AO・推薦入試の特性・タイプ別適性診断

 

・ AO入試と一般入試の違いとは?

 AO入試と一般入試の違いは、AO入試においては、慶應SFCでは大歓迎の学生でも中央大法学部ではカスリもしない、というようなことがよくあるということです。一般入試ではこういうことはありません。入試傾向の違いがあるとはいえ、受験科目が得意であればどこの大学の基本的には大歓迎です。
 ところが、AO入試ではそうではありません。ある大学のある学部では大歓迎される個性が、他の大学の他の学部では書類選考通過さえむずかしくなるほどに忌避されるということがよくあることなのです。ですから、AO入試において大切なのは、まず自分にあった大学・学部を選ぶということです。
 この、大学が受験生を選ぶというよりも、受験生が大学を選ぶという側面が大きい入試のあり方は、日本の入試を今、大きく変えつつあります。口さがない人々は、AO入試で入試の枠を狭くすることによって、偏差値を高め、大学のブランドを守っていると陰口を叩きます。
 しかし、AO入試があることで、AO入試でなければ取ることのできない英才を、一般入試で東大京大に取られる前に早稲田慶應が獲得できたという事例も数多くあるのです。私が教えて早慶のAO入試に合格した教え子様も半分程度はそうした人材です。

・ 慶應SFCAO入試で求められる実績とは?

 では、早慶上智のAO入試に合格する残りの半分の人材はどういった人材でしょうか。それは、早慶上智どころか日大すらも一般入試では受かりっこないような人材です。偏差値40、不登校、高校中退……。多くの課題を抱えながらも、一つ光るところがある教え子様を早慶上智AO入試は見逃さず合格させました。
 これもまたAO入試の一つの側面なのです。
 早慶上智の大学としての今後の未来を考えたときに、東大生に総合力で勝る人材を入学させることはなかなか難しいのも現状です。しかし、一つの能力で秀でている人材を入学させることはさほどむずかしくない。なぜなら、そういう人材を必ずしも難関国立が合格させるわけではないからです。
 ここで大切なのは、まず一つ光り輝くものを自分の中で見つけることです。今現在、自分自身に自信がないあなたでも、見つけようとおもえばなにか一つ光り輝く部分を見つけることができるかもしれません。それを探すのは早ければ早いほど、大きくその力を伸ばせますから良いでしょう。

・ 慶應は他の学部でもAO・推薦の競争性は高い

 「あなたの光り輝く部分を見つけましょう」といわれても、あなたは何も見つけられないかもしれません。確かに、慶應について言うと、SFCもその他の学部もAO入試は非常に競争が激しくなかなか難しいのが現状です。
 文学部の自主応募については例外的に内申点が良く(4.1以上)、英語と小論文の試験ができれば比較的合格はたやすいですが、これは一般入試を早めに受けるような制度なので、多少倍率がゆるく合格しやすいとはいえ、AO入試を目指す多くの生徒さんには参考になりません。
 SFCに関して言うと、全国大会出場・内申点4.5以上・英語資格所持(英検準1級・TOEIC600以上)だと合格の可能性は高いと感じます。全国大会出場はマストで(かなり学問的バックグラウンドに沿った自由研究に力を入れている場合この限りではありませんが……)、他の二つのうちどちらかがあれば、あとは志望理由書と面接対策次第です。
 これらの条件にあてはまる人に関して言えば、慶應文学部の自主応募推薦や慶應SFCAO入試も大いに検討すべきだと思いますが、この本のメインターゲットはそうではない。現状学力にも実績にも自信がないけど、一般入試では早慶上智には受かりっこないという人たちです。
 その人達のために、偏差値40・不登校から慶應SFCにAOで合格した先輩たちや、上智大学に高校中退から推薦で合格した先輩たちの体験談を交えながら、どん底からの早慶上智AO合格に必要な要素を考えていきたいと思います。

