早稲田大学 文学部 AO入試 志望理由書 提出例(大久保良峻ゼミ向け)

■議論の整理

天台宗を日本に根付かせたのは最澄だが、そこから民衆に根付くには様々な試行錯誤があった。最澄から円仁へ、円仁から安然へ、これらの系譜を経て見えてくるものがあり、決して歴史の教科書に載っている最澄だけが現代の天台密教を築いたのではない。

 

■問題発見

最澄をはじめとする天台宗は、入唐した最澄が日本に戻ってきてから根づかせた教学だが、日本に定着させるには、大きな仕様変更がされている。定着させていった人物として安然が有名だが、その間にいる円仁の考えはどのようなものだったのか。

 

■論証

成仏思想に限って考えてみると、安然は『教時問答』巻一で「理は常平等であり、事は常差別であって、常平等はそのまま常差別、常差別はそのまま常平等である」と述べている。これは、起きている事実は人々にそれぞれ平等(=常平等)に起こっているが、それをどうとらえているかは人それぞれ(=常差別)だ、ということだが、この天台教学における衆生のとらえ方には、ある種の突拍子のなさが表れている。

 

■結論

常平等、常差別の考え方は天台教学が民衆に受け入れられる衆生成仏の思想として定着していくが、この考えは自明のことではなく、最澄の教えを円仁が解釈しなおした功績が実は大きい。よりよい成仏をすることが仏教の目的であるとすれば、つねにすでにそれはなされているはずであり(=常平等)、人々によって成仏しているかどうかのとらえ方が異なるだけだ(=常差別)ということになる。このある種のパラドックスを教義の解明、他原典との照合により研究して、定着させたのが円仁の功績だった※1。

 

■結論の吟味

わたしたちが今享受している仏教の教学にはこのような、適切な解釈を施し、それを民衆に定着している立役者が存在する。安然ではなく、円仁の功績もここでは十分に評価されなければならない。このように、教学の定着の陰にいる僧正たちの痕跡をたどってみたいと考え、貴学への入学を希望する。

 

※1大久保良峻「最澄から安然へ――初期日本天台の根本的展開――」『佛教学セミナー』(103)大谷大学佛教会 2016

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