- 議論の整理・・・
刑法において重要な概念の一つに段階的過失というものがある。これは、過失行為の対象を直近の一つに絞る直近過失一個説と対象に語られる概念であり、同一行為者が複数の不注意によって法益を侵害した場合、どの過失が問責対象となるかを特定するために、複数の過失群がその行為者の過失の過失行為に第一行為、第二行為というようにいずれの過失もその実行行為において過失であることを認めることである。そして、この概念は今日において、過失併存説と同時に議論される概念である。
- 問題発見・・・
では、法益侵害行為について行為者の過失はどのように分析することができるだろうか。
- 論証・・・
私はこれらの問題を解決するためには、行為者の法益侵害におけるこれまでの議論に対する理解を前提とし、その中でどの様な過失が要件として認められてきたかを整理し、分析することが重要であると考える。
たとえば、刑事法学の専門家である仲道祐樹教授は①過失犯の複数行為による結果惹起における行為の特定基準は、「注意義務違反を志向する行為意思」である。②この基準によれば、段階的過失の事例群において、注意義務ごとに複数の行為が特定される場合がある。それゆえ、行為特定論としては過失併存説が妥当である。③しかし、直近過失一個説の論拠を考えた際、過失結果犯として処罰するために、複数の過失行為のうち一個を処罰すれば必要十分である場合が存在する。そのような場合として、複数の注意義務の履行が同時に行われなければならない場合(この場合は、過失行為が一個となるため、段階的過失の問題ではない)や、第1行為と第2行為の間に相互関係がある場合などが考えられると述べている。[1]
- 結論・・・
そこで、法益侵害行為における行為者の過失について、過失の実行行為を専門的に研究するため、刑事法学について専門的知識に富む貴学社会科学部の仲道祐樹教授の下で、上述の問題点を整理するべく過失のの要件について研究を深めたいと考えている。
貴学社会科学部の仲道祐樹研究会が上述の研究を進めるのに最適な研究環境との確信のもと、貴学社会科学部に入学し仲道祐樹研究会に入会することを強く希望する。
[1]仲道祐樹著『段階的過失と過失行為の特定』(早稲田大学法学会2011-03-20)
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