早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(瀬戸直彦ゼミ向け)

■議論の整理

12世紀に活躍したジラウト・デ・ボルネーユは南フランスの吟遊詩人であるトルバドゥールの師匠であるといわれるほど、活躍した吟遊詩人である。彼の吟遊詩は、難解で理屈っぽく抽象的なオック語の詩だと評され、現在で評価される向きは少ないが、当時のトルバドゥール界では尊敬された人物だった。

 

■問題発見

多くのジラウト研究では、一語一語に対する注釈を行う本文研究が盛んだが、その語句に対する同定作業に難をきたしている。この語はどのような固有の現実と対応しているか不透明だからだ。多くの吟遊詩は叙事詩的な現実を語る、語り部たちの歴史伝達によるが、ジラウトの詩はそのような作業を拒み続けているようにみえるだろう※1。

 

■論証

ジラウトの吟遊詩は、通常の語句との同定作業にあるのではなく、イメージの連鎖や、語句と語句のアナロジー関係を想起させる豊富なテクストとして読むべきではないかという指摘がある。中世の詩が、言葉に敏感で、表象機能を鋭敏にさせていく過程にこの作家を位置づけられないだろうか。ちょうどフーコーが古典時代を表象主義の体系と呼んだのと同じように。

 

■結論

多くの語り部たちの織り成す詩は、物語を紡ぎ、その抑揚の中で表象機能を強める働きをする。彼らが王宮に出入りし重宝されたのは、歴史を伝えるためだった。しかし、語るという行為には、そこから漏れ出す表象を逸脱する身体的な表現を伴う。物語に収まらない表象の逸脱がイメージの連鎖とともに生み出す言葉の炸裂として一種の結晶体になるかもしれない。

 

■結論の吟味

日本では、平家物語などの歴史物語を、その語りとともに紡ぎだされる表象の効果には目をつむりながら私たちは学校教育の中で受容する。しかし、それは語られることで表象が増幅する作用をともなうものだ。歴史を語る、という行為ではない吟遊詩を取り扱ってみることは、新しい歴史の語り方を提起するきっかけになるかもしれない。以上のような観点から、古典の吟遊詩を掘り起こし、研究してみたいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1瀬戸直彦「「トルバドゥールの師匠」ジラウト・デ・ボルネーユの黙説法(作品45)」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』62 2017

 

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