■ 議論の整理・・・
最近では,個人レベルでの通信インフラの普及に伴い,デジタルツールを活用したヘルスケアビジネスが注目を集めている。モバイルデバイスや健康管理アプリのように,個人が主体的に健康を管理することに主眼を置いたサービスも登場している。体重管理などに使われる「体組成計」は,体重だけでなく,体脂肪率,BMI,筋肉量や内臓脂肪レベル,皮下脂肪率などさまざまなデータが測定できる。体組成計の数値は体内の水分量などによっても測定値に影響がでるので,基本的には条件をそろえて測定しなければ意味がない。データは「毎日の起床直後」「就寝前」など同じ条件で測定して,そのデータの変化でチェックするのがもっとも正確である。また,これらにはスマートフォンのアプリと連動する機能を備えているものもあり,逐一手入力するのではなく,測定したデータをBluetoothやWi-Fiなどでそのままアプリに転送し管理できるものもある。
■ 問題発見・・・
では,デジタルヘルスのユーザーは,今後どのようなものを求めているのか。
■ 論証・・・
新たな収益市場として期待が大きいデジタルヘルス市場では,スマートフォンの加速度的な普及に伴い,スポーツ用品メーカーなどの異業種参入も盛んである。市場は拡大傾向にあるものの,コモディティー化も指摘され,企業は参入と撤退を繰り返している。近年はヘルスケア分野では著名な企業のサービスがわずか数年で終了する例も少なくない。貴学総合政策学部の國領二郎教授は,デジタルヘルスのユーザーレビューを,テキスト解析と統計的手法を用いて分析している(*1)。分析より得られたユーザーの価値観の特徴は,グラフ化や記録・管理などの一次的価値(機能そのものによる便益)がより重視される傾向があり,二次的価値(機能を通じた感情的な満足感)のレベルには達してないことなどが考えられる。すなわち,機能を通じた感情的満足感のレベルでの競合関係がほとんどないことが特徴として考えられる。
■ 結論・・・
そこで,これから益々進むであろう高齢化社会において,高齢者が簡単に健康管理ができ,そのデータを医療機関などでも活用できるようなデジタル医療システムを構築したいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
上述の研究目的を遂行するため,貴学SFCに入学し,情報システムやソーシャルデザインを専門に研究している國領二郎研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 土屋高康,國領二郎,村井純.“デジタルヘルス市場におけるユーザーの価値観と競合関係の可視化”,デザイン研究, Vol.64, No.1, pp.19-28, 2017
コメントを残す