慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2000年 解説

・ 問題文

問題 アメリカ合衆国には,宗教上の理由から,自動車,電気,電話。テレビなどの使用を制限し,ほぼ300年前の暮らし方を続けている,アーミッシュと呼ばれる人々がいます。彼らの生活は,エネルギー消費が少なく,過度な情報に振り回されることなく,家族が強い絆で結ばれており,私たちに科学技術の進歩の意味を問いかけています。
資料1はアメリカ合衆国ペンシルバニア州出身の実業家が自分の生まれ故郷のアーミッシュを郷惣をもって紹介している本からの抜粋。資料2は日本人のジャーナリストによるルポルタージュからの抜粋です。資料3一1と3一2はアーミッシュの生活の一部を示す日本人の写真家による写真(編集の都合上,省略)です。
これらの資料を参考に,アーミッシュの人々の生活を一つのモデルとして,君たちの生活と具体的に比較する事によって。20世紀の近代科学技術の発展が現代の生活に与えた影響のプラス面とマイナス面の両面についてそれぞれ考察した上で,21世紀の科学技術の発展と暮らしのあり方についての意見を記述しなさい。解答欄は1000字ありますので。その中に必ず科学技術の発展が与える影響のプラス面,マイナス面,そして21世紀の科学技術の発展と暮らしのあり方の3項目がわかるように,記述しなさい。

・ 問題の読み方

 アーミッシュの事例が書かれているため、ともするとそればかりに注目してしまいがちだが、実際にはアーミッシュの話しはあくまでも参考程度にとどめ、”20世紀の近代科学技術の発展が現代の生活に与えた影響のプラス面とマイナス面の両面についてそれぞれ考察した上で,21世紀の科学技術の発展と暮らしのあり方についての意見を記述しなさい。”という部分を、科学技術の発展が与える影響のプラス面,マイナス面,そして21世紀の科学技術の発展と暮らしのあり方の三項目を抽象的に論じながら、展開させていき、折々にアーミッシュの話しを絡めたほうが良い。

・ SFC小論文に求められる解答の指針

 20世紀の近代科学技術の発展が現代の生活に与えた影響のプラス面とマイナス面の両面、21世紀の科学技術の発展と暮らしのあり方についてはNewtonなどのバックナンバーをしっかり読み込んでいないとほとんど書くことができない。こうした普段からの積み重ねを大切にしながら、小論文を書いて欲しい。

・ 模範解答

議論の整理→

アメリカのアーミッシュの人々は、古くからの因習を大切にした、昔ながらの暮らしを重んじている。一切の電気機械に頼らない農業を生業として、自給自足を基本にした暮らしをしている。それに対して、私たちは、アーミッシュの人々に比べると大変便利な暮らしをおくっている。近代の科学技術の発達に伴って、生活の中での生産性が向上したためである。現在の私たちの暮らしにおいて、科学技術は必要性の高いもののひとつとされている。

問題発見→

しかし、一方で、その科学技術の発達によって、私たちの暮らしの中で人と関わる機会が減少している。実際に、隣に住む人の顔を知らない、あるいは、隣に住む人と喋ったことがないという例もある。昔ながらの暮らしをするアーミッシュの人々に関しては、家族や地域社会などのコミュニティの結束力が強かった。これからも人と関わる機会が減り続けると、地域の中で子どもが危険に巻き込まれやすくなってしまう。地域の犯罪が増加してしまう可能性もある。人と関わる機会が減っていることは、解決しなければいけない問題だ。

論証→

人と関わる機会が減った原因は、暮らしの中の問題の多くが、誰の協力を得なくても1人で解決できるようになったからだ。1人で解決できるようになったのは、技術の発達により物事を楽に行えるようになったことが原因である。スマートフォンとインターネットの普及によって、買い物は家でできるようになった。農作業などに関しても、機械さえあればたいていのことは1人で行えるようになっている。このように、何でも1人で楽に解決できるようになったことが、人と接する機会を減らしてしまった。

解決策or結論→

これらのことから、一部の限界集落で安全な社会を望む移住者を対象に「農村回帰」をコンセプトに暮らしを徐々に昔ながらのものに戻すという解決策or結論を提案する。これにより、積極的に人と関わっていく社会づくりが可能だ。なぜなら、暮らしの問題が1人では解決しづらいものになるので、必然的に家族、あるいは他の誰かの協力を仰ぐようになるからだ。

解決策or結論の吟味→

このままの暮らしを続け科学技術を不用意に発達させ続けてしまうと、将来的な環境への悪影響は大きい。しかし、この解決策or結論が、科学技術の発達と環境保護との調和を取るモデルになり、環境汚染などを防ぐことも可能である。

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