慶應義塾大学 文学部 小論文 1997年 解説

・ 問題文

(間1)全域的なリアリティとは何か、局所的なリアリティと対比させて説明しなさい(ニ○○字以内)。
(間2)局所的・全域的というニ重のリアリティは、また芸術や歴史の領域においても見出すことが可能である。いずれか一方の領域を選び、具体的な対象や事例に即してこのニ重のリアリティについて論じなさい(四○○字以内)。

・ 問題の解き方

 問一については、対比させて説明しなさいとあるので、5STEPsの議論の整理パートを用いた整理が最も有用であることがわかる。ものごとを対比させながら記述するときのコツとしては、対比だけに拘泥することなく、しっかり議論の共通の前提・共通の理想を捉えてから、それぞれの議論の相違点について述べたほうが良い。
 問二については、”具体的な対象や事例に即して”論じなさいとあるので、具体例を多く用いることができる結論・根拠・具体例のフォーマットを採用したが、”論じなさい”とあるので5STEPsのフォーマットを使って書くことも可能である。今回は、論じなさいという設問の要求に対し、根拠部分で意見を対比することにより簡易的にその要求を実現した。文字数制約を考えるとこれがもっとも妥当であるといえよう。

・ 模範解答

問一

共通の前提……

局所的リアリティにせよ、全域的リアリティにせよ、世界を観察するための手段の一つである。

各々の相違点……

全域的なリアリティとは、局所的なリアリティと異なり、世界を俯瞰的に、かつ同じ縮尺で観察する様である。
世界を俯瞰的に、かつ同じ縮尺で観察することにより、個々人の主観を排し、客観的に世界を把握できるようになるという特徴を持つ。一方、局所的リアリティでは、どうしても個々人の立つ空間的・時間的位置により世界の把握のあり方が変わってしまうという欠点がある。
具体的には、政治家のような遠い存在に対して、庶民感覚を求めるなど行為は、局所的リアリティの典型的な弊害である。(276文字)

問二

結論……

戦乱の終結などの際に、局地的リアリティと全体的リアリティの齟齬という二重のリアリティを私たちは見出すすることができる。

根拠……

たとえば、祖国の敗戦は、全体的リアリティの観点から考えれば、経済力は破壊的に疲弊し、多くの犠牲者を出す悲惨極まりない事態である。だが一方で、局所的リアリティの観点から考えれば、母親はこれ以上子供が戦死しなくしなり、あるいは青年は兄弟がこれ以上戦死しなくなる。そうした点で考えれば、彼らにとっての敗戦の効用は大きい。

具体例……

実際、日本が第二次世界大戦で敗戦を経験した後には、たしかに国家全体としては嘆き悲しむムードがあったが、一方で個々の国民としては歓迎する声も多かったという。実際、「聞けわたづみの声」という特攻隊の遺書集を見ても、国家単位の全体的リアリティと個人単位の個人的リアリティがまったく異なるものであることがわかる。
戦乱の終結などの際に、局地的リアリティと全体的リアリティの齟齬という二重のリアリティを私たちは見出すすることができる。
たとえば、祖国の敗戦は、全体的リアリティの観点から考えれば、経済力は破壊的に疲弊し、多くの犠牲者を出す悲惨極まりない事態である。だが一方で、局所的リアリティの観点から考えれば、母親はこれ以上子供が戦死しなくしなり、あるいは青年は兄弟がこれ以上戦死しなくなる。そうした点で考えれば、彼らにとっての敗戦の効用は大きい。
実際、日本が第二次世界大戦で敗戦を経験した後には、たしかに国家全体としては嘆き悲しむムードがあったが、一方で個々の国民としては歓迎する声も多かったという。実際、「聞けわたづみの声」という特攻隊の遺書集を見ても、国家単位の全体的リアリティと個人単位の個人的リアリティがまったく異なるものであることがわかる。

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