- 議論の整理
超高齢化社会を迎えたわが国にあっては介護職従事者の必要性が増している一方で、その離職率は近年増加の一途を辿っている。その一因は、介護職従事者自身のストレスケアが不十分である為に、長期的な介護作業によって健康状態が悪化していくという事態が起こるからであるといえる。緩和医療学は重い病を抱える患者やその周囲の人間の身体と精神のケアを目指す学問領域であるが、医療の受け手にばかり焦点を当てた研究ではこのような事態を改善することはできない。緩和医療の担い手のケアをも取り入れることで持続的な緩和医療の実践が可能となるのである。
- 問題発見
当該領域において、小野教授らは障害を抱える高齢者へのサービスを行う介護従事者の心的ストレスに関して、労働中に生じる人間間の感情対立によって彼らが受けるストレスが健康や仕事への満足度と関連しているのかどうかを実際に聞き取り調査によって分析している。そこで得られた結果から、感情労働の比率が大きいほど、健康状態や仕事への満足度が低下していくということが示唆されている。そこで重要となるのが、感情労働を組織的に支援するプログラムの存在である。このプログラムをどのように設定すれば良い効果が得られるのだろうか。
- 論証
わが国は他の先進国と比較して平均寿命が長いため、それに応じて介護を必要とする年数が長いという特徴を持つ。この介護作業の長期性によるストレスの積み重ねが最終的に健康状態へのダメージを引き起こしていると推察される。従って、介護職従事者が一つの現場にのみ縛られず、柔軟に職場を変えていけるような環境を作っていくことが肝要であると考える。その為には、ソーシャルワーカーとの連携が不可欠であるといえる。
- 結論
この研究が、介護職従事者のストレスケアをも含めた新しい介護の在り方を考えるための一助となることを期待する。
- 結論の吟味
上記研究を行うにあたって、これまで緩和医療学分野の第一線で多くの論文を執筆してきた小野教授のもとで学ぶことを強く希望する。
参考文献
Tsukamotoa, T. Abe, M. Ono. (2015). Inverse roles of emotional labour on health and job satisfaction among long-term care workers in Japan. PSYCHOLOGY HEALTH & MEDICINE. 20(7), 814-823
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