- 議論の整理
激動する現代社会の中では様々な家族問題が生じ、家族という集団の在り方が問い直されている。昨今の家族社会学研究においても、もっぱら家族問題を主要テーマとして取り扱う論考が数多くなされているが、その一方でそもそも家族という構成単位をどのように定義するのかという根本的な問題は多様化、個人化の進む社会的背景のもとに混迷を極めながらこの学問領域において常に横たわっている。これまでの日本の家族研究が明らかにしてきたのは、戦前の家制度をもとにした直系家族制から核家族へのダイナミックな移行ではあるが、この核家族論というパラダイムすらも崩れ去った今、新たな概念の模索が必要とされている。
- 問題発見
これまで家族社会学は、民俗学や歴史学など他の学問領域と連携を図りながら家族という集団を研究してきた。しかし、社会学の細分化と家族問題の複雑化にしたがって、家族というテーマはこの分野に固有のものではなくなった。家族社会学の学問的アイデンティティを再発見する為にも、根本に立ち返って現代社会における家族をどう定義するのかを考えるべきではないだろうか。
- 論証
論考を進めるにあたっては、これまでになされた同様の議論を検討する必要がある。池岡教授は核家族に満たない「小さな世帯」の増加に関する論文において、50年前に交わされた「核家族論争」にその論点の原型を見出している。さらに核家族論反対派の山室周平の論考が、日本の家族社会学の創始者である戸田貞三のいう「非家族的生活者」に関する論考と重なりあうことを指摘している。従って、まずは戸田の家族研究に焦点を当てて文献調査を行いたい。
- 結論
家族集団の誤った方向性への定義づけは、本来社会保障制度の責任に帰すべき問題を家族問題として取り扱ってしまうおそれがある。本研究は、より合理的かつ実証的な家族の定義を行うことで家族社会学の発展に貢献できると考えている。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、現在の日本の家族社会学研究の第一線で活躍し、多くの論文を執筆している池岡教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
池岡義孝(2017)「家族社会学における「小さな世帯」」『社会保障研究』 2(1), 77-89
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