■ 議論の整理・・・
現実世界での直感的な操作をマンマシンインターフェイスに使えるように考案されたのが,貴学環境情報学部の増井俊之教授が提唱された「実世界GUI」である。「CDのケースを回転させて音量を制御する」インターフェイスや,「金魚すくいのようにスマートフォンを操作して情報を別のパソコンに移す」インターフェイスが考案され,実装されている。これは一見すると斬新であるが,実は人間の動きを読み取る各種センサや近距離通信技術(NFC)など,既存の要素技術をうまく組み合わせることで実現できている。ロックを解除し画面をスクロールしてアプリを探し起動するというスマートフォンでは「当たり前」とされる操作に慣れ親しんだ立場から見れば,コペルニクス的発想である。この視座から周囲を見渡してみると,ほぼすべての電子機器のユーザインターフェイスはメーカー側の都合で作られており,やりたいことがすぐにできない不自由さが残っている。
■ 問題発見・・・
増井教授は,現在のコンピュータのユーザインターフェイスはまだまだ理想には程遠いと指摘している。それでは理想のユーザインターフェイスはどうあるべきだろうか。
■ 論証・・・
たとえば,人が暑いと感じたときの自然な動作は,指を広げた手のひらをうちわに見立てて顔をパタパタと扇ぐ動作である。この動作を,扇風機・エアコンなど冷房機器への作動指令のイディオム(慣用的な所作のパターン)とすることで,直感的に冷房機器が操作できる。これが増井教授の「全世界GUI」の基本的な考え方である。コンピュータの小型化がさらに進めば,いずれはコンピュータの形をしたものは視界から消えて周囲に完全に溶け込むであろう。そのときに「当たり前」のものとして広く受け入れられるようなユーザインターフェイスの開発が望まれる。
■ 結論・・・
そこで,ユーザインターフェイス研究の泰斗である貴学環境情報学部の増井俊之教授に師事し,「実世界UI」について研究を深め,事前説明がなくても子どもや高齢者がすぐに使えるようなユーザインターフェイスを考案し実装してみたいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
貴学の増井俊之教授は,ユーザインターフェイス研究の第一人者であり,ユニークなユーザインターフェイスを自ら実装されるなど実証的な研究実績も豊富である(*1)。それゆえ,増井俊之研究会が上述の研究に最適の研究環境であると考え,貴学SFCに入学し増井俊之研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 増井俊之.“Gear:最小限の操作による階層情報ナビゲーション”,インタラクション2015 論文集,pp.883-886, 2015
(*2) 橋本翔,増井俊之.“GoldFish: JavaScriptとAndroid NFCによる実世界GUIフレームワーク”,インタラクション2012 論文集, pp.867-870, 2012
(*3) 小沢邦雄,増井俊之.“スナッピングを利用した無階層メニュー”,インタラクション2011 論文集, pp.259-262, 2011
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