■ 議論の整理・・・
近年の日本の終末期医療において,多くの人々が自宅での療養を望みながら,様々な理由によって,その望みが叶えられていない現状がある。在宅緩和ケアやターミナルケアは,病気で余命わずかの人をはじめ,認知症や老衰の人たちが,人生の残り時間を自分らしく過ごし,満足して最期を迎えられるようにすることが目的とされる為,それを支える家族や医療従事者,地域の協力が不可欠とされる。しかし,その環境が整わず,望みながらも実現が困難である理由として,介護をする家族の負担が大きいことや容体が急変した時の対応への不安,往診を請け負うかかりつけ医師の不在などが上位にあげられている。また,病気により余命を宣告された人の心理状態は非常に不安定で,「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」という五段階のプロセスをたどると言われている。特に「否認」から「抑うつ」までの間には「なぜ自分が」という怒りや,避けられない死への抵抗,恐怖,不安などが言動となって表れることが多く,接する家族にとっても苦しい時期となる。その為,このプロセスがあることをあらかじめ知り,理解し,支えることが重要であるといわれている。
■ 問題発見・・・
では,在宅緩和ケアをする際,本人や家族を支えるために医療従事者や地域に必要なものは何か。
■ 論証・・・
在宅緩和ケアを行う場合,家族の負担が格段に大きくなるため,周りに頼れる体制が必要となる。それはまず,地域医療において医師や看護師が緩和ケアに対しての十分な知識やスキルがあり,往診でも適切な治療を受けられることが重要となる。これについては,貴学環境情報学部の秋山美紀教授が医療機関を対象に在宅緩和ケアに対する調査を実施し,地域診療所に勤める医師の緩和ケアに対する知識の充実とそれをサポートする病院側の専門医との連携体制の構築が重要であると述べている(*1)。また地域においても,家族の負担を軽減するために介護サービスや訪問看護体制の充実が必要であろう。
■ 結論・・・
そこで,私は在宅緩和ケアにおける医療機関とそれぞれの地域サービスの現状を調査,理解し,実際に患者を支える家族が在宅看護に対する十分な知識を得て,在宅緩和ケアを選択できる体制の構築を考えていきたい。
■ 結論の吟味・・・
そのため,貴学のSFCに入学し,ヘルスコミュニケーションを専門に研究している秋山美紀教授の研究会に入会することを強く希望する。
(*1) 秋山美紀,的場元弘,武林亭,中目千之,松原要一.“地域診療所医師の在宅緩和ケアに関する意識調査”,Palliative Care Research,Vol.4, No.2, pp.112-122, 2009
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