- 議論の整理
日本のサッカー競技力は着実に進歩してきたといえるが、今後の更なる向上を目指す為に選手育成力の強化に注力すべきであることは言うまでもない。特に小中学年の段階からの一貫指導の重要性が知られるようになり、発育発達の各段階に合わせた能力評価や指導方法の確立が求められている。従来のスポーツ科学の分野では選手のタレント評価において、個人差の激しい成長期の成熟度を指標として取り入れている場合が多い。このような生物学成熟度は長期的に見れば均一化される為、一時的な成熟度の違いによって選手の将来性を評価することになるという問題点があることが指摘されている。
- 問題発見
このような現状を踏まえ、広瀬教授は成熟度に影響されることのない指標として、成長期前段階に発達する体力要素である中枢情報処理能力を用いることを検討している。研究によれば、選択的全身反応時間は中学生期における生物学的成熟度の影響を受けにくく、優れたCRTを有する選手が長期的に見てもトップレベルの選手になる可能性が高いということが報告されている。中枢情報処理能力の高さが選手の育成にとって重要だとすれば、その能力を決定する要因は何なのだろうか。
- 論証
先行研究が対象とした中学生年代では、すでに中央情報処理能力の発達が終わっていると考えられ、対象とした群の中に晩成型の選手がすでに排除されている可能性があることが指摘されている。そこで本研究では小学生年代を対象とし、各体力要素とCRTとの関連について分析を試みたいと考えている。
- 結論
この研究により中枢情報処理能力の決定因子が特定できれば、それを向上させる為のトレーニングの開発に大いに有用なデータとなる。これは選手育成力の強化にダイレクトに繋がるものと考えており、その点において大いにやりがいを感じている。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、日本のサッカーコーチング研究において第一線で活躍している広瀬教授のもとで学ぶことを強く希望する。また、実際の現場でも指導者としてトップアスリートの育成を行っている教授からは、研究面だけでなく優れたコーチに必要な様々な要素を学びたいと考えている。
参考文献
広瀬統一 (2018) 「サッカーのタレント発掘と育成」『トレーニング科学』. 20(4), 253-259
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