AO入試対策 (2) 自由記述対策

 次に自由記述の話をしたいと思います。自由記述に関してですが、ここでポイントとなるのは、まず自由記述とはそもそもなんのために存在しているかということです。

 そもそも、論理で表現できることであれば、自由記述を用いる必要はなく、単純に志望理由書だけで完結させることができます。自由記述を用いる理由は、つまり、論理だけではなく感性の部分をアピールしたり、論理といっても、グラフや図を使って視覚的に直感的に説明する必要があるからです。そのことを意識した上で自由記述を作ることが、自由記述を課す大学・学部では最も大切なことになります。

・ AO・推薦の自由記述は「過去」と「未来」のA42枚構成で書くべき

 さて、他にも私が自由記述を見ていて、気になる点としては、自由記述に未来のことばかり書く人が多いことです。これは、過去の活動実績などに自信がない生徒さんに特に見られがちな傾向ですが、これはあまり感心しません。自分の活動実績の話を置いておいても、大学における研究において、先行研究のない論文などほとんど存在しません。ですから、自分が大学でやりたいことが、どのような先行研究の到達点を踏まえた上で、どのようにその先にあるのかをしっかり書く必要があります。そのことを考えても、やはり、AO・推薦の自由記述は「過去」と「未来」をそれぞれA41枚ずつで書くべきです。

・ 「過去」の自由記述には過去の先行研究をまとめながら、自分の実績をアピールしよう

 ここで、「過去」の自由記述の書き方が問題になりますが、「過去」の自由記述においては、過去の先行研究をまとめながら自分の実績をアピールすることが、まずなによりも大事になります。実績がない場合には、過去の先行研究をまとめるだけでもかまいません。

 実績については、たとえば慶應SFCなどではそれ単体で書く書類がありますし、たいていの大学・学部でそのようなものはあるので、そこに書いておくのも良いですが、そのような活動内容がどのようにして、その先行研究に興味を抱く動機になったのかはしっかり書いておいたほうがいいように思います。まずは先行研究について調べ、それをまとめ、その中に自分の過去の活動実績との関連を練り込んでいくイメージです。

・ 「未来」の自由記述には研究の展望をまとめながら、自分の将来像をアピールしよう

 「未来」について書く自由記述には、先行研究内で摘示されている「今後の研究課題」を参考にしながら、自分なりのアプローチで研究をどのように進めていくかを書きます。こうした内容はかなり専門的なものも含みますので、私達毎日学習会を始めとするAO対策塾に相談することはもちろん、大学の研究発表会(慶應SFCでしたらORF、それ以外だと各大学の学園祭がそれに当たります)など機会を掴んで積極的に自分が行きたい研究会の教授とコンタクトを取る機会を作りましょう。たいてい大学の教授は、論文に対する質問でも、それが的を射たものであればメールなどで答えてくれる人も多いようです。

 リクルートの創業者である江副氏の言葉で「機会によって自らを変える」という言葉があります。コネが重要なわけではないですが、AO入試においてもやはり縁を大切にし、縁によって大学とつながっていくことが非常に重要となる側面もあります。やはり自由記述も志望理由書も、本物のプロの目から見て価値あるものであることが大切ですので、ぜひ大学の先生にも声をかけてみてください。研究分野によっては私の知人の大学教授を紹介することも可能です。

・ SFCAO入試の志望理由書・自由記述がすべて実現していればSFCからノーベル賞が100人出ている

 また、AO入試の自由記述に関しては、その内容が大言壮語的である例も少なくないため、一部で疑問の声が上がっているようですが、こうした危機意識は私も概ね共有しています。私が良く教え子様にお話することですが、SFCAO入試の志望理由書・自由記述がすべて実現していればSFCからノーベル賞が100人出ているというのは間違いのない事実です。

 つまり、志望理由書・自由記述でコミットしたことが必ずしも重要ではないということでもありますし、実際の研究は志望理由書・自由記述で書いた程度にはうまくいかないことも多いということです。そのことを先ず認識した上で、それでもなお研究内容に「ハマる」ことが非常に大事です。

・ 自由記述で大切なことは「約束を守る人」であるというメッセージ(=矛盾を排する姿勢)

