慶應義塾大学 経済学部 小論文 1983年 解説

慶應義塾大学 経済学部 1983年度 小論文模範解答

議論の整理……

ここでは日本の労働問題について取り上げる。日本の労働問題については、労働条件・雇用状況・労働者の権利などについての争議が著しく制限されていた時代と、むしろそういった争議が推奨されていた時代の二つに分かれる。たとえば、資本主義の黎明期や戦時中はそうした活動は強く制限されてきたが、経済が比較的豊かになった時期や戦後は、内需拡大のためにも労働組合活動が政府や占領軍、果てには資本家側からさえも奨励された時代もある。

問題発見……

ここでは、日本の労働運動が強く制限されてきた資本主義の黎明期や戦時中にはどのような課題があったのかについて述べたい。

論証……

日本における労働運動が著しく制限された原因には、労働運動と天皇制との矛盾があった。そもそも、労働運動とは資本家と労働者の権利が法の下に平等であることを前提としており、そうした前提は無産階級も資本家も人間としての価値には変わりがないことを意味していた。だが、こうした前提の延長線上には、皇室と労働者も法の下で平等であるべきだから天皇制を廃止するべきだという主張があり、この主張が日本の国のあり方を抜本的に崩壊させるものだとして支配者層から恐れられてきた。

解決策or結論……

だが、資本主義の発展とともに、健全な労働組合運動は現体制の敵ではなく、むしろ味方となりうることがある。適切な報酬の支払いと、休日の設定は労働者の購買意欲を高め、内需を拡大するため、景気を良くする効果があるためである。たとえば、戦後の代表的事業家である松下幸之助は、こうした背景をも十分理解した上で、松下電器産業の労働組合結成大会にさえ参加し、労働組合運動への協力を惜しまなかった。彼のこうした行動が、その後松下電器の業績に良い影響を与えたと言われている。

解決策or結論の吟味……

戦後、労働者の活動もまた、こうした資本家からの理解を得る過程の中で政治思想に偏重したものから、生活者の要求を重視したものに変わっていった。また、政府も労働界・財界からの要請を受け、適切な労働法の整備や労働基準監督を行うようになった。こうした法整備が進んだ背景には、労働法・労働制度は労働者にとっても当然のことながら、すでに市場で主要な位置を住めている企業にとっても、新興企業による不正な競争を防ぐために大切な要素となるためである。

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