早稲田大学 人間科学部 AO入試 志望理由書 提出例(福島勲研究室向け)

  • 議論の整理

現代の芸術論では、芸術作品を審美的であるか否かという一元的な視点で捉える概念からの脱構築が行われ、芸術を人間的事象という広い枠組みにおいて分析することで、その多面的な機能を解き明かすという研究が盛んに行われている。例えば、慰霊碑や追悼施設、生物といったモニュメントは、美しさを志向しながらも死者の記憶を伝えるという記憶装置としての機能を持っているといえる。これをピエール・ノラの提唱した「記憶の場」という概念と結び付けて論じたときに、主に国家事業として設置されるモニュメントは国民国家への帰属意識を高めるという機能をも付与されていると言ってよい。

  • 問題発見

福島教授は現代フランスにおいて死者の記憶を扱う芸術作品を、国家が作り出すモニュメントと作家個人が生み出す文学作品という軸で分け、両者の記憶装置としての目的を比較している。その結果、前者において死者は聖別され、共同体の意向を反映するような意味を持った存在として登場することが多いが、後者においてはむしろ死者をめぐる言説の確定不可能性を強調することが多いことを示した。それでは、文学作品が死者の輪郭を曖昧にする目的は何なのだろうか。

  • 論証

先行研究では、主にジョルジュ・バタイユの文学作品のテクスト分析のみで完結しているが、バタイユの思想に影響を与えた人物としてニーチェやハイデガーの存在を無視することはできない。従って、彼らの著作を死者の記憶という観点から再検討してみることを考えている。

  • 結論

国家が用いる死者をめぐる言説は往々にして虚飾されやすい。死者の輪郭を曖昧にし、安易な理解から遠ざけようとする現代フランス文学の態度は、そのような欺瞞に騙されない為に現代に生きる我々が取るべき態度とも重なると考えられる。その意味で、本研究は芸術の現代的な価値を発見する研究の一翼を担うものだと考えている。

  • 結論の吟味

上記研究を行うにあたって、芸術・表象文化論分野において主にバタイユの思想を対象とした多くの論文を執筆している福島教授のもとで学ぶことを強く希望する。

参考文献

福島勲 (2016) 「至高性から人間性へ G.バタイユ著『C神父』におけるレジスタンスの裏切りと赦し」『仏語仏文学研究』 49, 459-477

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