- 議論の整理
情報技術を用いて行う学びであるe-ラーニングシステムは、従来の紙ベースの学習システムと比較して、学習者と学習ツールとの双方向のやり取りが存在することがその強みである。しかしながら、既存の多くのe-ラーニングシステムは単なる知識の伝達に留まっている場合が多く、個々の学習者のニーズに柔軟に対応するプラットフォームは少ない。ヒューマンコンピュータインタラクション学は、コンピュータを扱う人間のふるまいをも考慮に入れて情報システムを設計することを目指す学問であり、この観点から先述のシステムを見直すことには意義がある。
- 問題発見
金教授は当該領域において、e-ラーニングシステムを用いた能動的学習を達成する為のモデルを提案している。このモデルにおいては、学習者同士が互いを評価しあいながら学んでいくコミュニティーの形成を核としている。このようなピア・ツー・ピア型の学習方式以外に、e-ラーニングシステムの双方向性を強化するようなモデルにはどのようなものが考えられるだろうか。
- 論証
個人のニーズに対応する為には、学習者自身の心理的傾向を把握することが重要であると考える。従って、e-ラーニングのカリキュラムと心理テストを組み合わせ、学習者の性格に応じた目標設定や難易度の調整が自然に行えるようなモデルが有効であると推察される。実際、殿元らは心理テストの結果に応じた学習者個々人に適合するナッジ戦略を組み立てることによって課題への取り組み量を増加させることができる可能性を示している。そこで、本研究ではまず、心理的傾向のタイプとそれぞれに最適な学習方式について再度検討を行ったうえで、これを反映したe-ラーニングシステムを設計したい。
- 結論
情報が溢れかえる現代社会で求められるのは効率の良い学習方法であり、それを達成する為にe-ラーニングシステムは設計されるべきである。本研究が、その質の向上に貢献できることを期待している。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、情報学分野においてe-ラーニング支援を中心に数多くの論文を執筆してきた金教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
殿元禎史、黄瀬浩一 (2020).「英文多読のための個人に適合したナッジ戦略の検討」『ヒューマンコンピュータインタラクション』 186(9), 1-6
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