慶應義塾大学 経済学部 小論文 2010年 解説

・ 問題文

A、課題文の空欄は、その前後をつなぐいくつかの文を伏せたものである。その文章では、政府の指令統制による方法と市場による方法とが対照され、後者のほうがうまく機能する理由が述べられている。空欄の前後の文章を読んで、空欄にどのような議論が入るのが適切かを考え、400字以内で記述しなさい。その際、汚染削減コストに関する官僚と企業の間での情報の差、および汚染削減コストの正確な情報を伝える企業側の動機付けに着目しなさい。

B、課題文は、酸性雨の事例に即して、市場を用いて環境問題を解決する方法を示したものである。市場を用いる方法は、他の環境問題にも適用できるだろう。しかし、環境問題の中には、市場による方法では原理的に解決が難しいものも存在すると思われる。そのような環境問題の例を一つ挙げ、なぜ市場による方法では解決が難しいのか、200字以内で説明しなさい。

・ 模範解答

A

環境問題の解決においては、多くの場合、政府による指令統制よりも市場による方法の方が機能する。
その理由は、汚染削減コストについて企業は官僚よりも多くの情報を持っているためである。なぜなら、企業は汚染発生プロセスのありとあらゆる部分の数値データーを持っているが、官僚が振れることが出来るのはその集計数字にすぎないためである。また、プラントなどの環境の多様性が、官僚による正確な理解をより難しくしている。
さらには、企業側には汚染削減コストの正確な情報を他社に伝える動機付けがある。たとえば、汚染削減コストが排出権購入費を上回るプラントは喜んで排出権を買うし、一方でその逆のプラントは喜んで排出権を販売するためである。この時の買うか買わないか、売るか売らないかの販売をめぐる攻防、需給関係により企業は汚染削減コストの正確な情報を他社に伝えるインセンティブを持つ。

B

市場による方法では原理的に解決が難しい環境問題の一つとして、その環境問題がもたらす公害があまりにひどい場合が存在する。
なぜなら、排出権が認められているのは、その汚染物質が排出されても、少なくとも短期的には大きな問題が生じないからであって、短期的にも大きな問題が生じるような環境問題の場合は、そもそも排出権を認めるわけにはいかないからである。

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