■ 議論の整理・・・
国連によると,イランはパキスタンに次ぐ世界2位の難民受け入れ国であり,イラン内務省の統計では正式登録されたアフガン難民は102万人。イラン政府は現在,新たな難民の受け入れを中止しているが,流入は続き,不法難民は推計150万~200万人。大半は都市部に居住。登録難民は基本的な医療,教育の提供を受けている。しかし,イラン政府が米欧の経済制裁下に置かれるにつれ難民の生活は変わった。政府の財政悪化に伴い,ガソリンや食料の価格高騰を抑止するための事業者への補助金は大幅に削減され,物価高が進み,イラン政府は生活支援のため国民に給付金を支給したが,難民は対象外となった。手厚い難民保護で知られてきたイランはいま,その「余裕」を失いつつある。
■ 問題発見・・・
では,イラン政府の外交形成において,アフガニスタン問題はどう影響しているだろうか。
■ 論証・・・
イランは,自国の文化の延長線上にアフガニスタンが位置すると強調する傾向がある。また,国境を越えて自国領内に流れ込むヘルマンド川の水量に関する取り決めのような安全保障問題をこの東の隣国との間で抱えている。このような隣国関係ゆえに,対アフガニスタン政策のあり方はイランの体制や政権の枠組みを越えて,どの時代においても常に重要な位置を占めてきたのである(*1)。アフガニスタンは,イランの外交政策の方向性を示す方位磁石の役割を果たしている。アフガニスタンは,ハータミー期に入ってから顕著となった緊張緩和をめざす外交が最も頻繁に試された対象であり,また国際協調の舞台となったところでもある。アフガニスタンに関してひところイランと米国との間で限定的ながらも非公式の折衝が発生し,一定期間協力関係が維持されたことは決して偶然ではなく,これはイランにとってのアフガン問題のプライオリティーの高さを物語っている(*1)。すなわちそこには国境の安定を担保し,緊張緩和を実現しようとする確固たる地域戦略が見て取れる。
■ 結論・・・
そこで,西アジアの国際的秩序と石油エネルギー供給問題について探究したいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
この研究を進めるため,貴学SFCに入学し,西アジア地域の国際問題やエネルギー政策,ならびに安全保障について数多くの研究実績がある田中浩一郎教授の研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 田中浩一郎.“イランの外交政策形成とアフガニスタン問題の位置づけ”, 『アフガニスタンと周辺国-6年間の経験と復興への展望』, Vol.11, pp.143-164, 2008
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