上智大学 文学部 ドイツ文学科 編入学試験 2016年 小論文 解答例

■ 設問

以下の文章で述べられている,日本人とドイツ語圏の人間の言語行動の差違について,あなたはどう考えますか。また,日本とドイツ語圏の社会に特徴的な思考様式・行動様式の相違を,「それぞれの社会で支配的な文化の特定な要素との関連」から解明し,相互理解を促進するためには,何が必要だと思いますか。問題文を踏まえ,また日本人の心性の特徴について論じている本文中のドイツ語テキストから2箇所以上の語句を引用しながら,600字前後で論述してください。

(出典:宮内敬太郎『日独言語行動とドイツ語の諸相』,鳥影社1996,43-44頁)

 

(注:文中に引用されているドイツ文の英訳) Japanese are different. They have a lot of faces and definitely three hearts, it says. They wear a false heart on the tongue for daily use. Hidden in her chest is that reserved for family and special friends. The third heart is honest, sincere and good, but apart from them only the gods know where it beats. Silent communication is the highest level of understanding for the Japanese people.

 

■ 答案構成

議論の整理→ 日独両言語文化の相対化には意味がない

問題発見→ 相互理解を深める手段とは?

論証→ 日本人からの歩み寄りが必要である

解決策or結論→ 相手次第で言語表現を切り替える工夫が欲しい

解決策or結論の吟味→ 対話の目的を見据えたい

 

■ 答案

議論の整理→ 日独両言語文化の相対化には意味がない

言葉が交わされる状況の多様性を一切無視した,日独の言語文化の相対化には違和感を禁じ得ない。日本社会の言語文化は,対話の目的に応じて言語表現を巧みに使い分けるところに特徴がある。たとえば対話の目的が合意形成にあるならばドイツ社会と同程度には個々の意見を言葉にする一方,真意の開示なくとも対話の目的が達成できるならば真意を語ることはない。自己表現に徹するドイツの言語文化と比べれば,確かに” Japaner sind anders”といえるだろうが,日本の言語文化がドイツのそれに比べて劣っていることは断じてない。

問題発見→ 相互理解を深める手段とは?

それでは,異なる言語文化をもつ日独両国人が相互理解を深めるためには何が必要だろうか。

論証→ 日本人からの歩み寄りが必要である

意思疎通の成功体験を個々のレベルで積み重ねていけば,次第に社会全体の相互理解が深まるだろう。しかし,自己表現を是とする文化に浸ったドイツ人が”schweigende Kommunikation”を習得するには難度が高い。すると,歩み寄ることができるのは日本人の側に限られる。そこで,こちらが話し手の場合には,出来る限り意識的に言葉を紡ぐよう心掛ける。逆に,こちらが聞き手の場合には,言葉の渦に溺れることのないよう集中力を高めて傾聴する。ドイツの言語文化の特性を踏まえて,コミュニケーションの目的を果たしていく努力が日本人に求められよう。

解決策or結論→ 相手次第で言語表現を切り替える工夫が欲しい

すなわち,日独それぞれの社会に特徴的な言語文化の相違点を常に意識し,季節に合わせて衣替えをするかのように,相手の言語文化に合わせて言語表現を切り替えることが重要である。

解決策or結論の吟味→ 対話の目的を見据えたい

対話の目的を見失うことなく,理性的かつ互恵的な相互理解に努めたい。

 

言葉が交わされる状況の多様性を一切無視した,日独の言語文化の相対化には違和感を禁じ得ない。日本社会の言語文化は,対話の目的に応じて言語表現を巧みに使い分けるところに特徴がある。たとえば対話の目的が合意形成にあるならばドイツ社会と同程度には個々の意見を言葉にする一方,真意の開示なくとも対話の目的が達成できるならば真意を語ることはない。自己表現に徹するドイツの言語文化と比べれば,確かに” Japaner sind anders”といえるだろうが,日本の言語文化がドイツのそれに比べて劣っていることは断じてない。

それでは,異なる言語文化をもつ日独両国人が相互理解を深めるためには何が必要だろうか。

意思疎通の成功体験を個々のレベルで積み重ねていけば,次第に社会全体の相互理解が深まるだろう。しかし,自己表現を是とする文化に浸ったドイツ人が”schweigende Kommunikation”を習得するには難度が高い。すると,歩み寄ることができるのは日本人の側に限られる。そこで,こちらが話し手の場合には,出来る限り意識的に言葉を紡ぐよう心掛ける。逆に,こちらが聞き手の場合には,言葉の渦に溺れることのないよう集中力を高めて傾聴する。ドイツの言語文化の特性を踏まえて,コミュニケーションの目的を果たしていく努力が日本人に求められよう。

すなわち,日独それぞれの社会に特徴的な言語文化の相違点を常に意識し,季節に合わせて衣替えをするかのように,相手の言語文化に合わせて言語表現を切り替えることが重要である。

対話の目的を見失うことなく,理性的かつ互恵的な相互理解に努めたい。(639字)

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