慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 1998年 解説

・ 問題文

問1 次の7つの資料A, B, C, D, E, F, Gは, いずれもわが国が 当面している高齢化現象と、それによって生じると予想される諸問題を 述べたものです。解答欄に高齢化社会の政策課題を1つ挙げてあります が, これにならって。資料の論述に含まれるそれ以外の重要な政策課題 を3つ挙げなさい。 (解答欄:(例) 1.社会保障費などの公的負担増大への対応)
問2 問1に挙げた4つの政策課題のうちあなたが最も重要と考えるもの の番号を○で囲み。関連する資料の論述を踏まえて, それへの対処の仕 方について, あなた自身の考えを800字以内で述べなさい。

・ 問題の読み方

 問一については、常日頃より問題意識があれば十分書けるだろう。問題意識がない人については、基本的に人の問題意識をトレースすることでしか育たないので、多くの本を読むしかない。

 問二については、このうちで最も自分が知識が豊富で、問題意識を感じているテーマを選べば良い。展開方法は簡単で、そのテーマについての一般論と自説の共通の前提・理想と方法論の違いを整理して、問題を提起し、原因を分析し、解決策or結論を提案し、解決策or結論を吟味する5STEPsを用いれば良い。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 問二の解決策or結論の吟味では、個別学問ではなくあらゆる学問分野からの批判・検討が必要とされる。たとえば、経済学分野や宗教分野からの検討があっても良いだろう。

・ 模範解答

議論の整理→

近年の医療技術の発達、そして食品そのものや食生活が豊かになったことで、お年寄りの平均寿命は伸びている。また、昔に比べると、死亡率も低下した。そのようなお年寄りの長寿化の傾向と、近年の少子化の流れが組合わさった結果、現在日本では、高齢化現象が起きている。

……少子高齢化に対する一般的な説明。これぐらいは書けないと始まらない。

問題発見→

高齢化現象はやがて、成長率を低下させ、日本が実現させてきた現在の豊かさを減退させるという問題を引き起こす可能性がある。高齢者を支えるための、1人当たりの社会保障費などの公的負担がさらに増大してしまうという問題も発生しかねない。これからは、このまま成長を続け、豊かさを維持していくための対策を考えていかなければならない。

……問題(結論)とそれがなぜ問題なのかという根拠を書く。

論証→

高齢化現象が成長率と豊かさを低下させてしまう原因は、高齢化が進むにしたがって、生産年齢人口が減ってしまうからである。つまり、高齢者比率の上昇によって、生産活動に参加する人の割合、つまり働き手の数が減ってしまう。働き手の数が減ってしまうことによって所得報酬の減少を招き、消費総額の減少や税収の減少などの問題を引き起こす。それにより、成長率の低下と豊かさの減退という結果を招いてしまう。

……これ以上書きようがよいので、論証というよりはそれを詳しく説明する形で書く。少子化の原因であれば書きようはあるが、そうなるとまた別の問題になる。

解決策or結論→

このような働き手の数の減少を解決するためには、高齢者でさえも、それぞれの意欲や事情に合わせ何らかの形で働いていけるようなハローワークのようなデーターベースをつくっていくべきである。近年は、高齢者の孤独死などからわかるように、1人で過ごしている高齢者が少なくない。そのような高齢者にとっては、他人と交流する機会が増えるので、生活の中で孤独を感じることが現在より少なくなるし、外国労働者などと違い日本人の高齢者特有の心の通う接客が日本人利用者の好評をサービス業などで博する可能性もある。また、その他の高齢者にとっても、定年を過ぎてもなお仕事を通じて新たな生きがいを見出すきっかけにもなり得る。仕事を続けていくことで、ずっと健康でいてもらえるようになる。そして何よりも、高齢者が生活に必要な資金を少しでも自力で稼げるようになれば、現役世代の収入からの、高齢者に分配する割合を抑えられる。社会保障負担の引き上げの幅も小さくなると考えられる。

……様々な利害関係者のことを考慮しながら書くのがコツの一つである。

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