AO入試対策 (3) 小論文テスト対策

 さて、AO入試では志望理由書・自由記述の他にもさまざまな評価軸があります。これ以降はそれらについて言及することで、それらの評価軸が持つ意味を明確にしたいと思います。

・ 小論文テスト対策の目的はなにか

 まず、小論文テストをAO入試で課している大学・学部と課していない大学・学部の違いを考えてみると、小論文テストの目的がなにであるかがよくわかります。

 たとえば、AO入試で小論文テストを課していない大学としては、慶應SFCがあります。これは慶應SFCでは仮に志望理由書や自由記述がAO対策塾の講師の代筆だとしても、面接でその受験者の能力を見極めて見抜く自信と手間をかける覚悟があるため、AO入試では小論文テストを課していないという見方もできます。

 一方で、他の大学・学部はたいていの場合、AO入試でも小論文を課しているケースが多いようです。この目的は、事前に提出された志望理由書・自由記述などとの整合性・クオリティーの差をチェックする目的もありますし、それ以前の問題として論理的思考能力の高さをチェックする目的もあります。

 論理的思考能力については、面接でももちろん測れますが、面接で測れる論理的思考力というのはスピード感のあるもので、人によってはなかなかそれに適応できない場合もあります。そうした人がいることを見越して、小論文試験を行っているという側面もあるでしょう。一方で、慶應SFCのAOでは必ず面接を行うのは、社会イノベーターを育成する慶應SFCでは、そもそも突発的に質問に答えられなければほとんど役立たずだからです。このあたりが違う部分としてはあります。

・ 限られた時間とストレスフルな環境で真の論理性が露見する

 小論文試験についても、面接ほどではありませんが、限られた時間とストレスフルな環境で真の論理性が露見する場面の一つではあります。多くの人が心持ち余裕を持って入試に挑みたいと思うものではありますが、実際のところ特にAO入試の小論文では短い時間に大量の処理をすることか求められることが多いです。これは、限られた時間とストレスフルな環境で真の論理性が露見するからでしょう。

 ここで私達が考えなければいけないのは、そうした厳しい時間制約がありつつも、きちんとした文章を書き合格を勝ち取ることです。そのためにはとにかく日々の練習あるのみであることは言うまでもありません。

・ 小論文テストに必要な文章力のレベル

 ではまず、小論文テストに必要な文章力のレベルとはどの程度のものか考えていきたいと思います。

 まず、文章力を考える上で最も大切なことは、その文章の意味が誰にとっても明瞭にわかるようにすることです。その文章の意味が誰にとっても明瞭にわかるようにするにはどうすればよいかというと、

1. 主語・直接対象語・間接対象語・述語はそれぞれ一文に一つずつとする

2. 修飾語句は一単語に一つまでとする

3. 最初の文以外には接続詞を付ける

 という三つの原則を守ることが大切です。

 それぞれについて説明していくと、まず、1. 主語・直接対象語・間接対象語・述語はそれぞれ一文に一つずつとするについては、読み手の文章の読解ミスを防ぐためには必要不可欠です。どの主語がどの直接対象語・間接対象語・述語に対応しているかがしっかりわかることで、意味のねじれがなくなり読みやすい文章になります。

 また、2.修飾語句を一単語に一つまでとすることについても同じで、修飾・被修飾の関係を明確にすることで、文の読みにくさをなくすことができます。また余談ですが、小論文としての文章を書くときは、基本的に単語はなるべく漢語を使うようにし、その修飾語句として和語を使うとフォーマルな文章として読みやすくなります。

 他にも、3. 最初の文以外には接続詞を付けることは極めて重要です。前の文章との接続を明確にすることで、論理の飛躍が起きていないかに気を配ることができます。日本語の文章は往々にして、この接続詞をつけることをないがしろにしがちですが、接続詞をきちんとつけることの重要性は強調しても強調しすぎることはありません。

