慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2008年 解説

・ 問題文

 最初からびっくりしたと思いますが,資料1の50の研究テーマは2007年度にSFCで開かれている研究会のタイトルの一部です。ではさっそくここで問題です。
まず,これら50のテーマについて,あなたの想像力をいかして,好きなように分類してみてください。その際,1つの類型には5以上でかつ10以下のテーマが含まれるように,かつ,類型の数が全体で5以上でかつ10以下になるように分類してください。そして分類ができたら,解答用紙(問題1-1)に,それぞれの類型に簡単な名称をつけ,それに属するテーマの番号をすべて記入してください。テーマ番号は1回のみ使用してください。
※解答用紙に,1つの類型の例を示します。これはあくまでも例ですから,このような硬い分類名をつける必要はありません。また,この類型を,あなたの分類の1つの類型として活用してもかまいません。その場合,名称が気に入らなければ修正してもかまいません。もちろん,この例を無視して,50のテーマすべてについてあなたの好きなように分類することは非常にすばらしいことです。なお,この類型例を活用する場合は,この番号を,あなたの分類の最後の類型として,その番号を()に記入してください。

つぎに,あなたの分類はどのような意図でなされたかについて,想像力の背後にある論理を探って,解答用紙(問題1-2)に記述してください。なお,これについては,すべての類型の位置と関係を図で示して,それを簡単に説明してください。さらに,あなたの分類のなかで,どの類型について一番研究してみたいかを,ここで宣言してください。その類型の番号を解答用紙(問題1-3)に記入してください。以上が問題1です。

・ 問題の読み方

 極めて難しい問題だが、一問一問を丁寧に処理するしかない。

 たとえば、問題2については、通常の結論・根拠・具体例では書ききれない難易度の高い問題ではあるが、ある言葉の定義は、他の言葉との違いによって生まれるという原則さえ心得ていれば書ける問題である。たとえば、美人というのは少なくともブスではない人のことであるし、ブスはその逆であるというように、言葉はその分類にもれやダブリがなければ、AであるということはすなわちBではないということを指す。このような分類を鑑みると、どのように書けば問題2が答えられるかがわかるはずだ。

 また問題3については、数式の持つ意味を丁寧に追うべき問題である。問題4については、通常の5STEPsの応用で書くことができる問題であるので、詳しい解説は模範解答にゆずる。

・ 模範解答

「問題1-1」

【伝え方を知る】 7・36・38・44・46
【人を知ろう】 3・6・16・20・32・35・40・42・48
【まちづくり論】 2・9・10・19・34・45・47・50
【より良い未来を創造しよう】 15・18・33・37・43・49
【次世代ネットワーク開発】 13・14・17・22・26・29・39・41
【プログラミングを楽しむ】 1・5・8・23・24・25・30・31
【生命分析】 4・11・12・21・27・28
私はこの50のテーマを、「人間を知るために」、「地球と地域のために」、「技術開発のために」という3つの観点をもって分類した。【伝え方を知る】と【人を知ろう】は、「人間を知るために」という観点で分類した。人間とはどのようなものなのかを知るための研究が行われているからだ。また、【まちづくり論】と【より良い未来を創造しよう】に関しては、「地球と地域のために」の観点から分類した。地域活性化や環境問題の解決をしていくための研究が行われているためだ。最後の【次世代ネットワーク開発】から【生命分析】については、「技術開発のため」の研究だと判断し分類した。次世代のコンピュータ環境のために、新たなソフトウェア開発やシステムウェア開発の研究が行われているからだ。

「問題2」

私は、資料2の女の子のように、機械や情報などに振り回されない。自分の意見をしっかりと持ち、人の意見次第で自分の考えをすぐに変えるようなことはしないからだ。また、他人に、自分のやっていることに対して否定的なことを言われても気にしない。自分なりの目的意識を常に持っているからである。
Bは、根気づよく自分のテーマを追求していく人だ。他人の言葉は気にしないという気持ちが私と共通している部分である。私とBとの違いは、Bの方が情報収集力に優れていることだ。
Cは、私と同じで、他人の意見にすぐに影響を受けることがない人だ。また、私と比べて、目標達成に向けて計画的に行動する能力の高い人でもある。
Dはいろんな情報をすぐに信じてしまうことがある。これは私との違いである。しかし、誰かがまだやっていないことに対して、自分の問題意識を持って取り組む人だという面では私と同じだ。

「問題3-1」

資料4から考えられるのは、それぞれのメンバーが高い個人能力を持ち、自己責任のもとで独立した行動をしながらも、目的は統一しているチームだ。いくら個人の能力が高くても、個人の満足を優先してしまうことで、全体の目標を見失うことを避けたいからだ。それぞれのメンバーは、専門家であると同時に、全体を見る力が求められる。

「問題3-2」

資料5から考えられるのは、それぞれのメンバーの個人能力がそれほど高くなくても、それを組み合わせることで新しい力を生み出すチームだ。個人の発想力が弱くても、2人や3人で協力して議論を交わせば新しいアイデアを提案できる可能性は増える。このようなチームでは、個人の力で無理に新しいアイデアを提案するのではなく、組織的に新しいアイデアを創造する。

「問題3-3」

資料6から考えられるのは、それぞれのメンバーが自分の知識や能力を、他人に自主的に提供し合えるチームである。誰かからの指示が出されて知識や能力を提供し合う場合と比べると、指示・命令されていない分、個人のモチベーションが大きくなる。よって、様々なアイデアを自由に交換させながら発展させることができる。

「問題4」

議論の整理→

現在、新聞のようなマスメディアでは、情報が発信者から受信者へ、一方的に流れている。このシステムの良い点は、多くの受信者に同じ情報を提供できることだ。これによって受信者ごとに情報の差異が生まれない。しかしその反面、受信者の個性に合わせた情報を提供することには限界がある。新聞は紙面に限りがあり、また、新聞記者も有限なので全ての分野・情報を扱うことができないからだ。
一方で、インターネットに関しては、発信者と受信者は双方向性の関係にある。受信者がいつでもどこでも発信者になれるからだ。この特性のおかげで、ネットワークメディアの双方向性が可能になっている。

問題発見→

こうしたインターネットの特性に押され、現状の新聞などのマスメディアは往年の輝きを失いつつある。だが、新聞などのマスメディアには情報の信頼性を担保する機能や一次情報を入手する機能があり、こうした機能は守られるべきものである。

論証→

なぜ、こうしたマスメディアが往年の輝きを失っているかというと、双方向性がないためである。双方向性がないために、ユーザーはこうしたマスメディアに触れるときに前掲姿勢でコンテンツにのめり込むということは起こりえない。このことが、コンテンツへの集中力を削ぎ、結局低い読了率や視聴率へと結びついている

解決策or結論→

そこで、「マスメディア双方向化」という研究プロジェクトを提案する。このようなネットワークメディアの特性を、マスメディアである新聞にも取り入れるようにする。記事の編集に今までの受信者も加わることや、記者の記事と読者の記事を対等に扱っていけるようになることを目標にする。具体的な研究活動としては、「共同編集をするための新聞ネットワーク環境の開発」など、新しいネットワーク環境の創造・開発・実現を目指す。

解決策or結論の吟味→

この研究をすることによって、新聞などのマスメディアに双方向性が加わり、新しい集合知を導入することができる。また、記事を読みたいものだけに絞れるので、資源を節約できる。さらに、国民が、選挙や国の状況に対して全く無関心になることを防ぐことができる。これまでは受信者だった読者がこれからは発信者にもなれるので、日本の状況について考えることを喚起できるからだ。

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