慶應SFC 環境情報学部 AO入試 志望理由書 提出例(牛山潤一研究会向け)

 議論の整理・・・ 

 我々ヒトの随意運動は,大脳皮質(一次運動野)において形成された運動指令が,脊髄内運動ニューロン群を駆動させ,それが筋収縮を引き起こすことで発現する。したがって,運動発現や運動制御のメカニズムを解明するためには,脳・脊髄レベルの神経活動と運動出力との関連性を包括的な視点から探っていく必要がある。関節運動を伴わない随意筋収縮中の大脳皮質一次体性感覚運動野近傍の脳波と収縮筋の筋電図との間には,ベータ律動とよばれる15-35Hz程度の同期的な神経活動が出現することが知られており,両信号の同期生(相関性)はコヒーレンス解析と呼ばれる数学的な解析手法を用いて定量評価できる(「皮質-筋コヒーレンス解析法」とよばれる)(*1)。皮質-筋コヒーレンス解析法は,随意運動中の大脳皮質による筋活動制御を解明する新手法として,医学・生理学分野で注目されている。

 

 問題発見・・・ 

 牛山他(2016)は,皮質-筋コヒーレンス解析により,予測不能な運動環境の変化によって生じる運動誤差を神経系がいかにして修正し,巧みな運動制御を実現しているのかを示した(*2)。さらに,牛山他(2017)は,力を発揮している最中にみられる脳波と筋電の同期性の強さ(皮質-筋コヒーレンス強度)は安定的に力を出力する運動能力に影響を与えることを示した(*3)。これらの先行研究は,力の静的・動的を問わず,皮質-筋コヒーレンス解析による身体運動解析の有効性を示唆している。

 

 論証・・・ 

 ヒトは,脳から伸びる神経を介して脳-筋肉間で筋電信号をやりとりすることで身体を動かしている。身体運動を科学する「身体運動の神経科学」は,リハビリテーション医療の発展に貢献するばかりでなく,パフォーマンス向上を目指すアスリートのトレーニング支援にも役立つものである。人間の身体運動制御のシステム論的理解を深めるには,脳波や筋電図の律動性や同期性の定量評価といった基礎生理学的研究は不可欠である。

 

 結論・・・ 

 そこで,皮質-筋コヒーレンス解析によって感覚系と運動系の相関性について研究実績を積んでいる貴学環境情報学部の牛山潤一准教授に師事し,神経科学的アプローチから「イップス」の原因について研究を進めたいと考えている。

 

 結論の吟味・・・ 

 牛山潤一准教授は,皮質-筋コヒーレンス解析による身体運動の解析について数々の実績があり,牛山潤一研究会には上述の研究に最適な環境がある。したがって,私は貴学SFCに入学し,牛山潤一研究会に入会することを強く志望する。

 

 

 

(*1) 牛山潤一.脳波と筋電図のコヒーレンス解析,体育の科学,Vol.63, No.6, pp.458-465, 2013

(*2) 牛山潤一.予測不能な運動環境変化に伴う感覚運動系の再校正過程,上原記念生命科学財団研究報告集,Vol.30, pp.1-5, 2016

(*3) Ushiyama, Junichi., Yamada, Junya., Liu, Meigen., and Ushiba, Junichi. “Individual difference in β-band corticomuscular coherence and its relation to force steadiness during isometric voluntary ankle dorsiflexion in healthy humans”, Clinical Neurophysiology, Vol.128, No.2, pp.303-311, 2017

 

 

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