 もちろん、大学側としても、志望理由書・自由記述に書いた内容と概ね根本的には矛盾のない目的意識の中で大学生活を歩んでほしいと願っているとは思いますが、そうはいっても研究というのは研究していくうちにその方向性はある程度変わっていくものです。それこそが学問であり、それこそが学ぶことだと私は思います。ですから、必ずしもそれに大学生活で固執する必要はありません。

 しかし、志望理由書や自由記述の段階で、この人はウソつきであると思われるような矛盾のある内容を書くことはよくありません。実際、ウソというのは、一つつくといくつもツカなければならなくなり、結局のところそれが露呈してしまうのです。

 SFCの書類審査通過、面接については、私は大きく分けて二つのタイプの教え子様がいると考えています。一つは、確実に合格する教え子様です。こういう教え子様は、東大・京大・早稲田・上智などもこぞってAOで合格を出したい教え子様で、もはやお客様です。面接での対応もまったく異なり、VIP待遇です。もう一つのタイプの教え子様は、とりあえず呼んでみるか、というタイプの教え子様です。特に後者の場合は、どうにか志望理由書・自由記述の内容を磨き上げた上で、それと矛盾のない形で面接での受け答えをすることが重要になります。

・ 自由記述の構成で悩んだ時に使える「一枚企画書」の魔法

 論理矛盾がない志望理由書の書き方は、前述しましたが、企画書については感性的な側面も多いため、論理矛盾がない内容にすることが志望理由書以上に難しくなります。特に自分で構成を決めている場合、百発百中で論理矛盾や論理の飛躍が起きます。そうしたことを防ぐためには、やはりこうしたプレゼンテーションのプロが作ったテンプレートをそのまま使うのも一つの案になります。

 たとえば、「一枚企画書」という本の特設サイトは、私も良く使っているサイトなのですが、百種類程度のわかりやすい企画書のテンプレートがあり、そのまま各大学学部の自由記述に転用できます。これは根拠から結論を構成していく形でまとまっており、論理矛盾や論理飛躍が起きない工夫が構成に組み込まれているので自由記述を作る上ではとても参考になるサイトです。

 基本的には、これに加筆修正していく形で自由記述を作れば問題ありません。ここでも大切になるのは、自由記述があくまでも文字に落とし込めない論理をグラフや図で表現したり、そもそも論理とは違う感性的な部分をアピールするためにあるものだということです。ですから、あまり字が多くならないようにして、しっかり図やグラフ、絵や写真を使って書くようにしましょう。

・ 過度に作り込まれた自由記述は見抜かれる

 また、AOの指導をしていると、かなり多くの親御様から、志望理由書・自由記述を代筆してくれませんかというお話をいただきますが、これは私は原則としては断っています。例外的に、海外生活などが長く、日本語があまりできないために、箇条書きで書きたいことをまとめていただいた上でこちらである程度手を加えることはありますが、こうした例もこれから英語で出願・面接を受けられる大学が多くなっていくことが少なくなっていくでしょう。現に慶應経済のPEARL入試や早稲田大学の多くのAO入試(例えば一例としてあげるとグローバル入試)はいまでもそのような形を取っていますし、慶應SFC2020年度からはそのような形になります。

 ですから、なにはともあれまずは自分で作ってみるということが大事です。その上で、論理飛躍などについては徹底的に確認をしていく。この姿勢がまずなによりも大事になります。独立自尊の精神がなければAO入試合格は難しいのです。

・ 履歴書はあなたがそのプロジェクトに賭けた熱意を如実に表す

 また、AO入試が活動実績を重視するかどうかについては、前述の通り大学学部によってかなりの差があるのが現状です。

 ただ、そうはいっても、あなたの履歴書、志望者調書があなたがそのプロジェクトに賭けた熱意を如実に表すのは事実です。前述したようにそういった実績を重視する大学学部もあれば、そうでもない大学もあります。慶應SFCなどはかなり重視する一方で、特に内申制約があったり(これが重要)、小論文・ディベート・英語など他の要素での試験がある場合はあまり実績は重要視されません。慶應文学部の自主応募入試などは、時期が早く倍率が低い一般入試のようなものだと考えていただいて概ね差し支えありません。

・ 「盛る」ことは良いことか?