・ 英語検定試験の結果を重視する早稲田政経・上智全学部の推薦試験

 まず考慮に入れなければならないのは、難がある人は難を隠す要素を考えようということです。これは大切な「AO入試の最重要公式」になります。ですから、なにかしらの難がある人は、志望理由書、自由記述、事前提出レポート、小論文試験、英語試験、面接、と審査要素が多い大学学部のAOが有利です。
 なぜこのように言えるかというと、その大学がAO入試において、小論文試験と、英語試験と、面接に重きをおいている場合、しばしばその結果は、帯に短し襷に長しの受験生が多いという結果になるからです。
 あの子は英語はできるけど、小論文はうまいち、あの子は英語と小論文はできるけど、不登校、という形の比較になると不登校は必ずしも致命的な欠点ではなくなります。受験生に見られるありふれた欠点の一つにしかならなくなるのです。ですから、判断要素が多いAO入試を狙うことが大切です。

・ 小論文試験がある早稲田・上智の推薦試験は高校中退でもチャンスがある

 ここで、特段取り柄もないし、学校の成績も悪いし、なんなら学校に行ってないし、という要素のうちどれかが当てはまる人におすすめなのは、早稲田大学か上智大学の推薦試験です。
 もちろん、早稲田大学や上智大学の推薦試験も、一般的なものは内申点による足切りがあるなど使いにくいのですが例外があります。たとえば、早稲田大学であればAO入試系の試験でも入試の種類が豊富で、内申点制約がないものもあります。上智大学であれば海外就学者向けであれば内申点制約はありません。
 ですから、この本を不登校で悩んでる高校1年生あたりで読めば、いまの状況からでも挽回は可能です。後述しますが、MARCHや関関同立でも探せば、内申点制約がなく、英語検定や本番の小論文試験を重視するAO入試は多数あります。
 AO入試で大切なのは、「どうせ私にはAO入試なんて無理だよ……」と諦めずに、どうにかして入る方法がないかを必死に探し出すことが大切です。自分でも受けられる大学があれば、その大学はあなたのような人材を求めているかもしれません。一つの大学を受けてダメでも、二つ三つ、可能性を探りましょう。

・ 上智大学の推薦入試は英語面接に対応できると有利

 私が指導した例でいうと、上智大学の海外就学者向け入試で合格した教え子様で、高校中退を経て合格した例があります。海外就学者の場合、多くの場合そうですが、やはり日本の高校に戻ったときに、なかなか日本の高校に馴染めないことがあります。
 その要因としては様々なものがございますが、たとえば中高一貫校在学時に日本から海外に発ち、その後日本に帰国した場合には、数学などの面で遅れを取っているため、どうしても日本の高校に馴染めないことがあります。帰国したときに、レベルの低い高校に入り直した結果馴染めないこともあります。
 そうした場合に、日本の高校を中退し、通信制の学校などに転校することもあるのですが、できれば海外の学校に戻ってしまったほうがAO入試的には有利です。基本的に「通学できないのではないか」という大学側の懸念は大きいので、なるべく通学する形式の学校に転校しましょう。
 しかし、こういう少々難のある経歴でも、海外経験は高く評価されることが多く、英語資格があり小論文ができれば早慶上智レベルへのチャンスはあります。とにかく大切なことは自分に対し大学側が抱くであろう懸念を潰すことで、小論文ができることは日本語力への懸念を払拭する大きな武器になります。
 AO入試で大切なことは、大学側が自分に抱くであろう懸念を払拭すること(マイナスをプラスマイナスゼロにすること)と、大学側が自分に対して抱くであろう期待を大きく伸ばすこと(プラスマイナスゼロを大きなプラスにすること)です。
 海外経験を売りにする場合(これは例えば、日本の高校を中退後、海外の高校に転校したケースなども含めてです)、特に英語、場合によっては中国語スペイン語でも良いですが基本的には英語の面接に対応できると非常に有利になります。
 実際、日本ではまだまだスピーキングレベルで流暢に学術的な英語を駆使できる人材は少ないのが現状で、こうした人材は、大学卒業後、企業からも引く手あまたです。大学側もそれを見越して、合否判定に迷ったときに、ネイティブの講師が面接を英語に切り替えて、対応能力を見て合否を出す例があります。
 別に英語に限った話ではないですが、AO入試に出願する際には、自分のセールスポイントが何かをしっかり理解することが大切です。その上でそれを大きく伸ばすために必要な方法論をこの本で学んでいだければと思います。

