2020年 上智大学カトリック高等学校対象特別入学試験 法学部・国際関係法学科 小論文 解答例

議論の整理(要約)

この文章では、夏目漱石が影響を受けた自己本位について論じている。自己本位とは、自分の心に対して忠実であることであり、利己主義という意味ではない。漱石は、英文学を批評する際、西洋の大家の批評に依存することに不自然さを感じていた。そのようなとき、西洋の大家が批評の世界に大きな影響を与えているとしても、いちばん重んじるべきは自分の意見であることを、漱石は自己本位という言葉から学んだのである。

問題発見

漱石の自己本位という考え方は、私たちの生活における消費活動においても、想起されるものではないだろうか。自己本位を意識しているかどうかで、マーケティングの手法が変わってくるのではないだろうか。

論証

大量生産・大量消費の時代では、消費者はマス=大衆として捉えられ、個人ではなくひとつのかたまりとして認識されている。そのため、何らかの商品を売り出そうとするとき、漱石が言うような自己本位に基づく判断は想定されていない。できるだけ多くの人の興味をひくために、テレビなどで大々的に宣伝し、ひとかたまりの大衆が同一の消費行動をとることを期待している。

しかしながらそれは、テレビのようなマスメディアが力を持っていたから可能な方法だった。現在は、若者を中心に娯楽の軸が、テレビからユーチューブに移行している。ユーチューブは、チャンネル数が無限にあり、それぞれで視聴するチャンネルを決められる。そのため、以前のようにマスではなく、個人が自己本位で行動する流れに変わってきている。そこで、巨大メディアの影響力ではなく、個々の自己本位による行動パターンを踏まえて、マーケティングの手法を考える時代になっている。

結論

以上のことから自己本位とは、マスメディアの力関係が変わってきている現在の、新しいマーケティングの手法を考えるうえで想起される考え方だと言える。

吟味

とはいえ、ユーチューブもひとつのマスメディアとしてなりうる可能性を秘めている。そのため、企業とインフルエンサーのタイアップの影響力などをもっと調べる必要がある。(855文字)

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