■ 議論の整理・・・
鉄道車内の電光揭示板は,乗客に向けた情報発信の場である。日本においては,通常は日本語と英語の二か国語で案内されることが多いが,特に空港連絡鉄道など外国人の利用が多い路線・車両の場合,中国語や韓国語などの他言語表示に対応しているものも存在する。それに対し,国境を跨ぐヨーロッパの鉄道網では,揭示される言語が走行域内によって切り替えられる。そこに提示される情報内容にも多様な要素が見られ,日本の鉄道車内における発信情報要素とは大きく異なる。
■ 問題発見・・・
では,日本とドイツの鉄道内の電光掲示板の表示内容には,どのような違いがあるのか。
■ 論証・・・
日本とドイツの鉄道の表示内容の共通点としてあげられるのは,行き先を示す情報案内において,行き先,途中の停車駅名,走行時速情報等が表示されることである。この行き先を示す情報伝達内容には,おもに3種類の形式が見られる。途中の停車駅をすべて一度に並記する表示形式,直近の停車駅名複数を順次表示する形式,そして次の駅の停車駅名のみを表示する形式が使われている。また,相違点としては,車内の携帯電話使用に関する注意喚起の方法が挙げられる。日本では当たり前になっている携帯電話使用に関する表示だが,ドイツの鉄道車両においては,携帯電話(通話)使用を許可する車両と許可しない車両が区別されている。車内の壁面にステッカ一で表示された携帯電話使用可能を示すアイコンおよびWiFi使用可能を示すアイコンで確認できるようになっており,このアイコンに従って,携帯電話の使用,不使用の乗客が別れて乗車するため,あえて電光褐示板や音声アナウンスによる発信は行われていない。また,ドイツの鉄道では,日本のようにグリーン車という考えがなく,2人掛けの座席上部に帯状の電子掲示板が備え付けられており,各座席のアイコン横には,どの駅からどこの駅まで予約済みであるかが表示されている。つまり,その区間以外は自由席扱いとなり,何も示されていない場合は,終点まで自由席として使用できることになっている(*1)。
■ 結論・・・
そこで,日本とヨーロッパの鉄道における表示,車内・駅構内でのアナウンスの言語表現の違いを分析したいと考えている。
■ 結論の吟味・・・
上述の研究を進めるため,貴学SFCに入学し,JR東日本とドイツ鉄道の比較やヨーロッパの文化についての研究している藁谷郁美教授の研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 藁谷郁美.“鉄道と言語 車内電光掲示板の文字データにみるドイツ語表現とその分析:ベルリン市内事例の一検討”,交通運輸情報プロジェクトレビュー, Vol.23, pp.34-37, 2014
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