慶應義塾大学 経済学部 入学試験 2001年 小論文 解答例

■ 設問

[課題文] を読んで,以下の設問に答えなさい。

(1)

[課題文] において,筆者は科学技術の発達をめぐって何を争点と考えているのかを140字以上160字以内で述べなさい。

 

(2)

[課題文] の下線部Aの趣旨にあてはまる例としてどのようなものがあるか。第二次世界大戦後の具体例を1つあげて140字以上160字以内で説明しなさい。

 

(3)

[課題文] の下線部Bに関して,科学技術の発達を制御する可能性について,とくに現代における科学技術の発達が国際競争や企業活動と深く結びついているという側面があることを考慮して,[課題文] 全体の結論になるように,360字以上400字以内で述べなさい。

 

設問(1)

筆者は科学技術の発展がもたらす功罪を争点とし,安全性を軽視した科学技術の発展に対し警告を発している。すなわち,科学技術の発達は短期的に見れば人間に多大な恩恵をもたらすものであると認めながらも,長期的視点では未来永劫安全性が担保されているとは断言できない技術もあるため,将来安全を脅かす危険性が潜在すると主張している。(原稿用紙で158字相当)

 

設問(2)

2011年に発生した東日本大震災により,想定を超えた大津波が福島第一原子力発電所に押し寄せたため,主電源のみならず予備電源まで喪失した。この停電により炉心緊急停止が作動せず,炉心溶融が発生し,放射能漏れを起こした。この事故がきっかけで原発の「安全神話」が崩壊し,原発が一転して危険視され始めることとなった。(原稿用紙で151字相当)

 

設問(3)

■ 答案構成

この設問に対しては,< 5-STEP >を答案の方向性を練るフレームワークとして利用する。

議論の整理→ 著者によれば,巷間,「科学技術の発達を制御すべし」という考えと,「現代の科学技術は国際的競争や企業間競争に晒されておりブレーキをかけるのが困難である」という考えが混在している

問題発見→ どちらの考え方が「正しい」のか,あるいはこの問いに対しそもそも「正解」はあるのか?

論証→ 100%安全性が保証された科学技術は歴史上存在しないことから,安全性評価が重要であるとの視点を導入する

解決策or結論→ 新・科学技術の安全性評価においては人類の英知を集めて是非を判断したうえで,その恩恵にあずかるような社会的合意を形成する提言をまとめる

解決策or結論の吟味→ 答案が「課題文全体の結論」になっているか,整合性を確認する

■ 答案

しかし,グローバルな技術競争下にある現代の企業は新たな価値を生み出すための事業経営を推し進めている。そのなかで,安全性の確度でもって科学技術の発展を制御することが現実解として成立するだろうか。安全性を軽視する技術開発がナンセンスなのと同様に,安全性の確証が得られるまで新技術の実用化を見合わせるという考え方もまたナンセンスである。なぜなら100%の安全性を保証することは,危険性が一切ないことを証明することに等しく(「悪魔の証明」),後にたった一つでも危険性が発見されれば,安全性が全否定されるからである。ここは専門分野の異なる有識者らによる複眼的な科学的検証をもってその時点で条件付きの安全性が確認されたとするのが現実的である。安全性が確認されている範囲と条件を明確にし,範囲外や条件外での使用に対する抑止策を幾重にも実装するようなしくみを構築することこそ,人類の英知の見せ所ではないだろうか。(原稿用紙で397字相当)

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