早稲田大学 スポーツ科学部 AO入試 志望理由書 提出例(リー・トンプソン研究室向け)

  • 議論の整理

我々は相撲や柔道を日本の伝統的な競技、すなわち「国技」と認識しているが、その認識への方向付けは主にメディアによって行われている。しかし、メディアによる表象が必ずしも歴史的事実に基づいている訳ではない。例えば、トンプソン教授の研究によれば、大相撲における「横綱」や「優勝」という制度は20世紀になり取り入れられた近代スポーツ的思考に基づくものであるという。これは「国技」という言葉が想起させるような長い歴史の中で発展した日本独自のものというイメージとは乖離している。これはホブズボウムが定義した「伝統の発明」という概念を示す好例である。

  • 問題発見

文化の興隆に伴い、メディアにおけるスポーツの語られ方を議論することはますます重要性を帯びていくものだと考えられる。特に「国技」という表現には、人種による線引きを強調し、差別を助長するようなイデオロギーを醸成する危険性を孕んでいる為、その扱いは慎重に行われるべきである。それでは、大相撲と並び「国技」として認識されている柔道をメディアはどのように表現してきたのであろうか。

  • 論証

現在受容されている柔道観を形成した人物は、講道館の創設者でもある嘉納治五郎だと知られているが、嘉納の柔道観の社会史的背景について研究を行った例は数少ない。トンプソン教授は、日本の国民国家形成の過程で嘉納の柔道がどのように形成されていったかを調査し、その背景には当時の文部省の武術に対する嫌悪への反発があったことを報告している。この研究を踏まえ、嘉納柔道観の性格がメディアにどの程度反映されていったのかを段階的に調査したいと考えている。

  • 結論

この研究により、柔道の「伝統」がどのように発明されていったのかを明らかにしたい。スポーツ観覧の楽しみは観客に明瞭なストーリーを提供できる点にあるというが、一方でその物語は加工されたものであるという視点を忘れない為にもこの研究は意義があると考えている。

  • 結論の吟味

上記研究を行うにあたって、日本のスポーツを社会学的観点から調査した豊富な実績をもつトンプソン教授のもとで学ぶことを強く希望する。

参考文献

Tetsuya Nakajima, Lee Thompson (2012). Judo and the process of nation-building in Japan: Kanō Jigorō and the formation of Kōdōkan judo. Asia Pacific Journal of Sport and Social Science. 1(2-3), 997-110

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