慶應義塾大学 文学部 2016年 小論文 解説

慶應義塾大学文学部 2016年 小論文解説

=問題文=

問一 この文章を三百字以上三百六十字以内で要約しなさい

問二 人間にとって「名付ける」とはどのようなことか、この文章を踏まえてあな た自身の考えを三百二十時以上四百字以内で述べなさい

=問題の解き方=

問一

要約については、

1. それぞれの共通の前提 2. 議論の相違点
を書けば良い。この場合には、

1. それぞれの共通の前提 ……人間が動物に名を与えるという行為は人間社会との関係に応じて規定される。

2. 議論の相違点

人間社会との関係の相違について説明

……たとえば、人間と独立した共同体に属する鳥は、人間に使われる名前がそのま ま転用される。犬は、人間社会に従属的に組み込まれているため、人間と区別する ために犬専用の名前の集合が用意される。牛は人間社会に組み込まれているが、犬 ほど主体とみなされないので見た目の特徴から命名される。競走馬は個体識別が重 要なので血糖にもとづき厳密に命名される。

理論の相違について説明

……このように、人間の思考と行動が帰属する社会の構造によって規定されるとす るこの構造主義の立場は、人間の絶対的な自由を主張する実存主義と対立する。

問二

論述問題については、

1. 議論の整理 2. 問題発見

3. 論証 4. 結果 5. 結果の吟味

の順番で書いていく。

1. 議論の整理

共通の前提……

我々と対象との関わり方は、名付け方によって大きく異なる。

議論の相違……

我々がある犬を見た時、その犬と自分が直接的な関係を取り結ばないのであれ ば、その犬との関係は種としての犬として以上のものではない。しかし、その犬を 「ハチ」と名付けるならば、我々は名付けるという行為を通じて「ハチ」をより深 い関係を結びうる相手とみなすことができる。

2. 問題発見

ここで、命名行為が名付けられる側の持つ絶対的な自由を前にすると虚構になる のか否かについて考えたい。

3. 論証

我々は、命名するという行為を通じて、相手との深い関係を結ぶことができる。 一方で、命名しない場合には、あくまでも対象を対象としてしか認識できない。

4. 結果

このように、我々は命名するという行為を通じてしか、相手との深い関係を結ぶ ことができないのだから、命名行為には関係を切り結ぶ上での意義がある。

5. 結果の吟味

このように考えた時、命名行為はたんなる虚構ではなく、対象を個的なものとし て理解する上で必要不可欠な行為であることが理解できる。

=模範解答=

問一

人間が動物に名を与えるという行為は人間社会との関係に応じて規定される。 たとえば、人間と独立した共同体に属する鳥は、人間に使われる名前がそのまま 転用される。犬は、人間社会に従属的に組み込まれているため、人間と区別するた めに犬専用の名前の集合が用意される。牛は人間社会に組み込まれているが、犬ほ ど主体とみなされないので見た目の特徴から命名される。競走馬は個体識別が重要 なので血糖にもとづき厳密に命名される。 このように、人間の思考と行動が帰属する社会の構造によって規定されるとする この構造主義の立場は、人間の絶対的な自由を主張する実存主義と対立する。

問二

我々と対象との関わり方は、名付け方によって大きく異なる。 我々がある犬を見た時、その犬と自分が直接的な関係を取り結ばないのであれ ば、その犬との関係は種としての犬として以上のものではない。しかし、その犬を 「ハチ」と名付けるならば、我々は名付けるという行為を通じて「ハチ」をより深 い関係を結びうる相手とみなすことができる。 ここで、命名行為が名付けられる側の持つ絶対的な自由を前にすると虚構になる のか否かについて考えたい。 我々は、命名するという行為を通じて、相手との深い関係を結ぶことができる。 一方で、命名しない場合には、あくまでも対象を対象としてしか認識できない。 このように、我々は命名するという行為を通じてしか、相手との深い関係を結ぶ ことができないのだから、命名行為には関係を切り結ぶ上での意義がある。 このように考えた時、命名行為はたんなる虚構ではなく、対象を個的なものとし て理解する上で必要不可欠な行為であることが理解できる。

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