- 議論の整理
あらゆる格闘技の中でレスリングほど長い歴史を持つものは存在しないのではないだろうか。ナイル河畔のベニハッサンの墓壁にその痕跡が見られるように、レスリングの始まりは紀元前約2000年の古代エジプトであると言われている。古代オリンピックにおいても主要種目として数えられ、そこから現在に至るまで多くの人々に感動を与えてきた。道具や道着を必要としないレスリングにはプリミティブな魅力があり、人間のもつ動物としての本能を引き出すスポーツとみなすことが出来る。
- 問題発見
己の肉体のみで戦うシンプルな競技であるという特徴は、競技者が自らの肉体駆動を意識的に捉えやすいという特性と関連すると私は考える。すなわち、レスリングは他のスポーツと比べて、「身体を動かす感覚」を掴みやすいのである。これを小学校教育の場に取り入れることで、基礎的な身体能力の向上に貢献できるのではないだろうか。しかしながら、レスリングのレクリエーションとしての側面に注目した研究はまだまだ少ないといえる。
- 論証
レスリングを健康増進の為の運動として捉えたとき、連続するエアロビック的な動きの合間に無酸素運動である技の発揮がなされるという複合的なトレーニングとしての活用が考えられる。また対人競技であるという点から、ダンスなどからは得ることのできないレジスタンストレーニングとしての要素も持っている。このようなレスリングが人間の身体にもたらす効果を科学的に立証することを試みたい。
- 結論
近年のオリンピックでの成績を鑑みると日本のレスリングの競技力は世界的に見てもトップレベルだと言え、国民のレスリング熱は高まっている。しかしながら、観るスポーツとしてではなく、実際にやるスポーツとしての魅力は十分伝わっていないと言わざるを得ない。今後の発展の為にも、誰もが取り組むことのできるレスリングの在り方を考える必要がある。
- 結論の吟味
以上の研究を行うにあたって、競技者として数々の華々しい成績を収めながら、日本におけるレスリング指導研究の第一人者ともいえる太田教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
太田章(1999),「ベテランズ世界選手権における高齢レスリング選手の技術特性-1998年男子、女子、ベテランズ世界選手権における勝利方法の比較」『体育学研究紀要』, 31, pp.39-46
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