・ 多くの人が敬遠する国での海外経験に自ら飛び込もう

 また、AO入試を受ける上で大切な要素としては、「倍率」があります。AO入試がとりわけ一般入試と比べて有利な点としては、この「倍率」の低さがあります。この「倍率」の低さは、そもそもAO入試など自分には受けられないと思っている受験生が地方都市中心に多いことに由来しています。
 この「倍率」の低さは、AO入試のルールを知っているプレーヤー(このテキストを読んでいるあなたのことです)には有利に働きます。特に海外経験がある教え子様の場合は、競合性が低い学部・学科を狙うことで、この「倍率」の低さを最大限活かしたAO入試突破を果たすことができます。
 その点で私がおすすめするのは、多くの人が敬遠する国での海外経験に自ら飛び込むことです。たとえば、私が指導した教え子様の例を話すと、上智大学のロシア語学科に公募推薦で合格した教え子様は、その本気度を示すために長期休みを利用してロシア語の研修にウラジオストクに飛びました。
 ロシアは、中国や米国と比べると、日本人にとってさほど馴染みのある国ではありません。一部地域を除いては渡航にはまだビザが必要な国です。彼女の例はそうした国で、英語もある程度のレベル(英検準1級)まで仕上げた上で、ロシア語を勉強した自主性が大きく評価された例です。

・ 事前提出レポートと小論文の落差はチェックポイント

 近年、AO入試では多くの不正行為がまかり通っています。その代表例が、事前提出レポートなどの事前提出書類の代筆です。私の塾ではやっていませんが、一方で、こうした不正行為に手を染める塾講師の気持ちもよくわかります。
 塾としてはAO入試対策を売っている以上最低限出願までは果たさないと裁判沙汰になる可能性すらあるわけですが、その一方で自ら志望理由書・自由記述・事前提出レポートを揃えることができる受験生ばかりではないという実情もあります。
 中には校舎まで呼び出してもうんともすんとも動かないという事例もあります。こうしたときに塾講師が代筆の誘惑に駆られることは、その後待ち受ける訴訟リスクを考えれば致し方のないことです。ですから大学としても当然こうした背景を考慮に入れた上で対策を考えます。それが小論文試験の導入です。
小論文試験で見られているのは、つまり事前提出レポートを始めとする事前提出書類と本番の小論文試験とでの、論理性、文体の差なのです。この2つがあまりに乖離していれば、当然代筆を強く疑わざるを得ません。ですから、小論文の力を徹底的に高めることはAO合格の必須条件なのです。

・ 志望理由書・自由記述と面接の落差もチェックポイント

 同じように、志望理由書・自由記述で書かれている内容・論理性と面接との落差も大きなチェックポイントになります。いかにAO対策塾で面接の対策をしていても、面接で求められる瞬発的な論理性まで変えることはなかなか難しいのが実情です。
 論理性の欠落、論理の飛躍というのは、長年にわたって培われた習慣であり、そうそう変わるものではないのです。ですから、これをどうフォローしていくかもしっかり考えなければならない要素の一つになります。一つ私がおすすめするのは「MBAクリティカル・シンキング(コミュニケーション編)」です。
 この本は職場での日常的なやり取りを取り上げながら、どのようなやり取りが論理性がないやり取りであるかを懇切丁寧に紹介しています。この本をまず一通り読み、まずどのようなやり取りが論理性がないやり取りであるかをしっかり自覚することが大切です。まずはそこからすべてが始まります。
 その上で、講師の先生と実際の面接でよく聞かれる質問については、相当回数の質疑応答練習を重ねる必要があります。この時理想的なのは、その分野についてとにかく詳しく、情熱が迸るような質疑応答ができることです。こういう受験生は殆どの場合合格します。質疑応答集は魔法の杖にはなりません。

