■ 議論の整理
日本におけるセクシュアルマイノリティの割合は13人に1人とも言われる。近年ではセクシュアルマイノリテのメディア露出も増え、その存在についての理解は10年~20年前に比べて格段に進んだと思われる。
しかし、セクシュアルマイノリティが生きやすい状況になったかといえば、必ずしもそうではない。社会のあらゆる制度が基本的にはセクシュアルマジョリティにとっての「当たり前」に沿って設計された「特権」であり、そのことは社会の中で不問とされてきたからである。
■ 問題発見
自分にとっての「当たり前」が誰にとっても平等な当たり前ではなく、誰かの苦痛を見過ごすことで成り立っているという事実に向き合うことは容易ではない。マイノリティの訴えを聞いてもなお、自分が強者の側にいて、特権を享受していることに気づくことは難しい。
では、マジョリティが特権に気づき、不平等な社会的状況を自らの課題として向き合うためには何が必要か。
■ 論証
セクシュアルマイノリティを対象としたサポートの充実は当然必要であるが、マジョリティに特権の気づきを促す教育の充実もそれと同じくらい重要で緊急な課題である※。私はさらに、マジョリティは自分が持つ特権やパワーを自分のためだけではなく、多様性社会の実現のため行使するよう意識化することが重要だと考える。
■ 結論
上記の問題意識を深めて追及するために、マジョリティ特権を自覚するための理論や知的ツールを学ぶとともに、自らが女性、アフリカン・アメリカン、少数民族、トランス・ジェンダーといったマイノリティ性を持つ知識人の語りに注目してみたい。マイノリティであり、知的・文化的なパワーを獲得た人たちが、その知恵や力をどんな目的でどのように使おうとしているか、その著作やインタビューを通して明らかにしたい。
■ 結論の吟味
上智大学の多様性に開かれた学習環境は、多様性を研究課題とする私にとって最適な学習環境であると確信している。特に、マジョリティの行動変容についてアメリカ地域研究や社会心理学などの分野から研究を重ねてきた出口真紀子教授のゼミに入会することを強く希望する。
ダイアン・J・グッドマン著, 出口真紀子監訳 (2017) 『真のダイバーシティをめざして――特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正教育』 上智大学出版
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