・ 小論文テストに必要な段落構成のレベル

 また、小論文テストに必要なノウハウとして、

1. 段落内の構成をどうするか

2. 段落同士の構成をどうするか

 という問題があります。ここでは、1.について説明します。

 まず、小論文における段落構成ですが、

A. 結論

B. 根拠

C. 具体例

D. 結論

 の順番に書くことを私達はおすすめしています。

 このような順番で書く理由ですが、

I. 具体例から結論を導く論理飛躍を避けるため

ii. 興味に沿って文章を構成するため

iii. 多くの人々からの共感を得るため

 という三つの理由があります。それぞれについて説明していきたいと思います。

 まず、I. 具体例から結論を導く論理飛躍を避けるためについてですが、これは結論・根拠・具体例・結論という順を踏んで構成しなければなかなか難しいことです。例外をもって論証とする論理の飛躍を防ぎ、根拠という抽象的な論理のことで結論が成り立っていることを示すためには結論・根拠・具体例・結論で書くことが必要不可欠です。

 また、多くの人々からの共感を得るためという目的もあります。おおよそ多くの議論において人々は総論賛成・各論反対という立場を取ります。多くの人は、日本は歳入が少なく歳出が多いから財政再建をしようという意見には同意しますが、それが自分の専門分野、たとえば医療や法律に関わってくると猛然と反対します。ですから、各論から議論を始めるのは不適切であり、まずは総論から話を進めることが大事になります。

・ 小論文テストに必要な論理構成のレベル

 また、小論文を書く上では、特に長文の論述問題形式だと、それぞれの段落をどのように構成するかという論理構成が大切になります。

 小論文の論理構成を考える上でまず大切な考え方は、小論文はそもそも、問題発見→問題解決のツールだということです。小論文、こと論述問題におけるほとんどすべての構成はこの認識からスタートします。

 そして、たとえば妥当な問題発見をするためには、まず議論を整理できていないといけないことから、問題発見の前には課題文の要約ないしは問題文の整理として議論の整理を入れます。また、問題解決のためには論証が必要なため問題解決の前には論証を入れます。他にも、妥当な問題解決と言いうるためには解決策の妥当性を証明しなければなりませんから、解決策の後には解決策の吟味を入れます。

 この解決策というのは、結論なり影響なりを論じるときも同じです。なにかを論じる際には、ほぼ必ずと言ってよいほどこの構成を使います。問題によって微妙に変形させたり一部しか使わないことはございますが、総じてこのような形になります。

 以下に示したのが小論文のおおまかな構成です。

【小論文の書き方テンプレート】

■ 議論の整理……課題文の内容の要約、問題を解く上で前提となる事実のまとめ

(共通の前提)……課題文中で相対しているそれぞれの論に共通する共通の前提

(議論の論点)……課題文中で異なる意見の論が食い違っている部分のまとめ(一般論vs筆者の論etc)

■ 問題発見

(問題の発見)……この小論文で答えている問題の設定

■ 論証……問題についての原因の分析

(論証A)……ぱっと思いつく原因

(論証B)……ぱっと思いつく原因の原因

(論証C)……ぱっと思いつく原因の原因の原因

※ これ以外に帰納法・演繹法を使うこともある

□ 帰納法

・ 例の列挙(たとえば~)

・ 法則性を導く(このことから~といえる)

・ 例外を検討する(ただし~という例外も考慮に入れる必要がある)

□ 演繹法

・ ルールを定立する(ここでは~)

・ 具体例を紹介する(たとえば~)

・ 具体例をルールに当てはめる(ここで~を~に当てはめると、~と言える)

□ 言い分方式

・ 利害関係者Aの主張(たしかに~)と根拠(なぜなら~)を書く

・ 利害関係者Bの主張(しかし~)と根拠(なぜなら~)を書く

・ 仲裁者Cの主張(よって~)と根拠(なぜなら~)を書く

■ 解決策or結論or結果……論考から導かれた解決策or結論or結果

(Cから導かれる解決策or結論or結果)……論証Cから導かれた解決策or結論or結果

(その根拠)……その根拠となる議論

(その具体例)……その根拠を支える複数の具体例の例示

■ 解決策or結論or結果の吟味……解決策or結論or結果を批判し、その批判を再批判することで議論の精度を高める

(他の解決策or結論or結果との比較)……他の解決策or結論や結果と比較して妥当性を検証

(利害関係者検討)……誰が損して誰が得するかを考えて妥当性を検証 ※ 必要ないこともある

(最終的な解決策or結論or結論の確認)……その結果としてどのように結果を着地させるかまとめる

 この書き方にあてはめる形で小論文を書けるように、自分の行きたい大学学部のAO入試の小論文を練習できれば大勢に問題はありません。

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