・ 事前提出のみの学部と、小論文・学力試験・面接がある学部の違い

 AO入試には、大きく分けると2つあります。一つは事前提出書類と面接だけで合否を決める試験です。こういった試験では、事前に提出された学校名や内申点が思いの他、威力を発揮します。逆に言えば、自分の実力を見られたくない場合には効果的な受験方法です。
 たとえば、AO入試ではなにも地方の無名校だから不利になるということではありません。むしろ、きちんとした実績さえあれば、あなたが地方の無名校出身であるということは不利な要素にはなりません。なぜなら、AO入試はダイバーシティーを確保するためのものなので、地方出身者を受け入れるからです。
 事前提出書類と内申書だけを提出し、あとは面接ですべてが決まるタイプのAO入試は、内申点は良いけど実際の受験学力はさんざんというケースでは、実際の自分の受験学力を見られることはありませんから特に有利です。一方、不登校・高校中退などの何らかの難を抱えている人はそうもいきません。
このようなケースでおすすめするのは、小論文・学力試験などの試験があるAO入試を受けることです。こうした試験では、不登校や高校中退歴は、小論文が苦手とか、英語が苦手とか、そういうありふれた欠点の一つに過ぎなくなります。その結果、不登校・高校中退からの合格可能性が出てくるのです。

・ 早めの一般入試としての慶應文学部自主応募入試

 また、内申点制約があるので、実際にはなかなか厳しい部分もありますが、慶應文学部の自主応募入試は、「早めに合格が決まる一般入試」という感覚で受けることをおすすめします。英語と小論文の試験だと考えていただいて差し支えありません。
 実際には倍率は一般入試よりもはるかに低く、内申点が4.1を超えてさえいれば入りやすい入試になっていますので、条件に合う方にはかなりおすすめできる入試です。ただ、しっかり考えなければならないのは、この入試は「AO入試」というよりは「早めに合格が決まる一般入試」であるということです。
 その証拠に、この入試には、自己推薦書こそあるものの、面接がありません。当日の小論文と英語の試験だけで決まります。この小論文にしてもまた非常にむずかしく、一見しただけで受験生が合格答案を書くことはそうそうできません。学校の先生でも添削に苦慮するでしょう。
 その点、学習塾というのはやはり有利です。学校と違って教員免許がなくても指導に携われますから、東大や慶應を卒業した実績ある社会人講師やこの試験に実際合格した元教え子様の講師が親身に対応できます。困ったときはぜひお気軽にご相談ください。

・ AO入試については適性がモノを言う部分が大きい

 さて、ここまでAO入試について縷縷書いてきましたが、AO入試についてはやはり適性がモノを言う部分が多いのも事実です。AO入試での不合格が、一般入試での不合格よりもこたえるのは、一般入試では不合格の原因が自らの勉強不足にあるのが明らかであるのに対し、AO入試では自らの人格にあるからです。
 もちろん、人格面が優れていなくても難関大学のAO入試で合格する人はいますが、しかし少なくともAO入試に不合格だったお子さん自身は、自分の人格になにか問題があるのではないかと考えてしまいます。ですから、お子さんがAO入試で不合格だったときには絶対に責めないであげてほしいのです。
 AO入試は、基本的には内申点が良く、全国大会出場実績があり、英語の資格があり、面接でも弁舌さわやかな、自己肯定感が高いタイプが有利です。もちろんこの本で紹介しているようにそうでない人でも合格しているわけですが、そうであるタイプのほうが合格しやすいのは間違いありません。
 ですから、この本を読んで、やはり自分にはAO入試は無理だと諦めて、一般入試でがんばる道を選ぶのもまた一つの考え方です。なるべく全国大会出場などの特殊な実績がなくてもどうにかなる方法を考えていきますが、一通り読んでみて私には無理だと思ったら一般入試でがんばりましょう。

