2010年度FIT入試第2次選考概要(政治学科)
3.グループ討論の概要 •テーマ:『国会議員における女性比率割り当て制度について、日本でもこのような制度を導入すべきか』『日本の人口減少傾向にどのように対応すべきか』
*グループ討論の順番によって上記テーマのどちらかが指定される。
- 司会者の有無:監督者は、進行とタイムキーピングのみを行い、受験生の自由な議論にまかせる。
- 討論時間:60分
4.発表と質疑応答の概要 •発表と質疑応答時間の配分:各15分程度、合計30分
*自分がこれまで行ってきた活動や入学後の目標と構想を自由に表現する。
※グループ討論と発表と質疑応答の順番:午後のグループ討論と発表と質疑応答は、受験生によって順番が異なる。
■想定される議論(その1)「国会議員における女性比率割り当て制度について、日本でもこのような制度を導入すべきか」
それでは、「国会議員における女性比率割り当て制度について、日本でもこのような制度を導入すべきか」について議論したいと思います。
《女性比率割り当て制度は民主主義の原則にかなう制度であるか?》
主権者である国民の代表である国会議員に対して、女性の比率の割り当て制度を導入する場合は、2つの考え方がありうるのではないかと考えられます。1つ目は、「世の中の人間の半数は女性であるから、共同体の女性の割合に応じて、女性の登用を予め割り当てすることが民主主義の原則にかなっている」とする考え方です。女性の登用を選挙結果に左右されず、あくまで人口比で行いたい場合は、このような考え方になります。2つ目は、「民主主義の原則は各人の投票によって公平に定められるべきであるから、男女混合の選挙に勝った候補者だけが国民の代表になるという仕組みを採用すべきで、女性の登用を予め割り当てることは、選挙における平等の原則に反し、逆差別となるため、民主主義の原則にかなわない」という考え方です。この考え方は、選挙によって候補者を選ぶプロセスのほうを重視する考え方であるといえそうです。この二つの考え方からも、そもそも女性比率割り当て制度自体が民主主義の考え方に沿ったものであるかどうかでさえ、議論が分かれるものであることがわかるはずです。
ただ、女性の登用を積極的に行うべきであるという考え方については、多くの方が賛成できる考え方である一方で、女性国会議員の比率を事前に割り当てするということについて、議論が分かれる理由は何でしょうか?
これは、民主主義の基に、「チャンスの平等」という考え方があることに基づいていると考えられます。そもそも国民の代表者である国会議員には、法律の被選挙権を持つ者であればだれでも立候補し、選挙に勝つことができれば誰でも国会議員になることができます。この点で、女性の登用数を予め割り当ててしまうという考え方は、男性議員と女性議員の自由競争そのものを失くしてしまおうとする考え方と言ってよいかもしれません。女性の登用数を予め割り当ててしまうということは、男性は男性の間で競争し、女性は女性の間で競争して、得票数の多い順に国会議員を選出しようというわけです。
しかし、その方法では、現実の世界が男女混合の状態で組織されていることと矛盾します。現代社会が男性は男性だけで競争することができ、女性は女性だけで競争することができる社会であるならば、女性の登用数を予め割り当ててしまうことにも一定の合理性があるように見えます。しかし、現実の世界では男女が混合状態で、男性と女性の間でももちろん競争原理が働いて世の中が動いている状態になっています。そのため、男性だけ、女性だけというカテゴリーで「チャンスの平等」を認めることそのものに、論理的な無理が生じていると考えることも可能です。そのため、男女混合での競争社会である現代日本の様相からすると、男女混合で行った選挙の結果を、男女混合で振り分けて国会議員を選出したほうがより男性にも女性にも公平な代表者選出システムになるのではないかと考えられます。女性が男性よりも不利であるという理由があれば、選挙の仕組みを男女別で構想するのではなく、男女混合での競争において、女性側に一定のアドバンテージを与えるなどの仕組みを検討すればよいのではないでしょうか。
まとめ
以上のことから、現代日本社会では男女混合の競争を現実に実施することで国政選挙の公平性が保たれているという理由により、国会議員における女性比率割り当て制度を日本において導入する必要は、ないものと考えることができます。
■想定される議論(その2)「日本の人口減少傾向にどのように対応すべきか」
それでは、「日本の人口減少傾向にどのように対応すべきか」について議論したいと思います。
《日本の人口減少はなぜ起きているのか?》
日本の人口減少の最も大きな理由は、少子高齢化です。子供が新しく生まれず、高齢化する世代の数がどんどん増えていることによって、日本の人口が減少していると考えられます。この現象の背景には、結婚を志向しないなどの若者のライフスタイルの多様化や、家族観の多様化、結婚・子育ての経済的な負担の回避、住居問題、子育てをしやすい環境の不足などが挙げられます。それらが複合的な要因になって、先進諸国では、少子高齢化の波がどの国でも覆いかぶさってきています。その中でもとりわけ年齢別の人口比がいびつな形をしているのが日本であるため、日本の少子高齢化への対策が世界的に注目を浴びている状況となっているといってもよいかと思います。また、日本においては海外からの就労者が永住するための制度整備が本格的には進んでいないことにより、人口が減少しているという側面も見逃せません。
《日本の人口減少への対策はどのようなものがあるか?》
日本の人口減少への対策は、一つ一つの原因をつぶしていかなければ達成できない難題だということを理解する必要があります。例えば、仮に多様化している家族観やライフスタイル観が「ぜひ若者は結婚を推進していくべきである」というものに置き換わったとしても、子育ての経済的負担や住居確保の難しさ、保育園の確保の難しさといったものは、現状ではすぐには解決できない問題になっているからです。複合的な要因が積み重なって、子育ての負荷に耐えかねているというのが現代日本の社会的な構造なのではないかと思われます。そのため、子育ての経済的な負担を軽減するためのライフワークバランスの設計や、企業による職場近くでの保育園確保、移民政策の実現など、具体的な施策を打ち続ける必要があると考えられます。
まとめ
以上のことから、日本の人口減少の少子高齢化問題については、複合的な子育てについての「高コスト体質」を改めるための子育て支援策を打ち出す必要があるものと考えます。また、外国人就労者の積極的な受け入れによって、人口減少による労働者の減少に歯止めをかける施策の実現も望まれるところです。
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