・ 問題文
いま現実に存在する問題を、科学技術を用いて科学的に計量する新たな方法を提案してください。
計量する問題は、科学技術上の問題でも、社会問題でもかまいません。地球規模の問題でも、身近な問題でもかまいません。
科学技術を駆使して現実の問題に取り組むためには、問題を計量し、データを得ることが欠かせませせん。得られたデータを通して問題を正確に把握し、それを踏まえて解決方法を考案していくことになります。
また、測定するデータに基づき、問題の要点を把握するのに役立つ新しい単位を考案してください。
以上について、問1~4に答えてください。
問1 【解決したい問題】あなたが解決しようとする、現実に存在している問題を200字以内で説明してください。なぜそれが問題なのかについても述べてください。
問2 【問題を計量する方法】問題を科学的に計量するために、どんなデータをどんな方法で測定するのかを400字以内で説明してください。すでに存在する科学技術を使うだけでなく、将来に開発を期待する未来の科学技術を用いてもかまいません。
闇雲に大量のデータを得るだけでは、問題の本質を理解することはできません。問題を正確に把握するために、何を知る必要があり、どうすればそれを計量することができるのか、考え抜いてください。場合には、その中で最も重要と思われる測定について述べてください。
科学的な測定には、誰が何度測っても(許容できる誤差の範囲内で)同じデータを得られることが求められます。これを再現性のある方法と言います。提案する測定方法に再現性が備わっているかも考慮してください(再現性に欠けるおそれのある方法の一例が資料7にあります)。
問題解決のために2つ以上の計測を実施する必要があると考えられる場合には、その中で最も重要だと思われる測定について述べて下さい。
問3 【新しい単位】あなたの考案した単位を200字以内で説明してください。単一のデータがそのまま単位になってもいいですし,いくつかのデータを組み合わせて算出する単位でもかまいません。ただし,問2で答えたデータを必ず用いてください(資料5~7参照)。
単位の意義については問4で尋ねるので,問3では,新しい単位で表される数値が何を意味し,どんなデータをどのように組み合わせて計算するかに絞って記述してください。
資料5(炭素フラックス)を例にとれば「大気,海洋,森林等の炭素を貯蔵する各炭素プール間の炭素の移動量を表す。単位面積当り,単位時間当りの移動炭素重量として算出される」などとなります。
問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】この単位によって問題のどんな性質が明らかになるのかを600字以内で説明してください。単位で表される数値が大きい(小さい)とき,増加(減少)傾向にあるとき,めまぐるしく増減を繰り返しているとき,あるいは変化が見られないとき,それは問題のどんな性質を反映しているのでしよう。あなたの提案する単位が問題を理解する上でいかに役立つかをアピールしてください。
・ 問題文の読み方
この問題については、字数が多い問題から解くべきであるという原則は成り立たない。どの問題が「目的」でどの問題が「手段」にあたるかを考え、目的を明確化したあとに、手段を考える必要がある。
この問題において、目的に当たるのは問1 【解決したい問題】問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】であり、手段にあたるのが問2 【問題を計量する方法】問3 【新しい単位】である。
それぞれ、
目的:問1 【解決したい問題】(200字)←手段:問2 【問題を計量する方法】(400字)
目的;問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】(600字)←手段:問3 【新しい単位】(200字)
という形の従属関係になっているので、それぞれこのような順番で書く。
・ SFCが求める解答への指針
まず、それぞれに用いるフォーマットを決める。
目的:問1 【解決したい問題】(200字)←手段:問2 【問題を計量する方法】(400字)
目的;問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】(600字)←手段:問3 【新しい単位】(200字)
という形になっているので、
200字前後……結論・根拠・具体例で書く
400字以上……5STEPsを用いる
の原則より、
目的:問1 【解決したい問題】(200字:結論・根拠・具体例)←手段:問2 【問題を計量する方法】(400字:5STEPs)
目的;問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】(600字:5STEPs)←手段:問3 【新しい単位】(200字:結論・根拠・具体例))
という形での構成を取る。
ここでまず、問1 【解決したい問題】について考える。