・ 内申書が悪くても実績がなくても合格のチャンスがあるMARCH関関同立AO入試

 さて、この本では内申は悪い、大した実績もない、現状英語の資格もないという方向けに、それでもどうにかして合格する方法がないかを縷縷書いてきました。最低限の条件として英語の資格は頑張って勉強して取っていただく必要があるわけですが、仮に英語の資格を取ったとしても難が多いと難しい。
 それが早慶上智AO入試の現状です。どうにかなった例が多いことは事実ですが、それ以上にどうにかならなかった例が多いのもまた事実なのです。そこでおすすめしたいのは、内申書が悪くても実績がなくても合格のチャンスがあるMARCH関関同立のAO入試です。
 具体的な条件などは、年度によって変わるので、ご自身で改めて調べていただく必要がありますが、この本を描いている段階だと、青山学院大学・立教大学・中央大学であれば、内申点制限がなくAO入試が受けられる学部があります。
 この場合にも、英語の資格を取ることは必要になるケースは多いですが、こうした英語の資格のとり方については、この章の最後で後述したいと思います。英語に苦手意識がある方からすると信じられないかもしれませんが、実は英語の上級資格を取ることはさほど難しいことではありません。

・ 志望校選びでまずすべきことは条件の確認

 志望校選びですべきことは、まずは条件の確認です。どんな戦いでもそうですが、戦いというのは戦力が強い人間が強いのは当然ですが、それ以上にルールを知っている人間が強いのです。AO入試におけるルールはどんな学生がほしいかをそのまま反映しています。だからこそルールが大事です。
 志望校を選ぶ上で、まず確認すべきことは、内申点制限の有無、英語資格制限の有無、浪人制限の有無、実績制限の有無、などのありとあらゆる条件の確認です。とりあえずこの4つについて網羅的に調べてさえいればまずは問題ないと思います。
 AO入試ではもはや当たり前のことですが、意外と高校卒業(もしくは高校卒業見込み)を要件としている大学は多いので、まずはなにはともあれ、高校を卒業することが大切です。最悪通信制高校でもいいので高校は卒業しましょう。高卒認定を取るよりAO入試を考えればそのほうがよほど良いです。
 とにかくルールを知ること。そして、どんなルールでも逆手に取ることができることを知ることが、AO入試での逆転合格には必要不可欠です。内申要件は厳しいが、英語資格は見ない学校であれば、英語があっぱらぱーでも良いということであり、その逆であれば学校には行かなくても良いということです。

・ 次にすべきことは自らの志望動機の確立と在籍している教授の先行研究調査

 さて、ここで次にすべきことは、自分の条件に合う大学・学部が見つかったら、その学部の教員名簿を見ることです。これはネット上などで公開されているので、この教員名簿を虱潰しに見てみましょう。かならずどこの学部でも一つか二つかは自分にとって興味のある研究をしている教授が見つかるはずです。
 ざっと見てみて現状自分にとってさほど興味のある研究をしている教授がいなくてもかまいません。興味というのは面白いもので、自分がその分野についての知識が定着してくるとともに増してくるものだからです。人は自分が多くの知識を持っている分野については興味を持つものですし、その逆もまた然りです。ですからこの段階では特段自分にとって興味のある分野でなくても問題ありません。
 興味のある教授が見つかったら、Google scholarなどを使って、その教授の先行論文を調べてみてください。中身の専門的な統計的な部分については内容が分からないこともあるかもしれませんが、アブストラクトぐらいは理解できるのではないかと思います。これは文系の場合は優れた教授であればあるほどそうで、中学生が読んでも分かるようなアブストラクトを書くのが優秀な研究者です。それだけ研究の意義がわかりやすいということだからです。
 そして、その教授の論文の概要を一通りさらったら、次にすべきことは、その教授の論文の先行研究を一通りチェックすることです。これもアブストラクトを読むだけで十分で、AO入試に出願する程度の英語力があれば簡単に読めるはずです。これらの作業を一通り行うことで、研究のキーとなるキーワードが分かります。実際多くの論文には、研究のキーワードが明記されています。