 さて、ここで特段の活動実績を持たない生徒が考えがちなのが、実績を「盛る」ことです。実際、多くの合格者が今まで、少し話を大げさにしたり、自分がやっていないことをさも自分がやったように見せて合格していったのは、ある程度の部分で事実かとは思います。

 ただ、その一方で、やはりこうした実績を「盛る」生徒を大学に合格させないようにする方法論は着実に培われてきており、最近では慶應SFCAO入試についてもかなり精度が高く、こうした生徒を排除しているように思います。また、他の大学のAO入試でもなるべくこういった実績を盛ることはしないほうが良いでしょう。

 現状の自分に特段これといった実績がない場合にすべきことは、まず実績がさほど重視されないAO入試の形態を選ぶことです。こういったAO入試の形態は探せば必ずあります。内申点が平均4以上の方であれば、平均4以上のしばりがあるAO入試では活動実績はさほど重視されないことがほとんどですし、平均4.5以上であればさらにそうです。また、英語の資格、本番での英語の独自試験、小論文試験、ディベート試験などこの中で内申縛りも含めたより多くの縛りを課している大学は基本的には実績はさほど重視しなくなります。そういう視点でAO入試をもう一度見つめ直してください。

・ 「ある事実」を「解釈」を変えるとどうなるか?

 また、AO入試の実績については、「ある事実」に対する「解釈」も重要になります。

 AO入試の志望者から話を聞いていると、適切な自己評価をしている教え子様があまりにも少ないことに驚かされます。適切な自己評価とはなにかというと、つまり自分がした自分への評価と他人からの自分の評価に食い違いがあるということです。AO入試を受けるタイプでは、自分への評価が高すぎるケースも多いのですが、AO入試を受けることを検討している、念頭に置いている段階の方では、自分への評価が低すぎることも多いのが現状です。

 たとえば、よくある例としては、チームで全国大会出場などの類まれな実績を持っているにも関わらず、「補欠だったから……」「レギュラーじゃなかったから……」「内申が悪いから……」「小論文が書けないから……」といって、せっかくのチャンスであるAO入試への出願をためらっているケースです。これは非常にもったいないことだと思います。なぜなら、全国大会に出場したチームの補欠でも今まで慶應SFC・早稲田スポーツ科学部に合格した例がありますし、内申が悪くても受けられる一流大学・一流学部はやまほどあります。小論文が書けないのも、いわば当然のことで、そもそも高校で習っていないのですから書けるわけがありません。

 そう考えれば、これらのことはAO入試への出願をためらう理由にはなにないことがよく分かるはずです。少しでもAO入試への出願を考えている方は、ぜひ毎日学習会に受験相談していただければと思います。全国大会の補欠でもチームでは重要な役割、サポート役を兼ねていた場合も少なくなく、そうしたレベルの高いチームで培われてきた感性は必ずしや大学生活でも役立ちます。そのことにもっと自信を持ちましょう。

・ 志願者添付書類には力を入れるべきか?

 また、慶應SFCなどのAO入試である志願者添付書類には力を入れるべきか、そもそも提出すべきかという質問がよくありますか、これについては英語のプレゼンテーションで言うところのいわゆる「Appendix」だと考えてもらえれば大丈夫です。

 自由記述を作る際に大切なのは、内容の取捨選択です。後述するように自由記述では、志望理由書と異なり、論理を直感的に理解できるように図やグラフ・絵や写真を用いて説明したり、あるいはより直感的に理解できるアプローチ・言葉で表現していく必要があります。これが志望理由書と自由記述の役割の大きく異なる部分です。

 直感的な理解を重んじた際には、どうしても取り上げることのできる出来事は少なくなります。直感的な理解を得ようとすると、多くのことを書くよりも少ないことについてしっかり論理を持ってアピールする、それを図や表やグラフに落とし込むことが重要視されるためです。しかし、自由記述に書かれていないことでも重要な意味を持つ場合はあります。ですから、そういったものを志願者添付書類に入れることには大きな意味があると言えるでしょう。

・ 自由記述は想いのまま思いつきをぶつける場所ではない

 しかし、自由記述は感性が大事とはいえ、一方で我々がまず考えなければいけないのは、自由記述は想いのままに思いつきをぶつける場所ではないということです。このことについてはしっかり把握しておかなければいけません。このあたりをかなり履き違えた自由記述を書く人がやはり未だに多いように思います。

