慶應義塾大学 法学部 FIT入試 B方式 2019年 総合考査Ⅰ・Ⅱ 解答例

2019年度FIT入試第2次選考概要(B方式)

1.総合考査Ⅰの概要 •設問の内容:

「帝国大学令」(明治19年)第1条、「大学令」(大正7年)第1条、「学校教育法」(昭和22年)第52条、および「教育基本法」(平成18年)第7条を示し、個々の条文に書かれた語句や文言を比較し、明治から平成まで、国が目指す「大学の理想像」がどのように変遷してきたかについてまとめることを求めました。

  • 解答の形式:A3原稿用紙形式・400字程度。
  • 試験時間:45分

参考:

帝国大学令(明治十九年三月二日勅令第三号)

  1. 帝国大学ハ国家ノ須要ニ応スル学術技芸ヲ教授シ及其蘊奥ヲ攷究スルヲ以テ目的トス

大学令(大正七年十二月六日勅令第三百八十八号)

  1. 大学ハ国家ニ須要ナル学術ノ理論及応用ヲ教授シ並其ノ蘊奥ヲ攻究スルヲ以テ目的トシ兼テ人格ノ陶冶及国家思想ノ涵養ニ留意スヘキモノトス

学校教育法 (昭和22年[1947年]3月31日 法律第26号)

第五十二条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。

教育基本法 平成18年12月22日 法律第120号(平成18年12月22日施行)

第七条 大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。

2.総合考査Ⅱの概要 •設問の内容:

モーリス・クランストン著、山下重一・中野好之・岡和田常忠訳『政治的対話篇』(みすず書房、1973年)242~243頁における、19世紀イギリスの二人の思想家ジョン・スチュアート・ミルとジェームズ・フィツジェームズ・スティーヴンとの架空の対話を引用し、両者の主張を理解した上で「多様性」および「善」について論じることを求めました。

  • 解答の形式:A3原稿用紙形式・400字程度。
  • 試験時間:45分

参考:ミルによれば、「人間の性質には善なるものがあり、自然な個性の発露の結果として、善悪を分かち善なるものを自己の手で発展させることで個性的なものを養い高めることができる。その結果、多様性が生まれるのであって、画一的に人間の行動の自由さを制限すべきではない」とする。一方、スティーヴンは、「人間の性質には邪悪なるものがあり、それが故に、人間の多様な個性が内在的な価値を生むわけではない。また、善が多様であることがあっても、多様さが善であることにはならないとして、人間に悪を犯させないために人間にはある程度の訓練としての服従が必要」と考える議論を展開している。

 

≪総合考査Ⅰ 解答例≫

【議論の整理・問題発見・論証】

明治期の帝国大学の目的は、国家にとって必須の学問を教える場で、かつ、学問の奥義を探究すべきものとされていた。大正から先の大戦に至るまでは、当時の政治体制をくみ取った形として、明治期の2つの目的に加え、さらに人格の陶冶と国家思想の涵養に留意すべきとされた。その結果、大学の教育内容に対して国家権力の影響が色濃く反映される形となった。大日本帝国憲法にも、「学問の自由」を保障する規定が存在しなかったため、大学の教育内容は、当時の政治状況に呼応して国家権力の影響を受けざるをえなかった。この点、先の大戦後には、日本国憲法第23条で「学問の自由」が明示され、国家権力に依拠しない「大学の自治」が認められた。そのため、憲法の流れを受けた教育基本法では、大学は、学術の中心として幅広い知識の習得と専門的能力の獲得、真理の探究の結果得た成果を提供することによる社会貢献を、その目的として掲げることとなった。

 

≪総合考査Ⅱ 解答例≫

【議論の整理・問題発見】

ミルは、人間は善なる性質から成り、善悪を分ける力を持つため、自由な個性の開拓によって悪の伴わない多様な善の実現が可能だと考える。一方、スティーヴンは、人間は善よりも悪を犯す性質の方が強く、自由に身を任せれば悪を犯す自身の性質を変えられないため、訓練としての服従が必要で、多様性は必ずしも必要ないと考える。

【論証・結論】

この点、善の大切さを理解するまでの間に悪を犯す自由を認めるかどうかで、両者の立場に違いがあると考える。確かに、犯している悪自体を理解できない人間に対しては、現時点では服従という形で自由を制限してもやむを得ない。その時点では多様性も制限されうる。しかし、悪を犯す愚かさを真の意味で理解できれば、人間は自然と善をなすことが可能だと考える。人間が時間の経過とともに善悪を学習し、自然と善をなせるようになれば訓練としての服従が不要となり、個性的な善の多様性も肯定してよくなると考えられる。

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