- 議論の整理
軟部組織モビライゼーションは筋、腱、靭帯の可動性異常から生じる疼痛に対し、低強度の圧迫を組織に加えることでその緊張と伸展性を回復させ、痛みの緩和を目指す徒手的手技治療である。先行研究によれば、非特異的腰痛に対してこのような療法が運動療法と同様の効果を示したことが報告されている。近年では、特殊なバーやスパートルを用いることで軟部組織の深部にまで圧力を加えることのできる器械支援軟部組織モビライゼーション(IASTM)が開発され、リハビリテーションへの応用が期待されている。
- 問題発見
しかしながら、現状では軟部組織モビライゼーションを臨床で活用できるだけの十分なエビデンスがない。特にIASTMに関して、器具による組織への反復的な圧迫が関節可動域の改善をもたらす一方で、身体に何らかの悪影響を及ぼす可能性はないだろうか。
- 論証
川上教授らは健康な成人を対象に、下腿後面皮膚上での5分間のIASTM実施が周辺軟部組織に与える影響を調査した。その結果、IASTMは治療部の筋肉の機械的特性や神経的特性に影響を与えることなく関節の剛性を低下させ、関節可動域の改善をもたらしたことが報告されている。そこで私は関節の剛性低下のメカニズムに注目して分析を行う必要があると考えている。
- 結論
この研究はIASTMの普及に貢献できるだけでなく、より効果的な器具開発の一助となることが期待できるという意義を持つ。また私はスポーツを趣味にしており、自身やチームメイトのコンディション管理のためにモビライゼーションの技法を学ぶことにも興味がある。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、バイオメカニクスや運動生理学に関する豊富な知識を有し、人体を対象にした生体計測技術に精通している貴研究室に所属し、川上教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
N. Ikeda, S. Otsuka, Y. Kawanishi, Y. Kawakami(2019). Effects of Instrument-assisted Soft Tissue Mobilization on Musculoskeletal Properties. Med Sci Sports Exerc. 51(10), 2166-2172
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