慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 2000年 解説

・ 問題文

問題 次の5つの資料は、技術革新が経済、社会、国家などに及ぼす影響を様々 な観点から述べたものです。これらの資料の論点に適宜言及しつつ。今日 の技術革新がもたらしている大きな影響について論じ、そうした状況の下での国家の役割について検討しなさい (合計で1000字以内)。

・ 問題の読み方

 これは5STEPsで書くだけの簡単な問題である。技術革新による影響を大前提として整理し、技術革新に対する国家の影響についてその論点をまとめ、その上で技術革新に対する国家の介入についての問題点を挙げ、その原因を分析して、解決策or結論を述べ、それを吟味するのみである。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 技術革新の影響を、経済側面、社会側面、政治側面から考える必要があり、かつ国家の役割について考える必要がある。経済側面、社会側面、政治側面からの検討は、リンガメタリカやアカデミック、ミルトン・フリードマンの選択の自由などを読むのが良い。国家の役割については、フリードマンも触れているが、原初的には「国民の生命・安全・財産を守ること」にある。そのために人々は国家に納税をし、国家は警察や軍隊という暴力装置を用いて、国民の生命・安全・財産を守る、という形になっている。

 だが、こうした政府の役割は年々拡大しつつあり、福祉や産業政策にまでその範囲を広げている。こうした中で、政府による非効率がますます大きな問題となりつつあるのが今日の現場であり、そうした非効率を経済学の側面や経営学の側面から説明できると小論文としては説得性を持つ。

・ 模範解答

議論の整理→

現代の技術革新の中でも、情報技術の革新は、社会に大きな影響を与えた。例としては、資料2の「電子商取引」が挙げられる。通信量と通信能力を飛躍的に拡大させたことによって、時間や場所に制限されずに、情報通信と商取引が行えるようになった。このように、ネットワーク上での取り引きを可能にしたことで、企業が、その規模の大小に関係なく市場に参加できるようになった。
また、この「電子商取引」は、国境を超えた取り引きをも可能にした。ネットワークによる取り引きが、「規模のボーダーレス」と「地理的ボーダーレス」を実現させた。そして、ボーダーレスな経済は、市場をグローバル化させ、企業・個人の世界市場を相手にした活動の機会を与えた。

……根拠となる資料2の記述を紹介する。

資料2

 現在では, いつでも, どこにいても情報通信と商取引を行うことができ る環境になっている。これは甚大な影響を持つことが予想され, 特に経済的および地理的な面での境界線を侵食する(従来の境界線の意味を乏しく する)可能性が大きい。

問題発見→

しかし、その反面で、国家のリーダーシップが揺らぎつつある。これまでの国家は、経済に対してもかなりの力を持っていた。だが「電子商取引」の登場によって、その力が弱まっている。資料2にも指摘されているようにこのまま国家の力が弱まり影響力が無くなってしまうと、企業間の競争における、各国共通のルールが適用されにくくなる。国際的なルールがなければ、資料3にもあるように、国際競争が各国の国内規制の違いによって不平等になってしまう。

論証→

国家のリーダーシップが弱まった原因としては、企業が、経済だけでなく社会全体に対しても影響力を持つようになったからだ。企業の影響力が強まったのは、企業活動において国家間の境界線がほぼ無意味なものになったことが原因である。また、国家間の境界線が意味を持たなくなった原因は、情報技術革新によって世界経済がボーダーレス化したためだ。元々、国家という枠組みは、国家同士の競争や覇権争いの中で、政治的・経済的な必要性と共に恣意的につくられたものだ。しかし、世界市場のグローバル化によって企業が力を持つようになり、国家の必要性が薄くなってしまった。

解決策or結論→

これからの国家は、国際競争を支えていくためにも、企業間の協調システムとしての役割を担っていくべきだ。国家の必要性が薄くなったとはいえ、資料3にあるようなこれまでの国家のように、経済に対しての絶対的な力を復元させるべきではない。

解決策or結論の吟味→

国家としての力を、資料うにあるようなグローバルな経済活動に対する各国共通のルールを作り適用させることに向かわせることが重要だ。あくまでも、経済活動の主体は企業・個人にあって、それを国家が支援していく。これにより、企業・個人は自由に経済活動を行える。また、資料5で紹介されているようなナショナル・アイデンティティーを守った上で、その中で各国共通のルールがあることで、平等な国際競争を行っていくことが可能である。

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