■ 議論の整理・・・
小型低価格化した3Dプリンターや家庭用工作機械を共同で所有し,新しいものづくりのムーブメントを実践する「ファブラボ」と呼ばれる工房スペースが,世界約150カ所の地域で続々と生まれている。日本でも,ファブラボ鎌倉を皮切りに,全国各地で続々と誕生している(*1)。デジタル工作機械の普及とインターネットを介したデザイン情報の共有によって,誰でもものづくりができる。ファブラボはネットワーク化されており,たとえばオランダに旅行するのに現地で自転車が欲しくなったら,オランダのファブラボに出向き,現地で自転車を作ることも可能である。いわば物体を情報化して輸送しているといえる。いずれファブラボが図書館や公民館などと同列に公共施設の一部となる時代も来るだろう。貴学環境情報学部の田中浩也教授は,家内制ものづくりを「パーソナルファブリケーション」(工業の個人化)と呼んでいる(*1)。これは産業革命以前の「家内制手工業」を,コンピューター支援による「家内制機械工業」に昇華させたものと見ることもできる。
■ 問題発見・・・
ところで,パーソナルファブリケーションによって人間はどう変わるだろうか。インターネットの普及により誰でも自作音楽や自撮映像を発表したり,情報発信したりできるようになったのと同様に,パーソナルファブリケーションが普及すれば,誰でも実際にモノが作れるようになる。これが消費者マインドに変化をもたらすことは容易に想像できる。
■ 論証・・・
しかし,パーソナルファブリケーションの現況はインターネット黎明期とよく似ていて,パーソナルファブリケーションの可能性はまだほとんど理解されていない。3Dプリンターなどの工作機械をいかに社会に浸透させるか。若者に蔓延する理工学離れという時代傾向をどう変えていくか。いずれも国策による抜本的対策が必要となろう。
■ 結論・・・
そこで,日本におけるファブラボの仕掛け人である貴学の田中浩也教授に師事し,パーソナルファブリケーションの真の可能性について研究を深め,ファブラボの拡大とパーソナルファブリケーションの普及に寄与したい
■ 結論の吟味・・・
貴学SFCの田中浩也研究会は,日本においてパーソナルファブリケーションを進展させる先端研究開発拠点として,次世代の造形工作機械や設計支援環境の研究開発を行っている(*1)。そこで,上述の研究に最適な環境は田中浩也研究会をおいて他にはないという考えのもと,貴学SFCに入学し,田中浩也研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 田中浩也.“Keio SFC Hiroya Tanaka Lab.” < https://fab.sfc.keio.ac.jp/ >
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