 自由記述というのは、あくまでも「優れた論理」を「多くの人に理解しやすいように直感的に伝える」ためのものです。

・ 自由記述に求められる論理構成

 では、自由記述に求められる論理の構成とはどのようなものか考えましょう。

 一言でいうとそれは、

1. 結論があり、

2. 根拠が明確で、

3. かつ根拠が深掘りされるべき部分まで深掘りされており、

4. もれなくダブりなく書かれている

 ことです。

 この四点が満たされていれば、自由記述に求められる論理構成としては過不足ないといえます。では、この四点を満たすためにはどうすればよいかを考える必要があります。

 まず、1. 結論を明示することについてですが、これは予め自分が大学でなにをしたいのかを明確にしておく必要があります。こうやって書くと当たり前のことのように思えますがそんなことはなく、AO入試を受ける人でも実は自分が大学でなにをしたいのかがよくわからない人が多いのが現状です。ですから、その部分に関しては十分考えた上で自由記述を書く必要があります。

 2. 根拠を明確にすることはさらに難しいことです。たいていの持論というのは、単なる感性的な偏見のコレクションに過ぎません。それを論理的整合性のある形で第三者にでもわかるように書くことは決して生易しいことではないのだということは理解しておく必要があります。

 また、3.根拠が深掘りされるべき部分まで深掘りされている、ことも非常に大切でしょう。この部分については、おおよそ最初の段階からできている人はほとんどおらず、たいていこちらが指摘してから、思考の深掘りを始めるという教え子様が多いため、私達としても難儀しているところです。一般入試で東京大学を受ける教え子様は比較的この点には問題無いケースが多いのですが、それ以外の人はだいたい問題があるので、実際にAO入試のプロに見てもらったほうが良いでしょう。毎日学習会では無料で10日間、志望理由書と自由記述の添削を承っておりますので、ぜひご相談ください。

・ 志望理由書と比較した際の自由記述の図示という役割

 さて、志望理由書と比較した場合の自由記述の役割は下記の通りです。

・ 志望理由書……論理を文章の形で表現する。

・ 自由記述……論理を図やグラフ、絵や写真で表現することで、読者の直感的な理解を助ける

 志望理由書が主に扱うのは、文章の形にしやすい論理です。外部環境や先行研究をまとめ、そこから課題を見出し、今後の自らの大学での研究に活かします。これが志望理由書で扱うべき第一の話題です。

 一方、自由記述となると毛色が異なります。自由記述で大切なことは、文章の形にはしにくい論理をいかに自由記述の中に落とし込むかです。論理の中で文章にしにくいものというのは、表や図・グラフで表されることも多いですし、直感的な理解を助けるためには写真選定が重要なことも少なくありません。

・ 世の中の95%の人にメッセージを伝えるには図示が大切

 こうした志望理由書のみならず自由記述も求める大学が現在増えておりますが、これはもそも多くの人を巻き込むには図示が不可欠だからです。まず、世の中の95%の人は論理的な文章の読解に支障があります。また残り5%である大学の先生方も、もちろん論理を理解できないわけではないのですが、直感的な理解のほうが容易いのは人間であるかぎり当然です。

 ですから、そういう観点から言っても、自らが考えていることを伝えやすくするにも、自由記述をやっつけで仕上げるのではなく、計画的に前々から準備しておくことが大切です。これは志望理由書や自由記述に限らず、すべてのコンテンツに一様にいえることですが、作り手が苦労したコンテンツは読みやすいですし、その逆もまたしかりなのです。

・ 伝えたいメッセージによって図示方法は異なる

 さて、ここで注意しなければならないのは、伝えたいメッセージによって図示方法は異なるということです。

 ざっと表にまとめてみましたが、使うべきグラフの選定方法は下記のように明確に異なります。

 こうした違いに自覚的であるためには、「マッキンゼー流図解の技術」とそのワークブック、「マッキンゼー流プレゼンテーションの技術」がおすすめです。この本にはこれら10の図解の方法について、その使い分け基準が詳しく載っていますし、ワークブックを演習することでその使い分けが上手にできるようになります。

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