- 議論の整理・・・
私法の一般法たる民法は、私人間における複雑な利害関係を調整するための様々な規定を定めている。例えば、日本では、目的物が二重譲渡された場合、目的物が不動産の場合、民法第177条により登記が対抗要件となり、目的物が動産の場合、民法第178条により引き渡しが対抗要件となる。
そして、第一譲受人が対抗要件を備えていない場合であっても、第二譲受人がすでに第一譲受人が存在していることを知っていた場合、第一譲受人を保護することが望ましい場合を想定して、法解釈が試みられてきた。例えば、1965年の最高裁判例により、背信的悪意者排除論が確立したとされたが[1]、第二譲受人が第一譲受人の存在に対する背信的悪意者であると言えるか否かという基準を重視している。
- 問題発見・・・
しかし、目的物が二重譲渡された場合の法律関係を論じる際に、第一譲受人の権利について詳細に分析されたことはあまりないのではないだろうか。では、第二譲受人の主観的事情により優先する場合がある第一譲受人が持っている権利はどのような性質のものなのであろうか。
- 論証・・・
私は、これらの問いに答えるには、日本の民法が制定された背景の理解を前提として、ドイツ法やフランス法における立法や解釈論と比較する必要があると考える。例えば、第一譲受人の権利、すなわち未登記譲受人が有する権利の法的性質について、ドイツ法におけるius ad rem(物への権利)の議論を参照したうえで、意思主義と形式主義とでは、ius ad remという法的概念の理論構成を導くという結論は同じであるものの、その前提が異なると分析する研究がある[2]。
- 結論・・・
そこで、民法を専門に研究し、民法の専門家として名高い貴学法学部の大場浩之教授に師事し、上述の問題点を整理するべく物権変動について研究を深めたいと考えている。
貴学法学部の大場浩之研究会が上述の研究を進めるのに最適な研究環境との確信のもと、貴学法学部に入学し大場浩之研究会に入会することを強く希望する。
[1] 最判昭和40年12月21日民集19巻9号2221頁。
[2] 大場浩之「ius ad remの法的性質」早稲田法學94巻4号(2019年)63頁。
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