解決したい問題については、従来では数値で判断されにくかったという問題意識が当然必要であるので、従来数値では判断されづらかった分野での定量化が必要になる。よって、そのようなテーマに沿って、以後答案を構成する。
結論→
私が解決したい問題は、事務職員の能力の定量化である。
根拠→
なぜなら、事務職員は営業職や研究職と違い、その能力の定量化が行われておらず、印象などの定性的な部分が評価により大きく影響しているためである。
具体例→
具体的には、容易な〆切を設定し、それを達成した人材が高く評価される一方、厳しい〆切を設定し、それを八割以上達成した人間が評価されないといったような事態が生じることがある。
次に、この問題意識に沿って、この問題意識を計量するための手段としての、問2 【問題を計量する方法】について考える。
議論の整理……
共通の前提→
公平な人材評価は人材のモチベーションを高めるために欠くべからざる要素である。
議論の論点→
しかし、近年では、営業職や研究職がその成果に応じて大きく報われる一方で、事務職員はその能力の定量化が難しく昇進からも外されることが多いという実情がある。
問題発見
問題発見→
こうした中で、事務職員の評価は、多くの場合上司の印象で決まるという問題点がある。なぜなら、それを評価するための明確な指標がないためだ。たとえば、容易な〆切を設定し、それを達成した人材が高く評価される一方、厳しい〆切を設定し、それを八割以上達成した人間が評価されないといったような事態が生じることがある。
論証
原因A→
なぜ、事務職員の仕事ぶりが正しく評価されないのかというと、各作業に対する経済的な付加価値を試算していないためである。
原因B→
たとえば、税務処理を行わなかった場合に生じる機会損失を計算し、それを税務処理の各作業にかかる労力に応じて落とし込めば、税務処理の各作業が持つ経済的価値を試算できる。
原因C→
さらに、ここで税務処理の各作業にかかる労力について、各労働者の作業にかかる平均的な時間を算出する仕組みがあれば、事務員の作業量についてかなり客観的な評価を下すことも可能になる。
解決策or結論
根本的な原因を潰すための解決策or結論→
よって、事務職員の労働価値を、作業の労力×作業が生み出す期待収益で表し、それらを細かい財務諸表と作業管理により表現することで、より公平な事務員評価ができると考えられる。こうした考え方は、作業動線の効率化などに代表される人間工学と、会計学・経済学などの融合によってもたらされるものである。
解決策or結論の吟味
利害関係者検討→
こうした取り組みは、パフォーマンスの高い事務職員をモチベートするだけでなく、パフォーマンスの低い事務職員にさえ危機感を与え最大のパフォーマンスを出すようにインセンティブを付与する。
結論→
よって、こうした定量的な事務員評価にシステムをより多くの職場で導入すべきだと私は考える。
ここまでが、まず一つのセットである。
次に、問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】について考えよう。
新しい単位によって明らかになる問題の性質、という言葉を言い換えると、それまでの単位によっては明らかになっていなかった問題の性質があるという理解である。それを問題提起し、その原因を分析して解決策or結論まで導けばこの問題は解決したも同然である。
議論の整理
共通の前提→
これまで、事務員を評価する明確な指標がなかったため、事務員の評価は曖昧なもの、上司の印象によって決まるものとされてきた。
議論の論点→
ところが、新たな単位の登場により、事務員の仕事における期待収益の高さと、平均的な作業量との乖離を掛け合わせることで、その事務員がもたらす付加価値を明確に算定できるようになった。
問題発見
問題発見→
ここで、従来見過ごされてきた非効率な一部事務員の仕事ぶりが問題となってきた。
論証
原因A→
こうした事務員の非効率な仕事ぶりが見逃されてきた背景としては、事務員の仕事ぶりに対する評価が上司の印象によって決まってきた点にある。
原因B→
なぜ上司の印象によってのみ、事務員の印象が決まってきたかというと、それ以外に事務員を判断する要素がなかったためである。結果として、たとえば、容易な〆切を設定し、それを達成した人材が高く評価される一方、厳しい〆切を設定し、それを八割以上達成した人間が評価されないといったような事態が生じることがある。
原因C→
なぜ明確な基準が生まれないのかというと、事務員の仕事の姿勢を、作業量や期待収益という視点から見るケースが少ないためである。
解決策or結論
解決策or結論→
解決策or結論としては、財務諸表の詳細化により仕事ごとの期待収益を算出し、スマホなども活用した労働力管理により平均作業量との乖離を導くことである。
解決策or結論の吟味→
こうした評価基準は少なくとも定性的な印象による評価よりは、大きな妥当性を担保できる。
問3 【新しい単位】
結論→