・ 教授の先行研究の不足点は海外の研究をリサーチすれば分かる

 さて、研究を代表するキーワードが一通り分かったら、今度はそのキーワードでGoogle scholarを使って、論文を調べてみましょう。この作業を繰り返すと、行きたい大学・学部の教授と同様のテーマを扱っている論文で、行きたい大学・学部の教授よりさらに先端を走る研究や、別の方向性から研究している研究があることがわかるはずです。
 前述したように、AO入試で不正が蔓延っている現在、志望理由書・自由記述をどのような構成にするかは、多くの受験生にとって最大の関心事となっています。実際過去には、有力な政治家との写真や塾でのイベントを掲載しただけで合格するような例も多数存在したようですが、今日ではそのような僥倖を得ることはなかなかむずかしくなっているのが現状です。
 そこで考えなければならないことは、時代を通じて変わらない学問の本質を追求することです。先行研究を調査し、海外の先行研究をも網羅的に調べた上で、新たな研究の形を提案することは、時代を通じて変わらない優れた研究者の資質です。これを志望理由書・自由記述においても活かすことが大切になります。
 特に、ライフスキルなど文理融合型の研究が可能な分野では、海外の研究を日本にローカライズするだけでも十分価値ある志望理由書になることが多いことも見逃してはなりません。海外と日本では文化的背景も違いますし、そうした異なった文化的背景を考慮した上で日本人に合った研究をするだけでも、本研究の傍証として十分な学問的意義を得ることがあります。
 また、そうした研究を行うことは、大学卒業後、海外へと雄飛する一つのきっかけにもなりえます。海外の著名な研究者といえどもやはり人間で、自分の研究に対しての真摯な取り組みには心動かさせずにはいられません。そもそもどれほど著名な研究者といえど、彼らが書いた論文をしっかり精査した上で学問的検討をできるプレーヤーはこの世界にさほど多くはないのです。ですからこのようなアプローチであなたは世界的な研究者と縁を結ぶことができるかもしれません。
 それほどまでの展望を抱く必要はないかもしれませんが、それぐらいの気概で徹底して志望理由書作りに取り組んでほしいとは考えています。

・ 内申力×英語力×論理力=AO合格力

 さて、ここまでAO入試に求められる基本的な心構えについて書いてきましたが、基本的に抑えてほしいこととしては、AO入試においては、内申力×英語力×論理力がAO合格力であるという事実です。それぞれを計画的に高めていく必要があります。
 この本を読んでいる方に内申が高い方はさほどいないのではないかと思いますが、内申力はなにはともあれAO入試ではやはり大事です。AO入試での内申力に自信がない方は、間に合うのであれば、不登校であれば別の学校に入り直すなり、海外留学するなり新しい行動に踏み込んだほうが有利でしょう。
 また、英語力については努力次第で誰でもつけることができる資質です。中学段階での英語に自信がない方は、「くもんの中学英文法」の後ろにある青い冊子を解いて、できなかった部分を一通り復習する、「くもんのハイレベル中学英語」を一通り解くなどの復習をしましょう。その上で、関正生先生のポラリスという文法本を一通り解いて、Duo3.0、リンガメタリカ、アカデミックなどの単語帳を1日1passageずつ100回ずつ聞きましょう。これだけでTOEIC600点・英検準1級は切らないはずです。(もちろんそれぞれ過去問演習で苦手を発見し、各分野を補強するなどした上です。)
 論理力については、新版・論理トレーニングを行うことをおすすめします。これを1日10題ずつ解いたら10日間で相当論理力がつく形になります。ここから小論文対策などに向けた基礎作りが始まる形になります。もちろん志望理由書・自由記述を手直しする際にも小論文執筆のノウハウは必要になりますのて、いずれにしても小論文は書いていただく形になります。

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