慶應SFC 環境情報学部 1997年 小論文 解説【林塾長作成】

問1(1000字)

 

議論の整理(40/200)……資料1,2,3,4の要約

……資料1,2,3,4について書いていれば各5点、論点になっていれば各5点(緻密性)、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

資料1ではインターネットはあらたな情報と知識と人間の関係を生み出しうるが、氾濫する権威に裏付けられない膨大な情報は有害さを生む可能性もあると指摘している。資料2ではムラ社会的な寄り合いのネットワークからグローバルで開放的なネットワークへの変化が21世紀に起こるとしている。資料3では情報、知識、知性、叡智という構造を提示した上で、情報とは無限に細分化されうるものであるのに対し、知識というのは叡智と知性を土台に置きながら情報を組み合わせたものであるとしている。資料4では、知識の生産過程では人間の主観的内面における加工・解釈・推理が必要不可欠でコンピュータープログラムのように客観的なものとは異なるとしている。

 

問題発見(10/200)……情報が知識化される際にコンピューターによってでも我々の主観的精神作用が反映されるようになるのではないか?それは個々人のプライバシー、思想信条の自由を侵害する可能性はなかろうか?

……書いていれば3点、新規性があれば4点、緻密性があれば3点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

ここで、情報が知識化される際にコンピューターによってでも我々の主観的精神作用が反映されるようになるのではないか?それは個々人のプライバシー、思想信条の自由を侵害する可能性はなかろうか?ということが問題となる。

 

論証(100/200)……A→B,C,D,A:スマホやPCの上に付いているカメラが24時間稼働し、視線を追跡した場合、熟読度も含めた新たな情報が集積される,B:高度に匿名化されないと、思想信条の自由を侵害する可能性があるC:リテラシーのないユーザーの熟読点がより強調され発信される可能性があるD:思想の異なるユーザーが区分されセグメント分けされ情報のタコツボ化が起こる可能性がある

……書けていれば各5点、新規性があれば10点、緻密性があれば5点(他の項目に対して検討すべき題材についてもれやダブリがないこと) 、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

たとえば、現在検索エンジンなどで検索表示順位を定める際には、ユーザーの滞在時間などによって検索表示順位が決まる形になっている。これはコンピューターによる客観的な測定による情報の知識化の一例といえる。だが、今後はスマホやPCの上に付いているカメラが24時間稼働し、視線を追跡し、熟読度・熟読箇所などの人間の主観的な精神作用をも含めた新たな情報が集積される可能性がある。

こうした情報を収集する際には、ユーザーの個人情報と熟読度・熟読箇所が紐付けられるため、高度に匿名化されないと、思想信条の自由を侵害する可能性がある。

また、リテラシーのないユーザーの熟読点、たとえば多くの場合は人種差別を煽り、陰謀論をことさらに唱えるようなコンテンツがより強調され発信される可能性がある。

他にも、詳細な閲覧履歴データーからSNSのように思想の異なるユーザーが区分されセグメント分けされ情報のタコツボ化が起こり社会の分断をますます加速させる可能性もある。

 

結論(30/200)……B,C,Dに対するあるべき対応

……書けていれば各3点、新規性があれば各4点、緻密性があれば各3点、主語・対象語・動詞抜け、漢字間違い、送り仮名間違い(各-1)、論理飛躍各-1

 

こうした問題については、まず情報の高度な匿名化について統一された国際基準を作るべきである。また、こうした基準を達成していない場合には、加盟国での事業展開、アクセスの許可を認めないなど強固な措置も考えるべきだろう。また人種差別や陰謀論を煽るコンテンツについては強調しないように情報処理段階で省く工夫も必要だ。また、検索結果のパーソナライズ化は必要不可欠だが、特定の思想信条に基づく検索結果ばかりが表示されないように、あくまでも両論がユーザーの視聴履歴に基づいてバランスよく配置されるような形で表示されるように法規制を行う必要性もある。

 

吟味(20/200)……あるべき対応が生み出しうる弊害と対応、書けていれば5点、新規性があれば10点、緻密性があれば5点

 

こうした対応は、検索エンジンを展開する多国籍企業と政府の間に一定の緊張をもたらすであろうし、国家の力を強めるという意味では時代に逆行しうるものだが、一方で検索エンジンが生む市場の失敗、収益拡大への取り組みが生む社会的弊害を除去できるのは政府をもって他にないため、各国の政府には慎重かつ迅速な対応が求められる。

 

 

資料1ではインターネットはあらたな情報と知識と人間の関係を生み出しうるが、氾濫する権威に裏付けられない膨大な情報は有害さを生む可能性もあると指摘している。資料2ではムラ社会的な寄り合いのネットワークからグローバルで開放的なネットワークへの変化が21世紀に起こるとしている。資料3では情報とは無限に細分化されうるものであるのに対し、知識というのは叡智と知性を土台に置きながら情報を組み合わせたものであるとしている。資料4では、知識の生産過程では人間の主観的内面における加工・解釈・推理が必要不可欠でコンピュータープログラムのように客観的なものとは異なるとしている。

ここで、情報が知識化される際にコンピューターによってでも我々の主観的精神作用が反映されるようになるのではないか?それは個々人のプライバシー、思想信条の自由を侵害する可能性はなかろうか?ということが問題となる。

たとえば、今後はスマホやPCの上に付いているカメラが24時間稼働し、視線を追跡し、熟読度・熟読箇所などの人間の主観的な精神作用をも含めた新たな情報が集積される可能性がある。

こうした情報を収集する際には、高度に匿名化されないと、思想信条の自由を侵害する可能性がある。

また、リテラシーのないユーザーの熟読点がより強調され発信される可能性がある。

他にも、詳細な閲覧履歴データーからSNSのように思想の異なるユーザーが区分されセグメント分けされ社会の分断をますます加速させる可能性もある。

こうした問題については、情報の高度な匿名化・人種差別や陰謀論を煽るコンテンツ・検索結果のパーソナライズ化について統一された国際基準を作るべきである。また、こうした基準を達成していない場合には、加盟国での事業展開、アクセスの許可を認めないなど強固な措置も考えるべきだろう。

こうした対応は、検索エンジンを展開する多国籍企業と政府・国際基準を制定する国際機関の間に一定の緊張をもたらすであろうし、国家や国際機関の力を強めるという意味では時代に逆行しうるようにも思えるが、一方で検索エンジンが生む市場の失敗、収益拡大への取り組みが生む社会的弊害を除去できるのは政府・国際機関をもって他にないため、各国の政府・国際機関には慎重かつ迅速な対応が求められる。

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