私が新しい単位として提案したいのは、事務作業付加価値である。事務作業付加価値は、その事務作業から期待できる収益と、その事務作業全体の作業量に対して当該事務職員が果たした作業量の比を掛け合わせることによって求められる。
根拠→
なぜなら、事務職員の仕事は、その付加価値に期待して依頼されるものだからである。
具体例→
たとえば、ある経営者が税務申告の事務を事務員に依頼する場合、それをしなかった場合の機会損失と天秤に掛けて依頼する。また、その作業量についても、おおよその目安を参考に依頼することが多い。
・ 模範解答
問1 【解決したい問題】
私が解決したい問題は、事務職員の能力の定量化である。
なぜなら、事務職員は営業職や研究職と違い、その能力の定量化が行われておらず、印象などの定性的な部分が評価により大きく影響しているためである。
具体的には、容易な〆切を設定し、それを達成した人材が高く評価される一方、厳しい〆切を設定し、それを八割以上達成した人間が評価されないといったような事態が生じることがある。
問2 【問題を計量する方法】
公平な人材評価は人材のモチベーションを高めるために欠くべからざる要素である。
しかし、近年では、営業職や研究職がその成果に応じて大きく報われる一方で、事務職員はその能力の定量化が難しく昇進からも外されることが多いという実情がある。
こうした中で、事務職員の評価は、多くの場合上司の印象で決まるという問題点がある。なぜなら、それを評価するための明確な指標がないためだ。たとえば、容易な〆切を設定し、それを達成した人材が高く評価される一方、厳しい〆切を設定し、それを八割以上達成した人間が評価されないといったような事態が生じることがある。
なぜ、事務職員の仕事ぶりが正しく評価されないのかというと、各作業に対する経済的な付加価値を試算していないためである。たとえば、税務処理を行わなかった場合に生じる機会損失を計算し、それを税務処理の各作業にかかる労力に応じて落とし込めば、税務処理の各作業が持つ経済的価値を試算できる。さらに、ここで税務処理の各作業にかかる労力について、各労働者の作業にかかる平均的な時間を算出する仕組みがあれば、事務員の作業量についてかなり客観的な評価を下すことも可能になる。
よって、事務職員の労働価値を、作業の労力×作業が生み出す期待収益で表し、それらを細かい財務諸表と作業管理により表現することで、より公平な事務員評価ができると考えられる。こうした考え方は、作業動線の効率化などに代表される人間工学と、会計学・経済学などの融合によってもたらされるものである。
こうした取り組みは、パフォーマンスの高い事務職員をモチベートするだけでなく、パフォーマンスの低い事務職員にさえ危機感を与え最大のパフォーマンスを出すようにインセンティブを付与する。
よって、こうした定量的な事務員評価にシステムをより多くの職場で導入すべきだと私は考える。
問4 【新しい単位によって明らかになる問題の性質】
これまで、事務員を評価する明確な指標がなかったため、事務員の評価は曖昧なもの、上司の印象によって決まるものとされてきた。ところが、新たな単位の登場により、事務員の仕事における期待収益の高さと、平均的な作業量との乖離を掛け合わせることで、その事務員がもたらす付加価値を明確に算定できるようになった。
ここで、従来見過ごされてきた非効率な一部事務員の仕事ぶりが問題となってきた。
こうした事務員の非効率な仕事ぶりが見逃されてきた背景としては、事務員の仕事ぶりに対する評価が上司の印象によって決まってきた点にある。なぜ上司の印象によってのみ、事務員の印象が決まってきたかというと、それ以外に事務員を判断する要素がなかったためである。結果として、たとえば、容易な〆切を設定し、それを達成した人材が高く評価される一方、厳しい〆切を設定し、それを八割以上達成した人間が評価されないといったような事態が生じることがある。なぜ明確な基準が生まれないのかというと、事務員の仕事の姿勢を、作業量や期待収益という視点から見るケースが少ないためである。
解決策or結論としては、財務諸表の詳細化により仕事ごとの期待収益を算出し、スマホなども活用した労働力管理により平均作業量との乖離を導くことである。
こうした評価基準は少なくとも定性的な印象による評価よりは、大きな妥当性を担保できる。
問3 【新しい単位】
私が新しい単位として提案したいのは、事務作業付加価値である。事務作業付加価値は、その事務作業から期待できる収益と、その事務作業全体の作業量に対して当該事務職員が果たした作業量の比を掛け合わせることによって求められる。
なぜなら、事務職員の仕事は、その付加価値に期待して依頼されるものだからである。
たとえば、ある経営者が税務申告の事務を事務員に依頼する場合、それをしなかった場合の機会損失と天秤に掛けて依頼する。また、その作業量についても、おおよその目安を参考に依頼することが多い。
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