■議論の整理論
2003年に施行された指定管理者制度によって、図書館の運営を企業やNPOに委託できるようになった。しかし、指定期間が3〜5年と短く職員の安定した雇用とサービスの維持に影響が出ることなどから導入に慎重な自治体は多い。一方、2013年にTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが指定管理者になってリニューアルオープンした佐賀県の武雄市図書館など地域内外から大きな注目を集めた事例も存在する。また、運営時間や日数の増加に繋がるなど地域住民の利便性につながる効果もある。
■問題発見
そもそも、地域住民の知的欲求を満たすための場所であるはずの図書館が、民営化されることは相応しいのだろうか。全国に先立って2010年から指定管理者制度を活用していた山口県の下関市立図書館は、リファレンスサービスの質の低下などを理由に5年間の契約期間満了を待たずに直営に戻った。他にも、貸出数を増やすためにむやみに借りさせるイベントを行ったり、管理企業の関連会社社員に貸出を呼びかけたりしていたことが問題になった。そのように営利企業が実績を追及することと、知的な営みを支援することとが両立することは可能なのか。
■論証
図書館司書は高い専門性が要求される職である。自館に所蔵されているものはもちろん、所蔵されていないものについても知識が無くてはいけない。リファレンスサービスにおいては地域住民から要望を適切に聞き出すことも求められ、その地域に関する知識も不可欠である。しかし、指定管理者制度という長くても5年の契約に基づいた運営がおこなれていれば長期的な知識形成が難しい。また、貸出数の多さとリファレンスサービスの質が相関するものだとは思えない。
■結論
図書館という公共施設のあり方を再考し、どのようにその仕組みと質を担保していくのか研究していきたい。
■結論の吟味
以上の理由から、貴学教育学部に入学し、雪嶋宏一教授の研究会に入会することを強く希望する。
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