早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(工藤元男ゼミ向け)

■議論の整理

私たちは暦とともに生きている。正月を迎え、立春をすぎ、夏至にいたって盆を迎える。簡単にイメージしてみても、時の移り変わりは何月何日と日付で考えるよりも暦で体験し、季節のにおいとともに私たちは時を過ごしている。

 

■問題発見

上記の暦は具注暦と呼ばれ、日本で用いられた暦の方法だ。しかし、暦は国家が統制して作る一方で、その季節を体感する土着的な感覚とともに多くの暦が変異して生成しているともいえる。季節の体感は場所によってことなるはずだし、その体感にあった言葉を人は想像する能力を有しているだろう。ではなぜ、暦は国家が策定するのか。

 

■論証

暦は自然の流れを体感する要素だとしたら、各地方で異なるはずのものを国家で策定するメリットは何か。それはひとえに共同体を創出する作業に他ならない。私たちは、自分がいる場所と他にいる場所の人が同じことを体験していると感じられることで、同じ共同体と一員だと感じることでメンバーシップを保っている。私が日本人であるのは、別の地域の人も同じように桜をめでるはずだと思い込むことで成立しているのだ。

 

■結論

具注暦を研究している論文によれば、上記のような観点ではないにせよ、同じことを指す暦が多様な呼び方に変異してしまうさまを分析して見せている。「暦譜は毎年国家が中央で作成するもので、それが地方に伝えられる過程でさまざまな形式のものに編成され、それぞれの用途に供された。」としながらも、その過程で発生したものを中央が拒否していくさまも説明されている。

 

■結論の吟味

暦という私たちの生活に広く浸透しているものが、どのようなメカニズムで生成し、国家が策定しているかを考えることは、微細な粒子となった要因が私たちを駆動するシステムを解明することになるかもしれない重要な研究対象だと私は考える。民衆史といってもよいレベルの歴史を紐解くことで、大きな言説分析まで広げられるように、暦やライフスタイルから描ける権力の作用もあるだろう。上記のような民衆史・制度史を研究してみたいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1工藤元男「具注暦の淵源――「日書」「視日」「質日」の閒――」『東洋史研究』72(2) 2013 東洋史研究会

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