■ 設問
Ⅰ
[課題文] の下線部Aに関連し,次の設問に答えなさい。
イギリスとアメリカにおいては,大学へのどのような期待が歴史上存在したか。課題文からそれらを二つにまとめ,それぞれがそのような社会的変化の中で重視されるようになったかを70字以内で述べなさい。
Ⅱ
[課題文] の下線部Bに関連し,次の設問に答えなさい。
「現在,日本の社会と経済が,急速に変化しつつある」とあるが,日本の社会や経済のどのような現実が,なぜ,大学における知の在り方に変化を求めているのか。具体的な事柄を1つ取り上げて130字以上150字以内で説明しなさい。ただし,この設問への解答に際しては,[図1] から読みとれる情報は利用しないものとする。
Ⅲ
[課題文] の下線部Cならびに [図1] に関連し,次の設問に答えなさい。
[図1] は1955年から2000年までの日本における四年制大学入学者数と18歳人口の推移を示したグラフである。このグラフから読みとれる情報とともに,大学をめぐるその他の状況を考慮した時,これからの大学はどのような理念に基づくべきであると考えるか。課題文を踏まえ,あなたの見解を460字以上500字以内で論じなさい。
設問Ⅰ
新たな市民階級の勃興を背景とした「望ましい市民の育成」の場,および経済発展に伴って「農・工業等の専門的知識教育」の場として,期待された。(原稿用紙で68字相当)
設問Ⅱ
日本社会の急激な少子高齢化と,それに因する労働人口の減少が,経済規模の縮小を引き起こすと予見されている。技術でもってその流れに抗い現在の経済規模を維持するため,「研究のための研究」ではなく,産学連携による研究開発の加速など,具体的な社会利益に直結する実学研究が大学に期待されるようになった。(原稿用紙で145字相当)
設問Ⅲ
■ 答案構成
この設問に対しては,答案の軸を定めるためのフレームワークとして< 5-STEP >を利用する。
議論の整理→ 設問文にある「このグラフ(図1)から読み取れる情報」とは4年生大学進学率が増加傾向にあることを指し,「大学をめぐるその他の状況」とは国内大学数(特に私大数)が著しく増加したことを指すとみる
問題発見→ 労働市場における大卒の意味と意義に変化が生じていることへの気づきに言及する
論証→ ピンからキリまで存在する大卒の付加価値と有効利用について述べる
解決策or結論→ 独自見解として,これまで知識人が主張してきた「教養(リベラルアーツ)重視」に偏向せず,実学重視や研究重視など,多様な設置目的を認めることを提言する
解決策or結論の吟味→ ×
■ 答案
図1は,4年制大学進学率が単調増加傾向にあり,1955年時では18歳人口の14人に1人だった大卒は2000年時には3人に1人となったことを示している。これは,この45年間で日本社会の高学歴化が進んだことを意味する。加えて4年制大学の数も著しく増加し,なかには定員を充足できない大学もあるという。こうなるともはや「大卒」と一括りにすることに意味はない。そこで,「大学イコール研究機関」という根強い考え方を改め,社会貢献する人材の輩出を理念とする実学重視の大学があってもよいのではないだろうか。さらに,輩出したい人材像にあわせて理念を特殊化するなど,大学がもっと多種多様化してもよいのではないだろうか。世の知識人は専門的知識よりも教養的知識を偏重する傾向が強く,大学ではリベラルアーツを学ぶべきと説く。しかし,大卒全員が教養としてキルケゴールを語れなくともよいであろう。それよりも,アカデミックリーディングやクリティカルシンキングの技法を身につけて課題発見や課題解決を得意とするような,実社会で活躍するプロフェッショナル人材を養成することを理念にうたう大学があってもよいと考える。(原稿用紙で481字相当)
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