慶應SFC 環境情報学部 AO入試 志望理由書 提出例(青山敦研究会向け)

 議論の整理・・・ 

 特殊な訓練を受けることなく一般人が宇宙旅行に行ける時代がすぐそこまで来ている。ところが,宇宙空間は地上とは全く異なる環境であり,特に微小重力環境下での生体現象への対応が必要となる。なかでも,吐気・嘔吐・めまい・ふらつきを引き起こす宇宙酔い(space motion sickness)は,微小重力環境到達後1時間以内に発症し,その後34日間持続することが知られている。また現在でも初回飛行の宇宙飛行士の73%が飛行初期の23日間宇宙酔いに悩まされるとの報告もある(*1)。つまり微小重力環境に短期間滞在する場合,宇宙酔い対策が最重要課題となる。宇宙酔い発症の機序については,体液移動説,耳石機能非対称説,感覚混乱説,otolith tilt-translation reinterpretationOTTR)説(注:耳石器における傾斜情報と移動情報の再解釈に伴う混乱を原因とする説)の4つの説が代表的である(*2)(*7)。地球への帰還時にも,宇宙酔いの逆反応として宇宙酔いと同症状の地球酔いが生じることから,重力加速度の受容器である耳石器が宇宙酔い発症に関与している可能性が高い。

 

 問題発見・・・ 

 しかし,宇宙酔いは三半規管や耳石器だけで起こり得るものではない。なぜなら,宇宙空間滞在中,同僚の宇宙飛行士が天地逆転状態で浮遊しているのを見たときや,宇宙船の天窓から地球を見たとき,宇宙船内で馴染みのない場所に移動したときにも,宇宙酔いの症状が誘発されることが報告されているからである。この事実からも,視覚情報が宇宙酔いに関与していることは明らかである。

 

 論証・・・ 

 そこで,「目からの視覚情報と,三半規管や耳石器からの体位・変位・加速度情報との混乱(再解釈エラー)が宇宙酔い発症の原因の一つである」との仮説を立て,これを臨床的アプローチで検証したい。

 

 結論・・・ 

 そこで脳機能計測や脳情報解析を専門とする貴学環境情報学部の青山敦准教授に師事し,非浸潤脳計測技術を学ぶとともに,さらにこれを応用することで宇宙酔い発症機序の研究,およびその予防法の研究に携わりたいと考えている。

 

 結論の吟味・・・ 

 青山敦准教授は,脳磁界計測法(MEG)や磁気共鳴画像法(MRI)などを用いて脳情報の計測と数理解析を行っている,日本を代表する研究者である(*8)。青山敦研究会に入会することで上述の仮説に対する検証が可能だと考え,私は慶應義塾大学環境情報学部への入学,および青山敦研究会に入会することを強く希望する。

 

 

 

(*1) 聖マリアンナ医科大学.宇宙酔い< https://www.marianna-u.ac.jp/ent/office/16004/016006.html >

(*2) Jennings RT. “Managing space motion sickness”, J Vestib Res 8, pp.67-70, 1998

(*3) Simanonok KE, Charles JB. “Space sickness and fluid shifts: a hypothesis”, J Clin Pharmacol 34, pp.652-663, 1994

(*4) Reason JT. “Motion sickness adaptation : a neural mismatch model”, J R Soc Med 71, pp.819-829, 1978

(*5) Oman CM. “Motion sickness: a synthesis and evaluation of the sensory conflict theory”, Can J Physiol Pharmaco1 68, pp.294-303, 1990

(*6) Von Baumgarten RJ, Wetzig J, Vogel H, Kass JR. “Static and Dynamic mechanisms of space vestibular malaise”, Physiologist 25, pp.533-536, 1982

(*7) Parker DE, Money KE. ”Otolith tilt-translation reinterpretation following prolonged weightlessness implications for preflight training”, Aviat Space Environ Med 56, pp.601-606, 1985

(*8) 青山敦.脳磁場計測による他感覚統合機能の解明-特殊空間への順応を用いた新アプローチ,計測と制御,Vol.56, No.11pp.880-883, 2017

 

 

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