■ 議論の整理
15世紀ドイツの神秘主義哲学者、ニコラウス・クザーヌスが生きた時代は、中世から近世への転換期であった。クザーヌスは教会法学者として出発し、ルネッサンス運動の知と出会い、東西両教会の合同、枢機卿や司教として教会・修道院改革に奔走し、キリスト教、ユダヤ教。イスラーム教の調停を唱え、どの宗派や学派にも属することなく、独自の思想を追求した。さらには、哲学や神学にとどまらず、数学や自然学などにおいても功績を残している。クザーヌスの思想の魅力は、それらの知が独立してバラバラにあるのではなく、全てまとまるある調和として統一されていることにあり、現在でも様々な角度から研究・考察されている。
■ 問題発見
このような時代背景から考えると、クザーヌスの役割は中世的精神から近世・近代的精神への橋渡しや先駆者のように捉えることも可能かもしれない。しかし、クザーヌスの思想の魅力は、とくには対立し葛藤する伝統的側面とルネッサンス的側面を併せ持つ、一人の哲学者の思想として包むこむその包容力にあるのではないだろうか。
■ 論証
歴史は直線的なものではなく、断層や亀裂、葛藤をも包摂しながら大きなうねりを生み出していくものだと考える。特に大きな断絶や葛藤を内包していた時代のクザーヌスの思想を理解していくためには、彼が提示した概念や、それに影響を与えた時代背景や議論を緻密に検証・検討していく作業が必要だと考える。
■ 結論
私は特に、当時の神学を取り巻く状況や議論の中で、クザーヌスの思想を研究していきたい。
■ 結論の吟味
そのために、貴学の哲学科でクザーヌスの思想と研究に精通している佐藤直子教授のゼミに入会することを強く希望する。また、日本でも数少ない神学部を持つ貴学の学習環境は私にとって最適であり、分野を横断して多面的に学び、議論しながら研究を進められると期待している。
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