慶應SFC 環境情報学部 AO入試 志望理由書 提出例(中浜優子研究会向け)

■ 議論の整理・・・

物語を構築する際の「視点」の置き方については,従来の研究によると,日本語学習者は複数の「視点」から描写する傾向があるのに対して,日本語母語話者は一つの「視点」から事柄を描写する傾向があると言われている。つまり,日本語学習者は話の中で起こった事象を中心にストーリーを描写するのに対して,日本語母語話者は特定の登場人物を中心に話を捉えることになる。しかし,これらの研究では限られた構文的手がかりしか用いていなかったことから,中立的な描写であると区分されてしまったものもある為,もっと多くの構文的手がかりを加えて検証すべきである。

 

■ 問題発見・・・

では,他の構文的手がかりを加えると,両者の「視点」の置き方や物語の構築法に違いはあるといえるだろうか。

 

■ 論証・・・

従来の研究では,「視点」を表す構文手がかりとして,授受表現とヴォイスが用いられていた。そこでさらに,移動動詞,主観表現,準感情表現,感情表現を加えたうえで,物語構築における「視点」の置き方を再検証する。すると,登場人物の中の「誰」を中心に置いて物語を展開するかという点で見ると,従来の研究結果とは異なり,日本語学習者が,日本語母語話者と同じように導入から終結まで一人の登場人物を中心に置いて物語を展開していることが明らかとなった。また,日本語学習者は感情を表す表現をより多く使用することも分かった。その他,両者の差が顕著に表れたのは,日本語学習者が,始めから登場人物の心情を表現しながら状況を描写し,物語を展開していく傾向を見せたのに対して,日本語母語話者は,話の導入・展開部分をヴォイス,授受表現,移動動詞を中心に,同一視点の中心から描写し,最後の局面で心情を集結して描写していることにあった。このように,構文的手がかりを二項目から六項目に増やしたことで,従来の研究では区分できなかった両者の違いが明らかになった。

 

■ 結論・・・

そこで私は,これらの「視点」の置き方の違いを踏まえて,日本語学習者がより的確に日本語もしくは日本文化を理解するためのツールを構築したいと考えている。

 

■ 結論の吟味・・・

貴学環境情報学部の中浜優子教授は,第二言語としての日本語の習得について研究実績が多く,私の研究に最適な環境が整っている。そこで貴学SFCに入学し,ぜひとも中浜優子研究会に入会することを強く希望する。

 

 

(*1) 中浜優子,栗原由華.“日本語の物語構築:視点を判断する構文的手がかりの再考”,言語文化論集,Vol.27, No.2, pp.97-107, 2006

(*2) 栗原由華,中浜優子.“ストーリー構築における視点:日本語母語話者と上級学習者との比較から”,      < https://online.sfsu.edu/icplj/conference/ICPLJ6%20Papers/Kurihara%20&%20Nakahama.pdf >

 

 

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