聞記事などで目にしたことがある。

私が考えるに、資料2にある論考とは異なり、摩天楼の発生は必然的なものであると言える。摩天楼は才能豊かな人々を一定の範囲に集め、豊かなコラボレーションを産むという側面に置いて大きな役割を果たしてきた。一方で、摩天楼そのものが持つ技術の可能性と限界も否定はできない。摩天楼は年々その高度を高めているが、その行き着く先が居住者の健康被害や生存の危機なのではないかという懸念もある。

こうした懸念をさらに拡張し、人類の生存という点に目を向けると、摩天楼の内部の居住者のあり方が思った以上に画一的であることに私は人類の生存の危機を感じる。こうした画一的な建物の中で生まれたアイディアは自然と画一的になり、そうしたアイディアが、ある時点でのなんらかの危機に対し、なんらかの脆弱性を示し人類の生存の危機につながると考えているためだ。

そうしたある種の画一性を排除するためには、むしろ摩天楼の建設される範囲を広げ、摩天楼の希少性を削ぎ減らすことで、摩天楼への入居コスト・利用コストを下げ、様々な人が共存共栄できる空間を作ることで多様性を産むあり方が考えられる。

こうした多様性は時として重大な事故につながることもあるが、摩天楼の可能性としてセキュリティーコントロールが行いやすいという点も挙げられるため、むしろ今よりも安全性を高めた形で、新しいアイディアを生み出す可能性がある点において優れているのではないかと考える。

(791文字)

 

問2(120/200)(制限字数無制限)

 

議論の整理(5/120)……バベルの塔の現状整理

……書けてれば5点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

資料1にあるようにバベルの塔は、天まで届こうとする塔を建てようとした人類の傲慢に怒りを覚えた神がそれを破壊し、人類の言語をバラバラにしたという故事である。このバベルの塔が現在も建設されていたとしたら、どのような形でプロジェクトを進めるべきかについての論考を述べる。

 

問題発見(5/120)……バベルの塔の問題点

……書けていれば2点、新規性があれば2点、緻密性(先々の論述に対して布石を打てている問題提起)であれば1点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

まず、バベルの塔の問題点は、そのサンクコストの高さである。

 

論証(100/120)……バベルの塔の問題点のピラミットストラクチャーA→B,C,D

……ピラミットストラクチャーA→B,C,Dで各25点、書けていれば各5点、新規性各10点、緻密性各10点

 

バベルの塔を建てるための累積コストが金銭的な意味でも労力的な意味でも思想的な意味でも高すぎるため、バベルの塔を更地にして普通の摩天楼を建てる、といった発想を許容できないことがバベルの塔の今後を難しくしているもっとも大きな要因である。

ここでまず、金銭的な意味での累積コストについて考えると、バベルの塔の解体にあたってはこの金銭的な意味での累積コストを回収する取り組みが必要になる。ただ解体して解体後の構造物を産業廃棄物として捨てるのではなく、一つ一つの石を丁寧に切り分けて販売し収益化するなど、何らかの形で金銭的な累積コストを回収する取り組みが必要であろう。

また、労力的な意味での累積コストについては、いままでバベルの塔に関わった人々に今まで払った労賃以外の報奨を与えるべきだろう。そもそも労働に対する報奨には、金銭的なものと心理的なものの二つがあるが、今回バベルの塔を解体するとなると後者は大きく損なわれる。そこで、少なくとも我々がバベルの塔を作ろうとしたのだという暁に、切り分けた石の一部は作業員に無償で提供し、自らの行った仕事に一定の矜持を持てるようにする必要がある。

また、思想的な意味での累積コストとしては、バベルの塔そのものが統一言語を持っていた人類の言語を分断させたという故事を持つシンボリックな構造物であることから、バベルの塔を建てることには、それにより我々の文化対立はかなり改善されるというある種の期待を帯びている。そのため、バベルの塔解体後に構築する摩天楼についてもそうした思想的役割を持たせるべきだろう。

 

結論(5/120)……バベルの塔の解決策

……書けていれば2点、新規性があれば2点、緻密性であれば1点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

このように、金銭的サンクコスト・労力的サンクコスト・思想的サンクコストを回収できる手立てを十分に整えた上で、バベルの塔解体後の跡地には摩天楼を建設すべきだと考える。つまり従来のバベルの塔が持っていた理想を現在の建築技術をもってある程度までは実現するのだ。

 

吟味(5/120)……バベルの塔の吟味

……書けていれば2点、新規性があれば2点、緻密性であれば1点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

その上で、天まで届く構造物というのは、やはり構造的には難しく限界があるため、少なくとも文化対立の緩和という機能をその摩天楼に持たせ、たとえば摩天楼の内部では英語を公用語にして全世界の人々とのコミュニケーションがスムーズに運ぶようにする、摩天楼内部を職場とする場合に限りビザの発給要件を緩和するなど、何らかの形でバベルの塔が持っていた理想を継承するような取り組みが必要になるだろう。

 

 

資料1にあるようにバベルの塔は、天まで届こうとする塔を建てようとした人類の傲慢に怒りを覚えた神がそれを破壊し、人類の言語をバラバラにしたという故事である。このバベルの塔が現在も建設されていたとしたら、どのような形でプロジェクトを進めるべきかについての論考を述べる。

まず、バベルの塔の問題点は、そのサンクコストの高さである。

バベルの塔を建てるための累積コストが金銭的な意味でも労力的な意味でも思想的な意味でも高すぎるため、バベルの塔を更地にして普通の摩天楼を建てる、といった発想を許容できないことがバベルの塔の今後を難しくしているもっとも大きな要因である。

ここでまず、金銭的な意味での累積コストについて考えると、バベルの塔の解体にあたってはこの金銭的な意味での累積コストを回収する取り組みが必要になる。ただ解体して解体後の構造物を産業廃棄物として捨てるのではなく、一つ一つの石を丁寧に切り分けて販売し収益化するなど、何らかの形で金銭的な累積コストを回収する取り組みが必要であろう。

また、労力的な意味での累積コストについては、いままでバベルの塔に関わった人々に今まで払った労賃以外の報奨を与えるべきだろう。そもそも労働に対する報奨には、金銭的なものと心理的なものの二つがあるが、今回バベルの塔を解体するとなると後者は大きく損なわれる。そこで、少なくとも我々がバベルの塔を作ろうとしたのだという暁に、切り分けた石の一部は作業員に無償で提供し、自らの行った仕事に一定の矜持を持てるようにする必要がある。

また、思想的な意味での累積コストとしては、バベルの塔そのものが統一言語を持っていた人類の言語を分断させたという故事を持つシンボリックな構造物であることから、バベルの塔を建てることには、それにより我々の文化対立はかなり改善されるというある種の期待を帯びている。そのため、バベルの塔解体後に構築する摩天楼についてもそうした思想的役割を持たせるべきだろう。

このように、金銭的サンクコスト・労力的サンクコスト・思想的サンクコストを回収できる手立てを十分に整えた上で、バベルの塔解体後の跡地には摩天楼を建設すべきだと考える。つまり従来のバベルの塔が持っていた理想を現在の建築技術をもってある程度までは実現するのだ。

その上で、天まで届く構造物というのは、やはり構造的には難しく限界があるため、少なくとも文化対立の緩和という機能をその摩天楼に持たせ、たとえば摩天楼の内部では英語を公用語にして全世界の人々とのコミュニケーションがスムーズに運ぶようにする、摩天楼内部を職場とする場合に限りビザの発給要件を緩和するなど、何らかの形でバベルの塔が持っていた理想を継承するような取り組みが必要になるだろう。

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