早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(松園伸ゼミ向け)

■議論の整理

イギリスの歴史は他国勢力といかに争って覇権を勝ち取ったかといういわゆる「帝国研究」がある一方※1で、一筋縄ではいかない部分がある。いうまでもなく、イギリスはイングランドが優勢を究めて来た歴史があるものの、いわゆる属州となってきた他地域とのせめぎあいによって発展してきた側面があるからだ。

 

■問題の発見

イギリスと言えばイングランドであり、イングランドの歴史ととらえる向きもあるかもしれないが、18世紀に属州として扱われてきたスコットランドが自分たちの利権を争い、イギリスに打ち勝ってきた反政府運動が挙げられる※2。

日本でも、単一民族であるという神話は根強いものの、実はアイヌや琉球王国など、多民族国家であった視点は大切だ。むしろ、他民族との共生と、その抑圧の間で、国は歴史を歩んでおり、マイノリティに目を向けることは重要な歴史的叙述となるだろう。

 

■論証

イギリスにおいては、それまではイングランドに親和的な議員だけがスコットランド勢の議員として選出されるなど、露骨な親イングランド派が根強かったが、自分たちの生産物に過度な増税をかけるなどされた結果、反イングランド派が議席を奪うなどと言うこともあったことが知られている。この革命的な事件がどのような経緯で、血を流すことなく成し遂げられたのかを探ることが、歴史の役目だと私は考える。

 

■結論

革命と言えば、血が流れることが常だが、イギリスは血が流れない革命も歴史上多数存在する国だ。その革命がどのような過程で起こり、どのような側面がその革命を成就させたのか。このことを考えることは、人が議会政治ひいとは民主政治をおこなっていくうえで重要な視点を与えてくれるだろう。

 

■結論の吟味

昨今ヘイトスピーチと呼ばれるものが多くある。グローバリゼーションの広がりに反比例して、人々は排外的になり、他者を抑圧することで自己を守ろうと躍起になっている。そのような時に、人はどうすれば無血革命を起こすことができるか。関税を多くかけられ、自由な経済活動を制限されても自分たちの権利を守るにはどうしたらよいか。そのようなことをイギリスの歴史をモデルに考えてみたいと感じ、貴学での研究に邁進したいと考え、入学を強く希望する。

 

※1松園伸「イギリス「帝国」研究の現在――近代初期Early Modernの視点から――」『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第4分冊 (56)2010

※2松園伸「18世紀スコットランドとその政治社会――1732-35年におけるスコットランド野党勢力結成を手がかりとして――」『イギリス哲学研究』30(0) 2007

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