慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 1997年 解説

・ 問題文

問題 以下の資料1~4はすべて「知識」と「情報」について論じたものであるが,これらの資料のそれぞれの論点に必ず言及しながら,来たるべき21世紀の社会における「知識」と「情報」の関係について1000字以内で論じなさい。

・ 問題の読み方

 これは一般的な5STEPsを用いる問題だが、問題を見ただけでは何を書いたら良いか皆目検討が付かない問題である。

 ”来たるべき21世紀の社会における「知識」と「情報」の関係について1000字以内で論じなさい。”という問題文は、”来たるべき21世紀の社会における「知識」と「情報」の関係について(何が問題になるかを)1000字以内で論じなさい。”と読み替えるべきであろう。論じるというのはそもそも起こりうる問題について論争ことを指すためである。

 資料のそれぞれの論点に必ず言及しながら、とあるので、議論の整理が欠かせないことは言うまでもないが、問題発見・論証・解決策or結論・解決策or結論の吟味という形で進めていくと良いだろう。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 知識と情報の関係については経済学部でも出題実績があるが、こうしたものについての問題意識を持つことは意識していないと極めて難しい。断片的なデーターである情報を知識として体系化するにあたっては、個々人で文脈を形成する必要があり、そこには当然認知バイアスが介入しうる。そうした認知心理学や言語学の知見にもアカデミックなどで触れながら書くことが求められる難易度の高い問題である。

・ 模範解答

議論の整理→

現代は資料2でも述べられているように、ネットワークが社会の中心を担っており、「情報化社会」と言われている。私たちは生活の中で常に、情報通信技術の恩恵を享受している。デジタル技術やコンピュータの発達と普及にともない、膨大な量の文字や動画などを蓄積することが可能である。それらの検索も、瞬時に行えるようになった。さらに、インターネットの発達は、情報の個人レベルでの迅速な交換を可能にした。その効率の良さや自由度は、とても高いものである。

問題発見→

そのような流れの中で、世の中では、多様な情報が氾濫している。

論証→

インターネットの発達により、個々人が自由に情報を発信し合えるようになった背景で、資料1にもあるように、ある情報の信憑性などを見極めるための機関や組織がほぼ存在していないからである。つまり、個々人が、自分の視点のみで情報の価値を判断し、氾濫する情報を取捨選択していかなければならなくなっている。

解決策or結論→

これらを踏まえこれからの私たちに必要なのは、多くの情報を批判的に分析し取捨選択して、「知識」として自らに取り込む能力である。氾濫している情報は、その信憑性に関わらず「情報である」ことに変わりはない。それらを常に批判的な角度から見ることによって初めて、情報の信憑性の低さや有害性に気づくことができる。また、資料4からも分かるように、情報は「知識」の素材である。単に、信憑性の低い、有害な情報を避ける能力だけが求められているわけではない。21世紀は、「ネットワーク」が社会システムの中心である情報化社会だ。そのような時代の中で、ネットワーク中の個々人が情報を自らの知識に変換し取り込んでいく能力は、情報を取捨選択する上で、効果を発揮するものであるといえる。なぜなら、ネットワーク社会を存続させるためには、それを形成する人々同士で、有用な知識や情報をネットワークに投入し続けることが必須条件だからだ。また、こうしたネットワークの中でも情報の真偽を検証する方法論を蓄積していくことも、情報の取捨選択のためには有効だろう。

解決策or結論の吟味→

他にも、こうしたネットワークの構成員が学際的なテーマをフォローできるように、様々な分野の専門家をこうしたネットワークに招き入れることも必要不可欠である。有害な情報を回避するのではなく、選び抜き、知識として自らの中に蓄積させていく。そうすることで、氾濫する様々な情報を、自らにとって価値のあるものに変えることができる。そして、21世紀の情報化社会を存続させていくことも可能である。

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