■議論の整理
学習指導要領が改訂される運びとなり、主体的対話的な学びが重視される中で、理科教育も変化を要求されている。知識基盤社会を見据えた学習指導要領改訂に伴って、知識をいかに応用・活用するかが問われているからだ。自然科学教育はまさに、実際の地域や現場でフィールドワークを重ねながら、各種の問題を設定し仮説を立て検証することで成り立っている。自然科学分野の教育と、学習指導要領は幸福な関係を結ばなくてはならない。
■問題発見
アースシステム教育が近年叫ばれている。アースシステム教育とは、システム科学概念に基づいて、教師自らが生徒・学校・地域の実情に応じて教材・内容・カリキュラムを開発・構成する方法を提供するものだ。この教育法は、現地の実態に応じてなされるため、理科教育としての自然科学領域をカバーするとともに、日本独自の自然観を学習する良い機会でもあり、郷土愛を育むことでも有用視されている。
■論証
アースシステム教育は、地球システムに関連する7つの理解目標があり、その一つに次のような目標がある。「地球はユニークで、たぐいまれな美しさを持ち、大変価値のある惑星である」ことを理解すること。地球は現在グローバリズムの流れの中で、経済的には国境を超える連帯を生んでいるが、他方で、局所的なナショナリズムやエスノセントリズム、はては横暴な排外主義を生んでいる。経済的な連帯の他方で、いまだ思想的な連帯を果たすことが難しくなっていることは事実だろう。
■結論
アースシステム教育を通じて、「地球」という単位で、ものの見方・考え方を育むことは、これらの持続可能な目標を果たすとともに、思想的な紐帯を強めることも可能かもしれない。自然に触れ、地球の美しさを感じ、その地球に住む私たちが結束しようとすること。それらに奉仕することもこの教育法は目論んでいる。
■結論の吟味
一部の初等教育の研究者は、上記のような目標に立って、実地調査を含む、自然の教材かおよび教師教育のプログラムを実践している※1。私もそのような取り組みに参加し、理科教育からSDGsを考えてみたいと思い、貴学への入学を希望する。
※1平田大二・田口公則・一寸木肇・飯島俊幸・尾崎幸哉・露木和男・五島政一「学芸員と教師との協働による身近な自然の教材化の試みと教師教育プログラムの開発」『日本地質学科学術大会講演要旨』2008
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